ポケモン不思議のダンジョン 正義と悪のディリュージョン






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第3章 復活する王子! 甦る古代の軍勢!
第23話 デンタル・バッテリー作戦! (2)
     〜ほそくこーなー〜

 この章の現在の流れがわからないという方への補足コーナーです。「わけわかんねえよハゲ!」「少しはまともな文打てや!」と思う方もいるでしょう。ええ、自分でも後々読み返してみて「何書いてんだ作者ぁ!」と思ったぐらいです。誰でしょうね、これ書いてる作者は(私だ)

 それでは大まかな説明をします。

・事の発端は6550万年前。マーストリヒ国国王、トリデプスのルドがフォシルの父親、なおかつクレテイシャス国国王であるラムパルドを殺害。
・と、その直後に大隕石が星に落下し、陸上生物の半数が死滅。結果としてほとんどが化石になった。


・そして現代、ネイト達がなんやかんやで(ここは特に重要じゃないのでカット)とある遺跡に到着。最奥部の噂になっている泉にネイト達が持っていた化石を投げ込むと、見事に王子であるフォシルが復活。
・フォシルは引き取り手が見つかったにも関わらず、アベルの外道なやりとりでフォシルをストリームに加えてしまう。
・その後、遺跡の近くにある村の村長であるピジョットから『遺跡が崩れ、大量のポケモンが出てきた』と聞く。
・が、そこに突然現れたカブトプスがピジョットを惨殺。フォシルが言うには『カブトプスはマーストリヒ軍』らしく、そこからは作戦会議なり偵察なりバリケード作りなどと色々警備体制(というより作戦準備)を整え、現在は戦場で待機。

 ここまでが大まかな流れです。……が、ここで少しおかしいことになっています。

 実は偵察をしてもらうまでは、フォシルの『復活したマーストリヒ軍が襲い掛かってくる』という考えはただの予想でしかないんです。
 確かにカブトプスの言動にはそれらしいセリフがありましたが、それでも確実に戦うことになるという確証はありません。

 さらにはその日の内に攻めてくるという根拠もまっぴら……ですが、そこの矛盾はなんとか作者のご都合主義で許して頂きたいです。


 長くなってしまいましたが、補足コーナーは以上です。









 矛盾についてですが……『フォシルの神読が決まった』ということでお願いします。



















 ギルド防衛線 東側


「思ったより寒いな……夜は」


「ん? この程度の寒さにやられてんじゃこの先生きていけねーぜ?」


 東側の先頭で話しているクレーンとフォシル。「生きていけない」と言ってる辺りはなんとなく戦争らしい意識を感じさせるが、どことなくクレーンの方は険悪な雰囲気である。


「うるさいね! 『夜は自分が思っていたよりも冷える』ってことだよ! 大体年上のワタシに対して少しも敬意を払わないオマエはどういう教育を受けてるんだい!? ……ゼェ……ゼェ」


 早口で一気に話したせいか、クレーンは息が上がってしまう。ギルドで朝にあれだけポケモンの前で話している割には珍しい光景だった。
 それに対するフォシルの受け答え。


「戦友に敬意なんかいらないぜ!」


敬語も使わないオマエが言うなっっ!! というかオマエの戦『友』なんかになった覚えはない!」


「気に食わねーなら仕方ねーか……てかオレも一応王子っつー役職なんだけど」


 仲がいいのか悪いのかよくわからない状況だが、とにかく戦場で話すようなことではないことがわかる。
 だが、このような日常的にありそうな会話が、少なからず後続のポケモン達の緊張をほぐしていた。もっとも、内容が内容であったため、聞いていたポケモン達は苦笑いをしていたが。









 ギルド防衛線 西側


 ところ変わって西側。場所はサメハダ岩の真下辺り。
 防衛線を作るための障害物やら、戦闘用の道具が散乱しているが、一応砂浜。多分砂浜。
 つまり、目の前に広がっているのは広大な海。こんなところから敵が攻めてくるのか? と聞かれたら、大半の者が首を傾げるであろう。
 が、嘘であっても本当に出てきそうに見えてくるのが怖いところ。ましてやいつ、どこから敵が出てくるかもわからない。
 自然とそんな緊張を味わってしまうような場所ではあったのだが……


「うーみーはー広いーな、大きいーなー」


「ああ、そりゃ広いだろうな……」


 西側でもどーでもいい会話が繰り広げられていた。


「心は広いな〜」


「人にもよるな……」


「視界も広いな〜」


「いやいやいや、骨被ってて視界が広いカラカラってどういうことだ」


「おふっ、ナイスツッコミ! ツッコミに定評があるのは伊達じゃなかった!」


「あー……ナガロから聞いたのか」


 自称・『骨被ってても視界が広いカラカラ』、ネイト。
 ナガロ評・『ツッコミに定評のあるトロピウス』、セバスチャン。
 こいつらのただのボケとツッコミだった。何やってんだバーカ。


「……にしても、こんなところから敵が来るのかなぁ」


「そうだな……確かに海から奇襲されるのは考えにくい気もするが、俺の今までの経験からすれば……陸、海、空、どこからでも出てきたことあるからな……可能性は否定しきれない、と俺は思うよ」


「りくうみそら……あっ、陸軍海軍空軍か!」


「まあ……そんな感じ」


「ルビーサファイアエメラルドか!」


「ちょっと遠ざかった……」


 そんな感じのどうでもいい会話を数分続けていた二匹。こんなときに敵が攻めてきたらまともな戦闘などできるはずないが、相変わらず目の前の海は黙りこくったかのように静かである。そのため、水面に映る月もその形状を保っている。


「……他のところではもう戦いが始まってるのかなぁ」


「どうだろうな……」


「ああ……このままじゃ僕達、自宅警備員になっちゃうよ」


「自宅ではないと思うが……言いたいことはなんとなくわかる」


「じゃ、砂浜警備員」


「あまり聞かない言葉だな……」


 自らが感じている小さな不安を紛らわすようにネイトはひたすらボケを続ける。









 ギルド防衛線 北側


「……チッ、まだ来ねえのかよ。ぶん殴りたくてしゃあねえ」


「……。」


 北側には苛立ちを見せるような口調で独り言を続けるクリムガン、ディメロが前線に、そしてその後ろで珍しくだんまりとしているキモリ、アベルが明らかに嫌そうな顔でディメロの背中を見ていた。
 どうやら北側にもまだ敵は来ていないらしく、防衛線の先にある陸地、さらにその奥の海もまったくの無音。


「イライラさせやがって……さっさと来いや! ウジ共!」


「………………………………。」


 さらに都合の悪いことに、中々戦えずにイライラしているディメロ……を、見ているアベルが、実はかなりストレスを溜めているご様子。
 しかし、明らかに凶悪尚且つ、暴力的で強そうな見た目をしているクリムガン、さらに言動も荒々しいディメロとなれば、誰もが彼に手を出しにくいだろう。


「あーウゼえな! 来ねえなら帰んぞ!」


(お前が一番ウザい。消えろ。そして帰れ)


 心の中で反論を試みるアベルだったが、現状は当然変わらず、ただ心の中でむなしく反響するだけだった。









 ギルド防衛線 南側(海岸)


 海岸の洞窟前の砂浜……とはいっても、障害物による防衛線が張られているため、元の砂浜はほとんど見えない。
 つまり、ポケモン達が入る場所も結構狭い。それでも朝の通勤快速の電車よりかはマシなレベルだが。


「…………。」


「あのう………」


 先頭のバル、その斜め後ろにいるエキュゼ。どっからどう見ても気まずい雰囲気(第21話参照)だが、エキュゼはなんとか勇気を出して話しかけてみる。


「…………。」


「その……すみません……」


「……今は戦闘中だ。黙ってろ」


「あ…ごめんなさい……」


 別に戦っているわけでもないのに、話しかけたことに対して怒られ、地味にイラッとくるエキュゼだったが、この話しかけている目的が『バルに謝る』なので、ここで反論してはいけない。
 だが、バルの勇ましい後ろ姿を見ていると、どーしても男にしか見えなくなってくる。


(そんな怒らなくてもいいじゃない……。私はただ謝ろうとしてるだけなのに)


「何か言ったか」


「え゛……な、なにも言ってません!」


 読心術でもできるんじゃないか、とバルを疑いたくなる瞬間だった。
 色々と疲れたからか、エキュゼの口から小さな溜息が漏れる。









 ―――その瞬間


 海からカブトプスが猛烈な勢いでエキュゼの方へ飛びかかり、



















 ギルド防衛線 東側


 長い時間ずっと待っていて退屈だからか、後ろの方では楽しそうな話し声が聞こえてくる。
 が、ここで先頭にいたフォシルが何かに気付いたようで、小さく声を出す。


「ん? ありゃ……」


「どうした? 何か見つけたのか?」


 隣にいるクレーンが声をかけるが、フォシルは「静かにしろ」と一言返すだけ。
 防衛線が静まり返る。




 …………




「………あー、やつらだ」


「やつらって……まさか敵か?」


「ん、聞こえねーか?」


 フォシルに言われ、クレーンも耳を傾けてみる。




 ……―…




「……確かに……何か地鳴りのような……」


「だろ? 後数分後には来そーだ」




 ドドドド……




 どうやら後ろの方に控えているポケモン達も気付いたらしく、ざわめき始める。
 だが正確には、気付いた原因は『音』ではなく、『振動』。


「おーっ……見えてきた見えてきた。ざっと三千前後くらいか? 結構多いな」


「さささささ三千!? そんな数をワタシ達で相手するのかい!? そんなふざけた……」


「いんや」


 クレーンの言葉をフォシルが一蹴する。
 少し低めの声で、少し強めの口調で。


 そして口元には笑みを浮かべ、フォシルが一言。









「正確にはその半数以下だ」


「は?」


「そー不安になるなって! ちゃんと作戦は立ててるからよ!」


「???」


 作戦があるとはいえ、自分たちの何倍もの数のある敵を全滅させるのは、クレーンではとても考えられない。それどころか生き残ることさえも不可能に近いのではないか、と考えてしまう。
 そんなことを考えている間にも敵は近づいてくる。クレーンの目には『敵』ではなく『終わり』が近づいてきているように見えた。




 うおぉぉぉぉぉぉぉ…………




 気合を入れるための大声なのだろうか、はたまたただの怒声だろうか。地鳴りとともに声が飛んでくる。
 (ウェーブ)となり、砂まで巻き上げながらこちらへ向かってくる敵は、もはや生き物ではなく、『災禍』のようである。




 うおぉぉぉぉぉぉぉ…………




 当然、これほどの威圧感を放つ敵を見れば、誰もがすくんでしまうだろう。後続にいたポケモン達はもちろんのこと、クレーンでさえも震えが止まらなくなっているほどに。


 ……一方でフォシルは、まだ先ほどの笑みを浮かべていた。それも勝ち誇ったかのような笑み。


「お、おい! 正気かフォシル! 撤退だ撤退! こんなのに勝てるわけがない!!」


「んー? やってねーのによく言えるなー」




 うおぉぉぉぉぉぉぉ…………




「よく言えるって……いやいや見ればわかるだろう!? ワタシ達で勝てるはずがない! 今すぐ逃げる準備を……」


「じゃあよー」









「これから二十秒以内に敵が激減したら戦おうぜ? 無理だったらお前らだけでも逃げていいぜー」


「な………!?」


 突然条件を提示したフォシルに対し、クレーンは動揺を隠せなかった。
 二十秒以内に敵が激減、つまり、フォシルが先ほど言っていた「相手は半数以下」ということだろう。
 さらに、失敗したら一人で戦うという条件。




 うおぉぉぉぉぉぉぉ…………




「わ……わかった……そこまで言うなら信じてもいい……」


「後十三秒……」




 うおぉぉぉぉぉぉぉ…………




「後十一秒……あ、そうだ」


「な、なんだい! 手短に頼むよ!」


 突然何かを思い出したからか、カウントを止めるフォシル。




 うおぉぉぉぉぉぉぉ…………




「よーく考えたら今から逃げても手遅れだったわ。いやー、わりー」


「おいいッッ!!」


 さすがにこれには後ろにいたポケモン達もふざけんなコール。そりゃ無理もない。




 うおぉぉぉぉぉぉぉ…………


「何秒だっけか……あ、六……五……」


「うああ? 六秒と五秒で二十秒死ぬぅぅううう!!」


 衝撃の事実を聞き、最初は怒り心頭だったものの、今は大パニック。クレーンに至っては何を言ってるのかわけがわからないほど。
 ちなみにナレーターは正常。あなたのお使いになっているパソコンも正常です。




 うおぉぉぉぉぉぉぉ…………




「後三秒………二秒……」


「人生オワタァーーーーーーーーー!!」


 と、無茶苦茶大声でクレーンが叫んだその瞬間、









 うあぁぁぁぁぁぁぁ…………




「…………?」


「な、言っただろ?」


 先ほどまであれほど威勢のよかった(むしろよすぎた)敵軍の姿が一瞬で消え、代わりに砂埃が舞い上がった。勇ましい声も一瞬で悲鳴……いや、断末魔の叫びへと変わっていった。
 クレーンは目を凝らして遠くを見てみると、


「! あれは……」


「作戦会議でも言ったはずだぜ? 『谷状の落とし穴を作る』ってな」


「なるほど……それで落とし穴……ってええーーーっ!?」


 砂埃が晴れてきて落とし穴の様子が明らかになる。だが、その様子を目の当たりにしたクレーンは驚いて叫んでしまう。
 ギルド防衛線の数百メートル先にあるのは、まるで大陸を両断したかのような谷! 谷! 谷! ひたすら谷!


「こ……こんなものを一体どうやって……」


「あのダグトリオの親子が色々やってくれたみてーだけど……オレ自身もどーやったらあーなるのかは知らねー」


 この会話の最中も敵の勢いは止まらず、どんどんと落とし穴へと落ちていく。
 だが、一部のポケモンはジャンプで飛び越えたり、谷底から這い上がってきたりしている。
 戦う敵はその残り物ということだろう。


「信じられない……まさかこんなに数を減らすだなんて……」


「じゃ、戦ってくれるよな! お前ら!」


「「「「「「「「「「「「「「「おおーーーーーっ!!」」」」」」」」」」」」」」」


 防衛線東側に気合のこもった声が響く。色んな意味での『やる気』がMAXになり、士気は万全。


「行くぜ! デンタル・バッテリー作戦決行だぁーーーーー!!」


 作戦決行の合図、ギルドによる大逆転劇が始まった。









 ………が、


「……………。」


「……………。」


「……………。」


「……………。」


「……………。」


「……………。」


「……………。」


「……………。」


「……………。」









「………おっせーな、早く来いよ」


 敵がなかなか来ないため、作戦が始められない。
 いまいち締まらないフォシルであった。









 ギルド防衛線 西側


 東側で大きな進展があったものの、反対方向である西側はいまだに静かなままである。
 波の音は変わらず。
 水面に映る月も変わらず。
 変わったものというと、ネイト達の気分だろうか。


「…………。」


「…………。」


 先ほどまで見るからに楽しそうな雰囲気のボケとツッコミを繰り広げていたネイトとセバスチャン。が、今はまるで上司に怒られた後の中年会社員みたいになっている。


「………はあ」


「…………。」


 気まずい。とにかく気まずい。特に二匹の間に何かあったわけではないのだが、これほど話すことがないと、何故だか話しづらい空気になってしまう。
 そんな空気を、ネイトの溜息が余計に重くした。


「………来ない……ね……」


「ああ…………」


「…………。」


「…………。」


 再び黙りこくる二匹。
 だが、哀しい波の音に静かすぎる防衛線。何もしていなくても……むしろ何もしないことによってさらにどんよりした空気が流れてしまう。


「……しりとりでもする?」


「ん? ああ……そうするか」


 ネイトの提案に乗るセバスチャン。これで断られたらやばかったと内心ヒヤヒヤだったが、なんとか乗ってくれたのでほっとする。


「しーりーとーりー、リンゴ」


「ゴマ」


「マスターボール」


「そこでマスターボール!? なら……ルビー」


「Be going to!」


「なんでそこで英語を使うっ!?」


「うひょひょ〜♪ やっぱセバスさんはおもしろ〜い」


「おちょくるなよ……」


 一瞬ほんわかした雰囲気に包まれるものの、またまた話の話題が無くなり、


「…………。」


「…………。」


 ふりだしに戻るという情けないオチになってしまうのであった。









 ギルド防衛線 北側


「………チッ」


 あれほどイライラしていたディメロだったが、遂に舌打ちをするだけになってしまった。さすがに疲れてきたのだろうか。
 相も変わらず何も出てこない陸地に海。さらには開けた土地なのにも関わらず、砂埃ひとつ舞わないほどに風がない。
 実は東側では絶賛戦闘中なのだが、連絡を取るための手段がこれひとつとない。そのため、それぞれがそれぞれ、現在の状況をほとんど理解できていない。
 不安というよりかは飽きたという感情、と見せかけ、実際はやはり不安。目に見えてイライラしてるディメロは明らかにそんな感情はないだろう。


「クソが……! 全然来ねぇじゃねぇか! ハッタリかコラァ!」


「黙れ」


 苛立っているディメロを見て腹が立ったのか、アベルが突然ぼそっとつぶやく。すると「ぁあ!?」とディメロがゆっくりと振り向き、先ほどの声の主、アベルを睨み付ける。
 周りのポケモン達の視線もアベルに注目する。正に『ちゅうもくのまと』の状態になってしまった。


「今なんつった? 聞いてんだよオラァ!!


「………。」


 周囲に目をやると、目の前にいるヤバそう、というかヤバいやつ、ディメロ。さらに周りからの痛いほどの視線。ここまで来て「あ、やべえ」ということに気付く。
 ディメロの方は本能的に怒りを見せて対応しているが、アベルの方は「言えばスッキリ」だけで、その後の対処法などまるで頭になかった。\(^o^)/
 さすがに戦闘前に戦闘不能になるなんてみっともないマネできない。そう考えたアベルがとった行動は、


「あー、『黙れ』は俺の口癖だ。ずっと黙ってると定期的に言いたくなる習慣がある


「あ? 口癖だぁ?」


 無理無理無理、これ絶対回避できないでしょ、そう周りが思う中、アベルは真顔で「ダマレ、ダマレ」と言い続ける。必死というか、滑稽というか、もうなんか謎の感動さえも生まれてきそうだ。
 結局、そんな努力も意味を成さず、


「ざけてんのかぁぁああ!!」


 ディメロが大きく左腕を持ち上げる。状況からして間違いなく攻撃だろう。アベルも腕を構え、防御態勢に入る。









 ……が、突然ディメロの顔が左を向き、拳もアベルの方ではなく、後ろの方へ。


「うらぁ!」


「グゴッ」


 ディメロの背後にはいつの間にやらアーマルドが……いた。すでに先ほどディメロが繰り出した゛不意打ち゛により一撃でノックアウトだったようだが、ディメロがいなければ間違いなく相手の奇襲が成功していただろう。
 アーマルドが倒れている地面の横には穴が開いており、相手が゛穴を掘る゛による奇襲を掛けようとしていたのがわかる。


「……テメェら気を付けろよ。どっから出てくるかわかんねぇ以上、一瞬でも気ぃ抜いたら倒されるぞ」


 そんなことは先ほどの奇襲で十分に理解していたが、わかっていても……いや、わかっているからこそ怖いものがある。


 さらにわかったこととして、一番最初に出てきたアーマルドをきっかけに北側での防衛戦がスタートしたということ。









 ギルド防衛線 南側


 突然海から鎌を振り上げながら飛び出してきたカブトプス。その奇襲に対し、バルが咄嗟にボーマンダ特有の巨大な真紅の翼を広げて迎え撃つ。


「ふん!」


「グ……!?」


 鋭い鎌が翼に押し負け、当然カブトプスはひるむ。その隙を突いてバルは゛ドラゴンクロー゛で切り裂こうとするが、相手は゛切り裂く゛で相殺する。


「私に刃向うなッ!!」


 バルの口元に紫と赤のエネルギーが渦巻く。゛竜の波動゛の構えだ。
 「殺られる前に殺れ」という考えからなのだろうか、カブトプスの方は鎌に黒いオーラをまとい、素早くバルに切りかかる。


「゛辻斬り゛!」


「゛竜の波動゛ッ!!」


 カブトプスの゛辻斬り゛がバルに直撃する前に、バルの゛竜の波動゛がカブトプスを海の向こうまで吹き飛ばす。


 ほんの一瞬の出来事だったが、襲われそうになっていた本人、エキュゼはそれがスローに見えた。感覚で言えば走馬灯のような感じだろうか。


「あ、あわわ……」


「…………。」


 礼を言おうにも、また怒られそうな雰囲気。中々声の出せないエキュゼだったが、


「……気を引き締めろ。まだ来るぞ」


「え……あ、はい! それと……さっきは助けてくれてありがとうございました」


 バルの方から話しかけてきてくれたので、なんとかついでにお礼が言えた。
 だが、少し問題だったのが『エキュゼを守った根拠』。


「母親が娘を守るのと同じことだ」


「はは……おや……?」


 『母親』という単語にエキュゼはやや戸惑いを見せていたが、次来る敵に備えて集中するようにした。




 現在の時刻 23:48


 西側を除く三方位で戦闘。同時に『デンタル・バッテリー作戦』の発動。


■筆者メッセージ
 ストーリーに悩み悩み約二か月間更新できませんでした……。うぐぅ、オリストって厳しい。
 またまた不定期な更新になるかもですが、パソコンが使えるときは使おうと思います。てか使いたい!

 暑さに注意し、快適で楽しい夏を送りましょう! ふぁいっ!
アマヨシ ( 2014/08/03(日) 15:08 )