U 英雄の帰還
「ん? サトシ君、その本は何? 」
「ああ、この船の図書館にあったんだ。何かラティオスを復活させる為の手掛かりになるかな、って思って借りてきたんだ 」
サトシの持つ本の題名を見ると、『生と死の循環 』と書かれてあった。
それにしても、サトシにも一応、読書の心得はあったのだなぁ、とカノンは心中思う。
「で、何か解った? 」
「うーん。実は……全然読めないんだ 」
前言撤回!!「はぁ。ちょっと貸してみて──── 」
ため息ひとつ。彼から本を渡してもらう。
そこにはこう書いてあった。
。。。
「何が書かれていたんですか? カノンさん 」
文字の羅列に飲み込まれそうなカノンにケイトが問う。
「はっ………! ごめん、わからない 」
「どんな内容かだけ聞かせてくれよ 」
「う、うん 」
────数分後。
「生の契約、ですか 」
「それをすれば、ラティオスも復活させられるんじゃないか? 」
「でも……リスクが大き過ぎるわ。それに、これが本当なのかもわからないし 」
「となると、取り敢えずこの話はお預けですね 」
結局、その本からラティオス復活に直接関わりのありそうな事項は見つからなかった。
そして、そうこうしている内に、サトシ達はアーシア島に到着した。
「着いたー! 」
汐風が髪を靡かせる。これがアーシア島の風。アルトマーレの心地良さとは一味違う、独特の温かさを感じる。
「懐かしいなぁ……たしか三年前か 」
「なんか良い雰囲気のところですね。…………っ? 」
三人は響きだした音色に視線を向ける。サトシにとっては、聴き覚えのある音色であった。
「まさか 」
笛を吹きながら階段を舞い降りる少女。そう、サトシは彼女の事を知っている。
「久し振り! サトシ君 」
彼女の名は────。
「フルーラさん!? 」
「正解! 覚えててくれたんだ 」
「懐かしいと言っても五年だけですからね 」
その五年間に、この男は何回世界の危機を救ったのだろう。
「そういえば、今日はあまり賑やかじゃないですね 」
「毎日祭りなんかやってたら過労死するわよ 」
「あ、それもそうか 」
と、一連の会話をし、フルーラもそろそろサトシの後ろからくる視線が気になった。
「そっちの子は? 」
「今一緒に旅をしているカノンとケイトです 」
紹介されて2人は一礼する。
「カノンちゃん……だったよね? 」
再度名を確認し、フルーラは問いかけた。
「カノンちゃんは、サトシ君のガールフレンド? 」
「「っ!? 」」
あまりに単刀直入すぎてカノンは動揺している様子だ。
「ど、ど、ど、ど、どうして!? 」
いや、動揺を通り越している。
「カノンさん…… 」
「いやぁ、なんだかカノンちゃんが妬いているように見えたから 」
「あわわわわわわわわわ 」
カノンの首筋や頬は火照ってきた。赤く染まった顔は林檎のよう。
「ふふ、カノンちゃん可愛い 」
フルーラはとても楽しそうだ。前と殆ど変わらない無邪気さのまま。ただ少し。
「フルーラさん……なんだか大人しくなった気がします 」
「……そう言うサトシ君も、数年の間に随分と大人になったじゃない? 」
と言われても、まだ13歳なのですが。
「そう言えば、今回の要件は何? また流されてきた訳じゃあるまいし 」
「はい……
ルギアに、会いに来ました 」