ポケットモンスターANOTHER








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STAGE1. GOLDEN MIND
記録04. 金曜日のラプラス

暗い洞窟の道は延々と続く。
岩ばかり目立ち、ポケモンがやけに少ない。
時折、人ひとりしか通れないほど道の狭いところがあると思えば、変に広く、孤独感を覚えてしまいそうな場所もある。
このような場所、探検好きか、よっぽどの変人でない限り、すぐに飽きる。
「おっと…… 」
とても暗い中、階段があるというのは恐ろしい。油断すれば落ちてしまうだろう。
ヒビキは右へと曲がろうとした。
その時 ──

「……ォォォオン… 」

先ほどの階段からポケモンの鳴き声が、いや泣き声が聞こえてきたのだ。
「いくよ……コトネ 」
「あっちょっと! もう、本当マイペースなんだから! 」

階段の先に光が見える。そこにあったのは巨大な湖だった。その水はとても綺麗で、底から不思議な光が放たれている。
ヒビキ達は、そんな湖の真ん中に、先ほどの声の主を見つけた。

「【ラプラス】…… 」
「キュォォォオン…! 」
ラプラスは悲しそうにその声を上げていた。
「何か……あったのかな? 」
コトネはとてもラプラスを心配した。それはもちろんヒビキも同じである。
「おや、君達 」
突如後ろから声を掛けられた。
「あなたは? 」
「ん? わたし? サリナよ 」
「私はコトネ。こっちがヒビキ 」
コトネ達は軽く自己紹介を済ませた。
「それにしても、こんな所でデートって、変わってるね2人とも 」
「はぇっ!? あ、デートなんかじゃありません! 」
「冗談だよ 」
コトネは強く否定した。まあ、実際男女2人旅な訳だし、疑われても仕方はないだろう。とりあえず事情は説明した。
「で、あのラプラスはなんであんなに悲しそうに泣いているんですか? 」
そうコトネが問うと、サリナは少しためらった。が、すぐに口を開いてくれた。
「実は先月、黒い服を来た男2人が、あの子の親を強引に捕まえていったんだ 」
「────っ! 」
ヒビキとコトネは驚きを隠すことはできなかった。
「わたしはそれを影から見ていた。何もしてあげられなかったんだ…… 」
「……… 」
「奴らが去ったあと、隠れていたラプラスが出てきた。そして毎週金曜日に現れては今のように嘆いている 」
「……ラプラス 」
ヒビキはその言葉に、拳を強く握った。
「ここにラプラスが現れていることはだいぶ知れ渡っている。奴らがもう一度現れてもおかしく…… 」
「待って! 」
ヒビキは強くサリナを止めた。
「……後ろに、僕たちの話を盗み聴きしようとしてる奴。たぶん2人いる 」
その言葉を聞き、コトネとサリナは後ろを見てモンスターボールを構えた。
すると岩陰から、黒い服を着た男が2人、参ったと言わんばかりに両手を上げて現れた。
「まさか、バレるとは…… 」と1人の男。男はモンスターボールをヒビキ達に向けて言う。
「力尽くでも……それが使命なのでね 」
「やれやれ、子供相手に本気だしちゃって…… 」
と、もう一人の男。
その言葉に対し、コトネは問いただした。
「ポケモンを愛するのに、大人も子供も関係あるんですか? 」
「おっと怖い 」
コトネの強い意思にうながされたヒビキはサリナのモンスターボールを構えるのを止めさせた。
「私と……バトルしなさい! 」
「クゥオオオオォォォン 」
後ろで見ていたラプラスが外にも響く大きさで鳴いた。コトネとともに闘うつもりだ。
「……いくよラプラス 」

「いけ、ドガース! 」
「ズバット! 」


・ ・ ・ その後男どもはあっけなく散った(笑)


「ラプラス…… 」
コトネとラプラスが、悲しそうな目で、互いを見つめあう。やがて、コトネは1つの答えを出した。
「一緒に行こ。ラプラス 」
その答えが正しいかなんて、誰も知らない。それでも ──
「クォーン…… 」
ラプラスの鼻が、モンスターボールと触れた。何事もなくボールはカチッと音を立てた。
「……私は、彼らのような人間を ── 」
その続きは言えなかった。もう一度モンスターボールの中のラプラスを見つめ、コトネとヒビキは次の街を目指した。


■筆者メッセージ
かなり短い文になり、シリアスで完全に息抜き回をしてしまいました。すみません! 次は頑張るぞ!エイエイオー!
月光雅 ( 2015/04/15(水) 23:20 )