冒険の始まり
ppppppppppppp「うっさい」〈ゴンッ〉
はじめまして、
魔魅夜 桜です…。
枕の隣には…ついさっきまでまで目覚まし時計だったはずの鉄の塊が…。
「あ、ヤバ…また壊した。また怒られるよ…」
どうやらあたしはまた、目覚まし時計を壊してしまったらしい…。
今日は最高の日になるはずだったのに…。
〈ガチャッ〉
「サクラ! また壊したの!?」
「ごめんなさい…」
あーあ…説教タイムか…。
「はぁ……今日はもう許す」
「…へ? いいの?」
…Why?
「今日は特別な日だからね」
…なんと! 女神が君臨した…!
「そうだ、サクラ。ハイ、これ」
母はプレゼントボックスを渡してきた。手紙も添えてある。
「“アララギ博士”から」
それを聞いたとたん、あたしは母の持っているプレゼントボックスを奪い取った。
あたしの目は奪われたようにプレゼントボックスを見る。
「ふふっ、まだ開けちゃダメよ? ベルちゃん達と開けるんでしょ?」
母のその言葉で私は思い出す。
「そうだった…」
“ベルちゃん達”とは幼馴染のこと。
このプレゼントボックスには幼馴染達にあげるためのプレゼントも入っているらしい。
「早く来ないかな」
じゃないとプレゼントボックス開けられないじゃん。
「ふふ。じゃあ下にいるからね? ベルちゃん達が来たら教えるわ」
「了解っ! よろしくねっ」
〈バタン〉
早く来ないかなぁ…。
とりあえずこれは机の上に置いておこう。
「よいしょっと…」〈ゴトン〉
「ふぅ…」
暇だなぁ…。
『サクラ〜チェレン君が来たわよ〜?』
……結構早かった。チェレンは律儀だからなぁ…。
「あがってきていいよ〜!」
〈ガチャ〉「サクラ」
アホ毛が立った青年が入ってきた。
コイツはチェレン、幼馴染の一人。そして妙に律儀だ。
「アララギ博士に聞いたけれどポケモンをもらえるんだって?」
早速それか。
「そーだよ。ベルは? 一緒じゃないの?」
「見てないけど。てことは……ベルは…また……?」
〈ドタドタドタ〉 〈ガチャッ〉
「あのぅ…ごめんね? また遅くなっちゃった……」
騒がしい音と共にベレー帽を被った金髪の女の子が入ってきた。
この子がベル、幼馴染の最後の一人。いつもベルの周りは騒がしい…。
「ねぇ、ベル」
はじまった…チェレンの説教タイムだ。
「きみがマイペースなのは10年も前から知っているけれど」
「今日はアララギ博士からポケモンがもらえるんだよ?」
チェレンが呆れ顔だ。ちょっと笑える。
「あたしなんて昨日も余り眠れなかったんだよ?」
あたしも言ってみる。
「サクラ…君は遠足前の小学生か」
チェレンがツッコミを入れた。
違う…けど言い返せない…!
ベルはドアからあたしの前に来た。
「はーい、ごめんなさい。サクラ、チェレン」
ベルは気の抜けた謝罪をした。
こやつ…謝る気はないな…!?
「で ポケモンどこなの?」
ベルはあたしの隣に来て言う。
「サクラの家に届いたんだし、選ぶのはサクラからだよね」
「え!? あたしからでいいの!?」
「もちろん」
チェレンもあたしの隣に来た。
…なんであたしが真ん中?
「そのプレゼントボックスの中」
チェレンは一人話し始める。
「ポケモンが僕たちを待っている」
なんでだろ、チェレンが格好つけているのを素直に聞き流せる…。
「さぁサクラ、一歩踏み出してプレゼントボックスを調べてよ。早くポケモンに会いたいんだ!」
……何だかんだ言って一番楽しみにしてんのチェレンじゃん。
指図されるのは嫌いだけど今回は何も言わないでおこうかな。
「…わかってるよ。言われなくても」
あたしは一歩前に歩き、プレゼントボックスの前に立った。
後ろで二人は自分が開くわけでもないのにワクワクしてる。ワクワクしながらあたしを見てる。
……なんか緊張するなぁ。
そしてあたしはプレゼントボックスを開く――――前に、
「手紙があるから読もうか」
後ろの二人が見事にずっこけた。ずっこけかたが漫画みたいで面白かった。