参上!やめたげてよぉ仮面!
ここはイッシュ地方のはずれ、ゆめのあとち。
そこにはムンナ達の楽園があるのだ。
今日はここに女の子が遊びにきていた。
「こんにちはー!」
「あら、いらっしゃい。」
女の子を迎えてくれたのは、自称夢研究員のマコモさん。
夢を研究するというドリームを掲げる、ちょっとアブない夢見る乙女ハカセだ!
「今日も私と一緒にドリームを語りたいのかしら。」
「あのね、きょーはムンナをみにきたの!」
「そ、そう!ムンナなら、今日はたくさん見かけるから、そうねえ。」
マコモさんは研究所の前の、ちょいと向こうの草むらを指差した。
「そのへんにいるんじゃないかしら!」
「わかった!あのへんだね!」
「ちがうわ!あのへんではなくて、そのへんよ!」
「こ、このへん?」
「ちがうわ!そのへんよ!そのへん!そこそこ!」
「ここ?」
「いやここではないわ!そのへんよ!」
というやりとりがしばらく続いたせいか、そのへんの草むらから、ムンナが顔をだした。
「ムムーン」
「あ!ムンナだ〜」
ここいらの野生のムンナは好戦的な性格ではないので、とても安全だ。
「あそんでくるね!マコモさん!」
「い、いってらっしゃい。」
とそんな訳で女の子は遊びにいったのであった。
・
「うーんどうしましょう。」
数分後、マコモさんは困っていた。
女の子が戻ってこないのである。
すると、向こうから誰かやってきた。
「どうしたのマコモさん?」
「あ、ベルちゃん!」
この子は数日前からマコモに弟子入りしている、ベルという女の子だ。
「それがねベルちゃん。いつも来る女の子を見かけないのよ。そのへん!にいたハズなんだけど、気がついたらいなくなっていて。私はとても人には言えない機密から、ここを離れるわけにはいかないし、ああ!どうしたらいいのかしら!チラッチラッ」
「ああ、あのムンナが大好きな子ね!わかったわマコモさん、私がさがしたげる!」
「ありがとうベルちゃん!」
ベルは困っている人を見かけるとほおってはおけない性格なのだ。
「そういえばあの子、なんていう名前なの?」
「いや実は、私も名前をよく知らないから探しようがないのよ。」
「わかったわ!さがしたげる!」
「ありがとうベルちゃん!」
ベルは名前のよくわからない子であろうがほおってはおけない性格なのだ。
・
「うわーん!はなしてよー!」
「へへへ!このムンナはプラズマ団がいただくぜ!」
なんと女の子とムンナはプラズマ団に捕まっていた!ガーン!
「じゃあわたしだけでもはなしてよ!」
「なんて教育のなってないガキだ!だが特に捕まえておく理由もないのではなしてやろう!」
「やったーやったー!」
「ムムーン!」
ムンナの悲痛な叫びが木霊する。ゆるせんプラズマ団!ゆるせん!
「ハハハ!このムンナの夢の煙で、プラズマ団は革新的な進化を遂げるのだ!」
「いちおーきいておくけど、いったいムンナをどうするつもりなの?」
「いいか、まずムンナのゆめのけむりをとる。」
「ふんふん。」
「で、これを使って新しいわざマシンを作る。」
「ふんふん。」
「そしてそれを我がプラズマ団の人脈を利用して、わざマシン事業の全国展開を行っている、世界わざマシン協会に公認させる。」
「ふんふん。」
「これで正式に!わざマシンの中に、さいみんじゅつのわざが追加されるのだ!一部のポケモンはその役割を失い!大会のバランスはめちゃくちゃになるというわけだ!」
「よ、よくわからないけど、すごいわ!」
「そうだろうそうだろう。君もプラズマ団に入らないか?」
「はいるー!」
女の子はプラズマ団に入る事になった!
「ではこれより採用試験をはじめる。いいか!まずムンナからゆめのけむりを抽出するんだ。」
「ちゅーしゅつってどうやるの?」
「こうするんだよ!えいっ!」
バキィ!
「ムギュォォ!」
なんとプラズマ団員はムンナを蹴り飛ばした!
「あっ!やめてよ!」
「ハハハ!これがプラズマ団クオリティだ!」
バキバキィ
「ムムゥギョォォ!」
「えーん!わたしやっぱりプラズマだんにはいるのやめるよ!だからムンナをいじめないで!」
「ハハハ!やはり子供だな!おら!夢の煙をだせ!」
「でもおもしろそうだから!わたしもやる!ボコボコォ!」
「ムギョォー!」
ゆるせんプラズマ団!ゆるせん!
「でもなんか、いわないといけないきがするからいうね!やめたげてよぉー!」
とそんな女の子の声が木霊した、そのとき!
その声は響き渡った!
「やめたげてよぉの声を聞き!」
「だ、誰だ!どこにいる!」
声のするほうを女の子とプラズマ団が見上げると、おおきな樹の上に、ものすごく頭のでかいシルエットが、太陽を背に浮かび上がった!
「誰だおまえは!」
「光の速さでやってきた!とぉっ!」
ズドーン!と、着地したのは人間ではなく、大きな体躯のエンブオーだった!
その上にボスン、と声の主がちょっとバランスを崩して着地する!
「以下略!エンブオー!ねっぷう!」
「ブォー!」
ぶぉーとエンブオーの噴出した高熱風が襲う!あたりいちめん焼け野原!
だが何故か、プラズマ団だけが空高くギューンと飛ばされていった!
「お、おぼえてろー!」
大きなあたまの人物はエンブオーをモンスターボールに戻すと、女の子のほうを向き直った。
「ムンムーン!」
「わーい!よかったねムンナ!おねーちゃんだーれ?」
「私の名前は、やめたげてよぉ仮面!CV伊藤静!名乗る程のものではないわ!それより、貴方の名前はなんていうのかしら!」
「わたし?メイだよー」
「メイちゃんね!わかったわ!じゃあそゆことで!とぉっ!」
やめたげてよぉ仮面と名乗る人物は空高く飛び上がった後で、なぜか低姿勢のままコソコソと立ち去っていった!
「やめたげてよぉ仮面……かっこいい!」
「ムンムン!」
何か言い知れぬ魅力を感じたまま、女の子とムンナは、とりあえず助かったのであった!なげやり!
・
「マコモさーん!」
「ムンムーン!」
「あ!」
あ!の後に名前を呼ぼうとしたマコモさんは、女の子の名前を知らない事に気付き、ハッとなるのであった!
すると!マコモさんの背後から謎の声が!
「マコモさん……メイちゃん、メイちゃんよ、メイちゃん。」
「はっ!メ、メイちゃん!無事だったかしら!」
すると草陰にサッと引っ込む、やたら頭の大きい人影!
それをマコモさんチラリと一瞥!
「ウフフ、ありがとうベルちゃん。」
その一瞬で色々全てを把握するマコモさんなのであった!
とそんなこんなで!今日もゆめのあとちの平和は守られた!
ありがとう!やめたげてよぉ仮面!
イッシュにやめたげてよぉの声が響く時、我々はまた、頭の大きな影を目撃する事になるだろう!