ポケモンイレブンGO グリーンストーン!第51(最終)話 ポケモンが帰ってきた!?
時空最強ポケモンを探す俺たちの冒険は、いよいよ未来へ。恐るべき相手、セキエイステージチルドレンの脅威に立ち向かえ!人類の未来をかけた戦いが、今、キックオフ!
セキエイステージチルドレンとの戦いに勝利したトオル、そしてその仲間達、ポケモン達は、それぞれの未来へと帰っていった。
だがまだトオルの気持ちは、どこか安息のない状態にあった。
トオルは少しの不安を隠しながら、かつてあった撮影場所、5番道路、ホドモエの跳ね橋前の河川敷へと向かう。
そこには……楽しそうにサッカーをする子供達が!
「……あれっ!?」
第51話(最終回)ポケモンが帰ってきた!?
「そよかぜステップ!」
「ぜんぜんちがうよ!そよかぜステップは、こう!」
「こうかなー?」
しばし呆然となったトオルに、同行していた、幼馴染の葵が声を掛けてくる。
「サッカーが喜んでるね!トオル!」
「え!?あ、ああ、そうみたいだな。ん、ん!?き、君は一体!?」
「え、なに言ってるのトオル。」
「あ、ええと……そ、そうだな。葵。」
「うん!よかったねトオル!」
「あ、ああ。よ、よかったな。」
トオルはなんとなく自分が、サッカーを失った自分達の世界を取り戻す為に戦ってきたのだと考えるようになっていた。
だがやはり違う!
自分達はこの世界に、ポケモンを取り戻す為に戦ってきたのだ!
「い、一体どうなっているんだ!」
「トオルー!」
遠くから自分を呼ぶ声がする。振り返ると、その声の主は、トオルの住んでいる木枯らし荘の管理人、秋さんだった。
「おかえりなさいトオル。」
「え!?た、ただい……ま?あ、秋ねえ?」
「いつ戻ってきたの?」
「え、えーと……ついさっきかな。」
「勝ったのね、トオル。」
「か、勝ったよ!ついにポケモンを取り戻したんだ!」
「ポケモン?あ!そうか、サッカーの事ね!」
「え?そ、そうだね。ああそうだ!シゲルさんもオーキド博士も、元に戻ったんだよ。」
「ああ、円藤君の事ね。それはよかったわ。」
「え!?あ、ああ……よかったね。」
おかしい。
明らかに何かがおかしい。一体どうなっているのだろうか。
先程から、なにか見えない大きな力の存在を、トオルは感じていた。
自分の知らないところで、なにかが大きくズレてしまっている。そんな気分だった。
「ちょっと前にね、突然、何事もなかったかのように、サッカー禁止令が解除されたのよ。それを聞いた時に、あ、トオルは勝ったんだって、先に思っちゃったの。」
「あ、ああ……ええと、ポケモ……じゃなくて、サッカー禁止令の解除は、俺たちが勝ったからじゃないんだ。」
「ええ?そうなの?」
「あ、ああ。色々あったから、話すと長くなるんだけど、いいかな。」
「フェイ君はどうしてるの?」
「フェ……フェイ!?」
「フェイ・ルーン君のことよ」
「ああレビィの事か……。」
秋、とやらに説明をするうちに、トオルはこれまでの戦いを振り返るのであった。
そう、ポケモンを取り戻す戦いは、レビィ・セーンの戦いでもあったのだ。
トオルと共に、これまでの旅を振り返ってみるとしよう。
・
ポケモンを消そうとする為に、プロトコル・ギンガを送り込む組織、ハトゴルドとの戦い。
時空を超えた冒険は、驚きの連続だった。
最初の時空最強ポケモンを手にする為、トオル達が向かった戦国時代、そこはポケモンと心を通わせた数々のブショー達が、領土争いを繰り広げる戦いの時代だった。
「全国統一は、色々なブショーさん達との協力もあって、なんとか成し遂げたんだけど、ついにたどり着いたノブナガさん達との戦いは苦労させられたよ。アルセウスが運よく味方してくれなかったら、彼らのポケモンや、あの黒いレックウザには負けていたかもしれない。もしまたあの時代に飛べたら、今度はレックウザのオーラだけじゃなくて、実力でゼクロムを倒してやると約束したんだ。」
次にトオル達が向かったのは、中世時代のフランス。
彼らはそこで、何年も昔、ポケモン同士による領土争いを止めた英雄、アーロンダルクの話と、彼に封印された彼のパートナー、青き勇者ルカリオと出会う事になる。
「アーロンダルクは自らを犠牲にすることで、世界のはじまりの樹が持つ、癒しの力を解放して、ポケモン同士の戦いを止めようとしたんだ。それを知ったルカリオは、仕える人間を信じる心を取り戻した。それはまるで、ルカリオ自身の中で戦う二つの気持ちが、長く続いていた戦争という大勢の葛藤に共鳴したかのような光景だった。ルカリオは、彼らの時代では「波動」と呼ばれている自分のオーラを俺達に託して、主君と共にはじまりの樹を支える一部になる事で、彼らの時代に帰っていったんだ。」
そして次に彼らが向かったのは、三つのドラゴンポケモン勢力が戦う龍国志の時代。
ミニリュウ軍、ボーマンダ軍、ガブリアス軍の三勢力の戦いは、ミニリュウ軍が圧倒的に不利であったが、トオル達はミニリュウ軍の若き勇士、綿劉備玄徳と出会う。
自分達の戦力不足が戦術にあると判断した綿劉備は、軍師、薊孔明を引き入れようと考える。
だが薊孔明の住む「戦闘筒」で彼らを待ち受けていたのは、数々の罠だった。
なんとか罠を潜り抜けて薊孔明の元にたどり着いた綿劉備のミニリュウと、薊孔明のハブネークとの戦いの中、綿柳眉のミニリュウは「まきつく」の技を会得する。
「オーラは得る事が出来なかったけど、俺達はまきつくのわざマシンを貰って、その時代を後にしたんだ。後の文献によると、後々、まきつくの技は対策が練られて、段々とポケモンバトルでは通用しなくなっていくみたい。時代と共に、戦術は変化していくんだ。」
その後も幕末、原始、さらには物語の世界にまで訪れたトオルは、次々にポケモンのオーラを集めていき、ついに時空最強ポケモンが完成するあと一歩のところまでやってきた時、いつの間にか同行していたトオル達の仲間の一人、サファイ・ア・イリスが、衝撃の事実を告げる。
「実は私が、レビィのお母さんやんね!」
「な、なんだってー!」
そして突如、トオル達の前に、自らを未来からやってきたセキエイステージチルドレンと名乗る人物、WATSARUが立ちはだかる。
「セキエイコマンド・フォーティーセブン、はかいこうせん!」
「ぐっ!ミキシトランス・ミニリュウ!まきつくこうげき!」
「なんだその時代遅れの戦術は!セキエイコマンド・フィフティーン、バリヤー!」
「だめだ!俺達の攻撃が全く通用しない!」
「ははは!これが圧倒的な力だ!」
WATSARUのカイリューの前に、手も足も出ないトオル達。敗北するだけではなく、長い間戦ってきた仲間、レビィをも連れ去られてしまう。
そして最後のポケモンのオーラも揃わぬまま、トオル達はWATSARUの向かった200年後の未来へ飛ぶ。
そこでプロトコル・ギンガ率いるハトゴルドの目的が、セキエイステージチルドレンの脅威から逃れる為であった事を知る。
「だからといってポケモンを消させる訳にはいかないぞ!」
という訳でハトゴルドに協力する事になった達、これまで敵であったハトゴルドとの連携に戸惑いつつも、共通の敵であるセキエイステージチルドレン、シロナ、レッド、ダイゴ&ミクリ、との戦いを経て、次第に互いの信頼を高めていく。
だが、反則的な実力を誇るWATSARUのカイリュー、そして自らの力を呼び起こしたレビィは、カイリューと同化し、巨大カイリューゴーレムとなってトオル達に襲い掛かってきた!
だが圧倒的な体格差に圧倒されるトオル達を救ったのは、旅の中で出会った、セキエイステージチルドレンの一人、サトシだった!
「サトシ!敵である君が一体どうして!」
「俺はサトシじゃない!スーパーサトシだ!」
数々の時代を飛び越えた結果、海の王子、マナフィのオーラを身につけたサトシは、スーパーサトシとなって、カイリューゴーレムを崩壊させる。
それを見た、いつの間にかグリーン・ストーンから元の姿に戻っていたオーキド博士が告げる。
「11の力、黄金の太陽と銀色の月の輝きで全てを貫く、オールラウンドプレイヤー!」
ついに時空最強ポケモンと、そのオーラの所持者が揃った!
レビィもトオルの説得に応じ、セキエイステージチルドレンである事は置いといて!ひとまずWATSARUを説得する事を硬く心に誓う!
「WATSARU!やはりその戦い方は間違っている!はかいこうせんは人に向けて打つものじゃない!バリヤーはそんなに早く覚えるものじゃない!君は早く進化しすぎたんだ!」
「黙れ!ゲームバランスを調整する為にステータスを調整された関係でレベルを下げられたり、イベントの関係で仕方なく受けた役回りのせいで下らないレッテルを貼られてしまった俺の気持ちがわかるものか!」
激化していく戦い!
だがトオルは戦いの中で、とある事に気付く事になる。
「俺達は何をこんなに一生懸命になっていたんだろう。設定を把握して、間違いがないように照らし合わせて、振る数値ばかり気にして、タマゴを大量に量産して……いやそれ事態は間違っている事じゃない。努力する事は間違いではない筈……そうか!結果的に、俺達は楽しみながらバトルをする事を忘れていたんだ!WATSARU!結果的にバトルを楽しむんだ!」
「ええい何を今更!だが、一理ある!結果的にバトルを楽しむ、そうか!」
と、頭のいいWATSARUはなんとなく言いたい事を理解する!
そして彼らは戦った。
弱点、わざ、運、数値、その全てを無視して、殴り合い蹴りあいの大乱闘!
避けるわ殴るわひっぱたくわ、それが、わざにすらなっていない、本能の戦い!
ポケモンだけでなく、人間もポケモンに立ち向かった!だが、皆なぜかケガはしなかったのだ!
「そ、そうか、本能のままに戦っても、どちらも痛みを負わない戦い。これが計算して戦うという事なんだ!」
「ようやくわかってくれたかWATSARU!」
「ああ!」
半ば、ちからずくではあったが、トオル達の想いはセキエイステージチルドレンに伝わった。
そしてバトルは終わり、セキエイステージチルドレンは組織を解散。
彼らはそれぞれ、各地を回り、若いトレーナーの成長を見守っているという。
・
「いろんな事があったけど……最後は楽しかった。だけど……。」
そして皆、それぞれの時代に帰っていった。
そう、確かにトオル達はポケモンが戦う世界を守る為に戦った。
だがこの世界は、やはりトオルの守りたかった世界とは……。
「そうそうトオル。今度、ポケモンバトルフロンティアインターナショナル、世界大会が開催されるの。」
「ああそう、ポケモンバトル……え!?あ、秋ねえ!?今なんて……!?」
「秋ねぇ?」
トオルが気が付くと、そこには先程の秋という女性はおらず、彼の住まうライモンアパートの大家、カミツレさんが立っていた。
昔はモデルだったが、現在は活動を休止し、アパート管理の仕事を請け負っているのだ。
「あ、カ、カミツレさん!するとここは……。」
気が付くと、河川敷にはポケモンと共に、サッカーを楽しむ子供達が集っている。
先程までトオルが目にしていた光景だ。
その筈なのだが、どうしてか、トオルには違和感があった。
「どうしたのトオル?」
「一体どういうことなんだろう。もしかして……。」
そう、もしかして、さっきまで自分は、何らかのベースとなっていた世界に飛んでいて、この光景は、今さっき構築されたのではないだろうか。
と、そんな事をなぜか考えてしまったトオルだが、深く追求するのはやめようと思った。
「よしカミツレさん!久しぶりに、シャッター切らせてもらうよ。」
「いいけど、急にどうしたの?」
「全国大会があるんだろ?今からいい記事を書く為に、練習しなきゃ。」
「元トップモデルを練習に使うなんて、大したカメラマンさんね。」
「いいからいいから!ほら、そこの樹に寄りかかって、はいポーズ!」
時空を超えた、トオルのちょっと不思議で長い戦いは終わった!
また機会があれば、トオルの次元は、別の次元と繋がってしまうかもしれない。
その時はまた頼むぞ!トオル!
「いや、もうしばらくは遠慮したいかな!」
おしまい