貯金と涙
「ふええ…サクラ……
あなたすごいトレーナーになれるんじゃない? あたしそんな気がする」
バトルが終わって、ベルがあたしとあたしのツタージャを見ながら言う。
ベルが褒めてくれて嬉しいけど……それどころじゃない…。
「部屋が…あたしの部屋が……」ブツブツ
「………………ベル、周りを見れば?」
チェレンは苦笑しながらあたしを見て、そのあとにベルの方を向き、言った。
チェレンに言われて、ベルはあたしのぐちゃぐちゃになった部屋を見回す。
「へ…?」
そして一瞬フリーズした。
「うわぁ! な、なにこれ!?」
「ポケモンってすごーい!! こんなに小さいのに!」
ベルが感動し、ミジュマルとロダを見ながら言った。
うん、確かにすごいけどさ? コメントするところ間違っってるよ!
そこは部屋のコメントしてよ!
「あたしポケモンに出会えてよかった!」
……………………さいですか………。
「……あっ……サクラ、ごめんね?」
あたしの姿が視界に入ったようで、苦笑しながら謝る。
「…うん……もういいよ…」
あたしはそんなベルを許す。
「………………テレビっていくらだっけ…?
……………………コンクリ直すのにどんだけかかるんだろう…」ブツブツ
まだ根に持ってるけどね…
‥‥‥‥‥‥‥‥金足りるかなぁ…?
「………ベッドの足が壊れてる…ベッドごと買い直さなきゃ……
あ………………毛布の中に羽毛殆ど入ってないよ………」
……貯金全部なくならないかな…?
「さ、サクラ?」
チェンがあたしの名前を読んだ気がしたけど、あたしのネガティブは止まらない。
部屋の壊れているもののことしか頭にない。
「…ポケモンに関する本も全部買い直しだよ………
小説とか漫画も……あ、棚もか…
………多分…貯金、足りないよ………どうしてくれるんだよ……
……母さんに出してもらうか?…無理だ…」
あ……目が熱い…。 あたしってこんなに…涙線緩かったっけ…?
「さ、サクラ!?」
「うわぁ! サクラ、泣かないでー!」
チェレンが慌てて自分のハンカチを差し出し、ベルが泣きそうになりながらあたしに抱きついてくるまで、あたしは自分がポロポロと涙を流しているのに気づかなかった。
ベル…なんであんたが、泣いてんの? …泣きそうなのはこっちなんだけど…って……もう泣いてるか…
ベルが泣きながら誤ってきて「半分自分が出す」と言い、あたしの機嫌が少しだけ良くなり、ベルが落ち込んだのは別の話。