最終記録. ────
*「 龍 ・ 舞 う 」
「ノイズッ!! 」
ヒビキの声は、ジム内に響き渡った。ノイズはジムリーダーイブキと戦い、あと少しのところで、負けてしまった。おまけに、彼はオーダイルの下敷きになり、体がボロボロになってしまった。それでもノイズは立ち上がり、「ありがとうございました」と礼を言い、チャレンジャーの場を退いていった。慌てて観客席から立ち上がりヒビキはフィールドへと走った。そしてふらついて倒れそうになったノイズを支えてポケモンセンターに運ぼうとする。そんなヒビキに対して言った。
「どこへ行く 」
「……ポケモンセン「心配はいらない! だから、お前はジムに行け! そして勝って帰って来い! 」
そう言って、ノイズは自分の腕を掴んでいたヒビキの手を弾いた。
「観客席で見ているからな 」
「ノイズ……」
どうしたヒビキ。挑戦しないのか? 相手はジムリーダーだぞ
「でもっ! 」
現状も理解できぬまま、ヒビキは自問自答を繰り返した。
相手はジョウト最強と言われるジムリーダーイブキだ。ジムリーダーを越えない限り、ポケモンリーグへは挑戦できない。ヒビキは決心した。
フィールドのチャレンジャーの位置まで歩いた。周りを一切見なかった。いや、見えなかったのかもしれない。
「さっきのバトルを見てもまだ戦うの? 」
「………── 」
敵を、イブキだけを見て、バトルを申し込んだ。
「覚悟はしています 」
「容赦はしないわよ! 」
イブキ●○○○○○\
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
ーーーV・Sーーー
ヒビキ●○○○○○\
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
ジムリーダーイブキは〈クリムガン〉を繰り出した。
「クリァ! 」
ヒビキは眼を開いた。
「最初から本気で行くぞ! 唸れ! 迅雷の〈エレザード〉! 」
《バトル開始》
「クリムガン〈りゅうのはどう〉! 」
〈りゅうのはどう〉は本物の龍のようにエレザードを食らおうとする!
「〈10まんボルト〉! 」
雷のように強力な電気が〈りゅうのはどう〉とぶつかり合う。どちらも一歩も譲らない。全力をぶつけ合っている。
「やるわね…...あなたのエレザード。でもまだ足りない! 」
〈りゅうのはどう〉が威力を強めた!電気が龍へと食われてゆく。やがて龍はエレザードを襲う。エレザードはフィールドから観客席まで飛ばされた。
「エレザード!! 」
「エ、エレッ…...」
「〈ドラゴンクロー〉! 」
「エレザード〈10まんボルト〉! 」
エレザードの〈10まんボルト〉は、クリムガンの動きを鈍らせた。
「今だ!〈ドラゴンテール〉! 」
エレザードの尾っぽがクリムガンをフィールドへ叩きつける!クリムガンはそのままモンスターボールへと強制的に戻り、代わりに〈キングドラ〉が引きずり出された。エレザードは観客席からフィールドへ戻り、呼吸を整えた。
「まさかドラゴンタイプの技を持っていたとは…...少し甘く見すぎたか 」
ドラゴンタイプの技はドラゴンタイプに効果抜群だ。
キングドラは〈水\ドラゴン〉タイプ。つまりエレザードは相性が良い。だが、だからと言って油断して良い相手でない事に変わりはない。こういった場面を想定し、それを超えてくるのがジムリーダーだ。肩に力が入る──怖くなるほどに大量の汗が流れる──ゴクリと唾を飲む──観客席からのコトネの声援すら聞こえなくなる──ただのジムリーダーではない。何か──何がおかしい。ジム戦をしているというのに、ジム戦をしているという実感がない。ジムリーダーがいる感覚がない。ただ、野生のポケモンとだけ戦っているような……不思議な感覚。
そして気づいたのだ……ジムリーダーイブキは、ポケモンと共に戦っているのではなく…ポケモンと共に、一緒に、呼吸を合わせながら、自分も戦っているのだ。ヒビキも、ポケモンを理解してきたが、あくまで〈トレーナー〉と〈ポケモン〉という壁を隔ててだった。しかし、彼女はそんな壁を超えて、ポケモンと一体化している。そんな彼女に、勝つ方法は一つしかない……。彼女と同じ様
にポケモンと一体化する事だ。すぐにできるかと聞かれて「うん。」と答えれる事じゃない。でも、少しでも近づけたなら──
──今から俺はエレザードだ!
その時、エレザードと呼吸が合った気がした。胸の鼓動、思考、そして心が重なった。
「エレザードっ── 」
そう指示をするのとほぼ同時、エレザードは〈10万ボルト〉を溜めた。そして、
「──〈10まんボルト〉! 」
「回避っ! 」
エレザードとヒビキの思考は一致している。次に出す技の準備はできている。
「〈パラボラチャージ〉! 」
「〈なみのり〉よ! 」
キングドラの〈なみのり〉によって、攻撃は打ち消されたが、感覚は掴めてきた。
「痛いところはない? エレザード」
ヒビキが問うとエレザードは「大丈夫だ」と言うかの様に元気良く返した。
「よし、〈あなをほる〉だ! 」
「穴の中に〈れいとうビーム〉よ! 」
「──それを待っていた! 」
「なにっ!?」
穴の中から最大出力の〈10まんボルト〉が溢れ出る。勿論、キングドラはその攻撃を諸に喰らってしまう。だが、それでもキングドラは倒れなかった。
「あなた、今の威力の〈10まんボルト〉を放つために技と穴にキングドラを誘き寄せたのね 」
ヒビキは驚いた……今の攻撃でキングドラを仕留めるはずだったんだが、どうにもそうはいかないらしい。
ここでキングドラとイブキは大きな賭けにでた!
「キングドラっ──〈りゅうせいぐん〉! 」
ほぼ指示と同時に放たれたその技は、もうこの世のモノとは思えないものであった。炎に包まれた隕石が無数に降ってくるのだ。
ーどうやって避けろと…「あっ!」
ヒビキは──つひらめいた。
「〈あなをほる〉だ! 」
エレザードは地中への脱出を諮った。が、それはもう手遅れだった。流星がエレザードを襲う。煙が晴れて立ち上がるエレザードが見えた。エレザードは耐えたのだ。
「そんな……」
「よーしエレザード〈10まんボルト〉! 」
「ぐっ、キングドラ〈ハイドロポンプ〉よ! 」
2つはフィールドのど真ん中でぶつかり合う。やがて、大きな音を立てて爆発が起こる。煙は晴れる…立っていたのは…
「キングドラ!? 」
「エレザード! 」
「両者戦闘不能!」という審判の声が、ジム全体に響き渡った。
「やるじゃない 」
そう言いながら、イブキはキングドラをボールに戻した。
「ハァ──ハァ── 」
──なんだろう。オイラ……心の底からワクワクしてる。
これが、真のポケモンバトル──!
「もう疲れたの? 」
──それもそのはず、フスベの龍の民代々伝えられてきた伝統の戦い方 を、これっぽっちも同じ血の流れていない彼が真似をしても……そう楽 なものではない
……はず──
「……くっ、まだまだこれからです! 」
──いくっきゃない──やるっきゃない──負けっこない──止まらない最後まで!
──ひとりじゃない──寂しくない……
「俺には仲間たちがいる! 」
「もう一度お願い! クリムガン 」
イブキはクリムガンを繰り出した!
「クリュウ……」
「蒼穹なる閃光今ここに──〈ゲッコウガ〉水参! 」
ゲッコウガはボールから出た瞬間に消えた。
「なにっ!? 」
「〈つじぎり〉 」
一筋の黒い光がクリムガンを切り裂く。
「速すぎて見えない!? 」
「もう一度〈つじぎり〉! 」
「〈じしん〉! 」
フィールドが思い切り揺れた。ゲッコウガは攻撃を受けて姿をさらしてしまった。ヒビキは、クリムガン相手にエレザードを真面に戦わせなくて正解だったと思った。地面タイプの技はエレザードに効果抜群のうえ、もしエレザードが
〈あなをほる〉を使っていたら、〈じしん〉の餌食になっていた。
「クリムガン〈りゅうのはどう〉! 」
「かわして〈みずしゅりけん〉! 」
ゲッコウガは右によけて〈みずしゅりけん〉を放つ。手裏剣はクリムガンの右肩を裂く!
「クリムガンっ! 」
「〈つばめがえし〉! 」
「左手で〈ドラゴンクロー〉 」
クリムガンは〈つばめがえし〉を片腕だけで受け止めた。反撃を怖れたゲッコウガは距離をとった。
「〈りゅうのはどう〉! 」
「〈なみのり〉! 」
ゲッコウガが片手で大地を思いきり叩くと、ゲッコウガの周りに水が溢れ出る。
その波は〈りゅうのはどう〉からゲッコウガをまもる壁となった。
「〈つじぎり〉! 」
「アッパーで〈ドラゴンクロー〉! 落下を狙って〈りゅうのはどう〉! 」
クリムガンはゲッコウガを天井までぶっ飛ばした。ゲッコウガは怯んで身動きがとれなかった。そのままゲッコウガが落下しはじめたところを狙って、クリムガンは〈りゅうのはどう〉を放った。何の抵抗もできず、ゲッコウガは攻撃を喰らった。ゲッコウガはフィールドの上に落ちた。すぐに立ち上がろうとする。
「とどめの〈ほのおのキバ〉! 」
「右肩の傷を狙え!〈つじぎり〉! 」
ゲッコウガの方が一瞬速かった。クリムガンは倒れた。
「クリムガン……よくがんばった 」
「……… 」
「次はこの子よ!〈フライゴン〉! 」
モンスターボールからとてつもなく大きな龍が姿を現す。
「で、でかい! 」
「これが……フライゴン 」
「……ラァアイ!!! 」
「この子はね。私がホウエン地方にいるポケモンリーグ四天王の人に会いにいった時に、とある砂嵐の中出会ったの 」
「それにしても……でかい──普通の1.5倍くらいはある 」
「準備はいいかしら? 」
「っ────! 」
「フライゴン〈りゅうのはどう〉! 」
「走れ! ゲッコウガ ! 」
〈りゅうのはどう〉を難無くかわすゲッコウガの姿はまさに閃光だ。残像しか……いや、残像すら見えない。まずはこの素早い動きを止めなければと思ったイブキは次の指示を出す。
「〈ストーンエッジ〉! 」
大地から岩が飛び出し、ゲッコウガの行く手を阻んだ。
「囲まれた 」
岩に囲まれ、ゲッコウガはもう何もできなくなってしまった。
「とどめの〈りゅうのはどう〉! 」
ゲッコウガは倒れた。
「お疲れ。ゲッコウガ 」
次に構えたボールをフライゴンめがけて投げた。
「いくよノイズ! 」
ノイズのメガリングは突如光った。
「この光……ヒビキ。使ってくれ俺の力を! 」
「ゲンガー……メガシンカ! 」
ヒビキのメガリングとゲンガーのゲンガーナイトが反応した!
メガエネルギーの集まりが光の繭を作り出す。そして力は今──放たれる!
「これが……新たな俺たちの力。メガゲンガー! 」
「ヒビキ! メガゲンガーは特性〈かげふみ〉よ 」
観客席──エレザードの突っ込んだ跡の残った所の少し横辺り──から、ヒビキをサポートするコトネの声が聞こえてくる。ヒビキは自分に余裕が無かった事に気付く。バトルが始まってから、今まで一切コトネの声が聞こえなかった。
その時、誰かが教えてくれたバトルに勝つために一番必要な事──笑う事──を思い出した。これは、自分に余裕ができるというメリットがある。
「くっ、ふははっ」
「っ!? (楽しんでいる……一瞬の瞬きさえ許されないこの状況を) 」
ヒビキは笑い声を響かせた。だが、今の彼の笑い声は……無理やりな感じがした。
声が少しだけ、震えているのだ。
そんなヒビキに、また観客席からコトネの声が届いた。「ヒビキ、肩の力を抜いて!リラックス! 」
駄目なのだ。いくら深呼吸をしても、この胸の高まりには余裕ができない。ヒビキは追い込まれていた。そんな様子を見てコトネは何度もヒビキに言う。
「ヒビキっ!! 」
そんな中、ヒビキの耳にストレートに届いた声があった。その声は強く。怒りさえ感じられた。ノイズだ。
「何ぼさっとしてんだ! お前の『居場所』はちゃんとここにあるんだ! だから安心して思いっきり当たってこい!」
「居場所……俺たちの── 」
「余裕がなくなるのは貴方らしくないよ! ヒビキ! 」
それはヒビキの心まで響いた。そしてヒビキは返した。
「ありがとう……コトネ、ノイズ! 」
「覚悟はできた?」
イブキがヒビキに問う。
「はい! 」
ヒビキの返事には、余裕があった。
「ゲンガー〈こごえるかぜ〉! 」
「よけて! 」
氷の様に冷たい風が、フライゴンに吸い込まれる様に吹く!フライゴンは翼を大きく広げ、地面の上を這う様に飛んで逃げる。〈こごえるかぜ〉はフライゴンの尾っぽを追う。
「〈シャドーボール〉! 」
〈シャドーボール〉が命中、動きが止まったフライゴンに〈こごえるかぜ〉が吹く!フライゴンは凍りついた。
「いいよヒビキ! 氷タイプはフライゴンにk「フライゴン〈だいもんじ〉! 」
コトネの言葉にかぶさるイブキの指示。フライゴンは一瞬にして氷を溶かし、大の字型の炎を放った!
「ゲンガ──っ!! 」
ゲンガーは赤い炎に包まれた。
「〈あくのはどう〉だ! 」
ゲンガーの〈あくのはどう〉はまとわりつく炎を弾き返した。
「〈シャドーパンチ〉! 」
「〈ストーンエッジ〉! 」
「かわせ! 」
ゲンガーは〈ストーンエッジ〉を避けながらフライゴンにパンチをいれた。
「体勢を立て直して…〈りゅうのはどう〉! 」
波動はゲンガー向けて一直線!
「〈シャドーボール〉! 」
2つのぶつかる激しい爆発音が、ヒビキの体を押す。
「最大パワーで〈あくのはどう〉! 」
鋭く赤黒いの槍が、大地の龍を貫こうとする。
「〈りゅうのはどう〉! 」
槍に対するは、聖なる青白いの龍。赤き槍を食おうとする。
すさまじい2つのぶつかり合いは、フィールドの壁を剥がしていく。
やがて、ヒビキとイブキ、バトルフィールドの端と端の間で、赤と青、黒と白が混じり、ともに輝かしい光の粉となり弾けた。
「〈シャドーパンチ〉! 」
メガシンカのエネルギーも、身体のありとあらゆる力全てを拳にためて、今放とうとする! 一撃でフライゴンを沈められると思われる。だが、
「フライゴン…〈げきりん〉モード! 」
「あれは…… 」
フライゴンの周りに、赤いオーラがまとわりつく。
「あれはワタルさんが使っていた〈げきりん〉モード! 」
観客席のコトネも驚いた。
「フライゴン〈りゅうのはどう〉! 」
それは〈りゅうのはどう〉というより、もはや〈ドラゴンダイブ〉だった。
あまりのすさまじさにヒビキは気を取られてしまった。
「しまった。ゲンガー!」
ヒビキが正気に戻った時には、ゲンガーは横たわっていた。
*「 火 山 ・ 轟く 」
ヒビキは悟った。
ジムリーダーイブキは、ポケモンリーグチャンピオンワタルの妹だという事を。
その根拠は、彼女が使った力ーー〈げきりん〉モードーーだ。まだ、ワタルのモノに劣るが、それでも、強くない事などない。
「さあ、次は何を出すの? 」
ヒビキはイブキに迫られる。「何をだそうか 」と迷う。すると、横でウリムーが鳴いた。
「ウリッ! 」
「ウリムー…… 」
このウリムーは、父のマンムーから預かったポケモン。どんどん戦わせて、経験させてやりたい!
「よし、いけ! ウリムー 」
──力では劣るかもしれない。でも!──ヒビキは1つの可能性を信じ、ウリムーを場に出した。
「そんなに可愛い子でいいの? 」
「はい! 」
手は……ある!
「フライゴン〈げきりん〉よ! 」
フライゴンの最強の技……赤いオーラがさらに赤みを増す。
──チャンスは一回だけだ──
フライゴンをその翼と爪を釜の様に振り回した。
「〈こらえる〉! 」
ウリムーは不思議な力によって守られたが、残りHPはゼロに等しい。
「耐えた所で何の意味があるのよ! 」
「あるさ! ウリムー〈がむしゃら〉! 」
「しまった!? 」
ウリムーから、〈げきりん〉と同じ光が放たれた。
「フライゴン! 」
ウリムーも、フライゴンもHPはゼロに等しい。
「ウリムー〈こおりのつぶて〉! 」
尖った氷が、目に見えぬ速さでフライゴンを貫いた。
フライゴンは倒れた。
「そんな……あんなにもあっさりと 」
その時、ウリムーが太陽の様に 神 々しい光を放った。進化の光だ 。
蛍の様に小さな光の粒が、ウリムーを包み込む。そして今──放たれる!
「ムゥー!! 」
ウリムーはイノムーへと進化を遂げた。
吹きつけてくる暖かく優しい風に心が少し押された。
体は壁の様に大きく、その牙は一本の槍の先の様に鋭い。
「いくよ! イノムー! 」
「あなたの相手はこの子よ! 」
モンスターボールから〈ハクリュー〉が出てきた。
「クゥウウ!! 」
「イノムー〈がむしゃら〉! 」
「避けて! 」
「逃がすな!〈れいとうビーム〉で固めろ! 」
蒼穹の槍がハクリューをとらえた。ハクリューは凍りついてしまい身動きが取れない。
「〈がむしゃら〉だ! 」
ハクリューは〈がむしゃら〉によってかなりの体力を削られた。
「決めるぞ〈こおりのつぶて〉! 」
「ハクリュー〈れいとうビーム〉! 」
2つはぶつかり合い霧を作り出す。
「新技をお見舞いしてやれ!〈こおりのキバ〉! 」
イノムーは霧を切り、ハクリューがいるはずのところへと牙を向けた。
だが、そこにハクリューはいなかった。
「しまった! 」
ヒビキが視点を上へと動かすと、イノムーの真上にハクリューがいるのが見えた。
「〈かえんほうしゃ〉! 」
「避けて! 」
イノムーは間一髪で攻撃を避けた。
「〈りゅうのはどう〉! 」
「〈れいとうビーム〉 」
天空をゆく龍と、それを貫こうとする氷の槍がいまぶつかる!
「ハクリュー、頑張って! 」
「イノムー! 」
爆発が起こった。煙が晴れてフィールドをみると、
ハクリューとイノムーが共に倒れていた。
「お疲れ様、ハクリュー…… 」
「イノムー、よく頑張った…… 」
イブキとヒビキは互いにポケモンを戻した。
「ふっ、残り1体ずつね! 」
「どうやら……そうみたいです 」
「もちろん残してるんでしょ? あなたの“A”──バクフーン── 」
「……ワタルさんから聞いたんですか? 」
「あら、気づいていたのねその事──イブキとワタルが兄妹だという事──に 」
イブキは力いっぱいモンスターボールが潰れるくらい強く握った。
「残してますよ……もちろん」
「さあ、初めましょ! 」
「〈バクフーン〉!! 」
「〈カイリュー〉! 」
バ ク フ ー ン / L v . 5 0
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
ー ー 〈 V ・ S 〉 ー ー
カ イ リ ュ ー / L v . 5 0
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
「カイリュー〈ほのおのパンチ〉! 」
「バクフーン〈きあいパンチ〉 」
カイリューは右拳に赤々と燃える炎を宿す。
対して、バクフーンは自身の気を全て右拳に集中させた。
両者はフィールドを真っ直ぐに駆ける。そして、互いに拳をぶつけた!
針の様に鋭い風が巻き起こる。カイリューもバクフーンも両脚をしっかり踏ん張り、互いに一歩も譲らない!
「バクフーン〈かえんほうしゃ〉!」
「離れて!」
バクフーンの〈かえんほうしゃ〉を警戒したイブキは、カイリューに距離を取るように指示をだした!
「〈しんそく〉! 」
カイリューが神に勝るスピードでバクフーンに再び向かう!
「〈かえんほうしゃ〉! 」
バクフーンは太陽の様に赤い炎を放つ!カイリューはそれを間一髪でかわした。
「もう一度〈ほのおのパンチ〉!」
カイリューの拳がバクフーンを壁までぶっ飛ばした。
「いけるか? バクフーン」
「バク……! 」
「カイリュー〈ドラゴンテール〉! 」
「バクフーン!! 」
バクフーンはまだ体勢が整っていなかった。
「打ち上げて! 」
カイリューの尻尾は、バクフーンを高く打ち上げた!
「バクフーン〈かえんほうしゃ〉! 」
「なにっ!? 」
体勢は整っていなかったが、無理矢理〈かえんほうしゃ〉を撃った。
そして技は見事に命中した!
「バクフーン〈じしん〉! 」
バクフーンは打ち上げられた位置から急降下し拳で地面を叩いた!
「カイリュー!! 」
「〈きあいパンチ〉だ 」
バクフーンは右拳に気合を集中させた。拳を中心に強い風が吹き荒れる!
「そうはさせない! カイリュー〈きあいだま〉よ! 」
カイリューは気合を身体の前に具現化した!そして今────撃たれる!
「──バクフーン、受け流せ! 拳を使うんだ! 」
バクフーンは拳を〈きあいだま〉にかすらせた。〈きあいだま〉は軌道を変え、ヒビキの顔の1ミリ程隣を行く。ヒビキの髪が靡く。
「いけ! バクフーン! 」
──拳に力は溜まった!後は解放させるだけだ!──とヒビキはバクフーンに指示を出した!
バクフーンは足場が崩れてしまう程に踏ん張り、一気に地を駆けた!
「〈ドラゴンテール〉で受け止めて! 」
バクフーンの動きはカイリューの尻尾に寄って抑えられた!
「バクフーン! そのまま〈ふんか〉だ! 」
真っ白な煙を噴き上げるその姿は、まさに大地にそびえる巨大な火山だった!
そして、その岩石の溢れ出る様は、宇宙の全ての始まり──ビックバン──を思わせる。
〈ふんか〉の衝撃により、カイリューはフィールドの端まで飛ばされた。
その時だった…
「くっ──!」
ヒビキの右腕に謎の痛みがはしった!腕を内側から引き裂くような痛みが──
「何よあれ!? 」
コトネは見てしまった。ヒビキの右腕に、七色の痣が浮かび上がる瞬間を──
「ヒビキ……やっぱり 」
「やっと……俺を見つけたんだね 」
「……何を言っている!? 」
「ふっ、なら少し力を借りるよ !」
ヒビキは誰と話したのだろうか?1度深呼吸をして叫んだ!
「ラスト……」
「え? 」
「あと1回の攻撃で決める!! 」
「そうはさせないわ! 」
「バクフーン!! 」「カイリュー! 」
「〈きあいっ──!」「〈ほのおのっ──!」
バクフーンの周りに炎が宿る。特性もうかだ!
カイリューも周りに赤いオーラをまとう。〈げきりん〉モードだ!
そして、2人のトレーナーは指示を出した!
大きな…声のかれる程に大きな声で──
「「────パ ン チ っ ────!!!!!」」
龍と火山はぶつかり合おうとする。フィールドの真ん中で、互いの腕を唸らせながら──
「っ!? 」
視界が真っ暗になった。
「停電!? 」
その時、ヒビキはフィールドの真ん中にある存在に気づいた。
「……X 」
「久しぶりだなぁ、ヒビキ 」
フィールドの真ん中に立っていたのは怪盗Xだった。突き抜けた天井からほのかにはいる月の光が彼を照らす。
「ロケット団が行動を始めた……俺たちも直ちに動かなければ── 」
「──待てよ 」
観客席からノイズが口を挟んだ。ノイズはゆっくりとヒビキのいるところへと歩いてきた。
「前々から気になってたんだよ。あんたの正体…… 」
怪盗Xは黙り込んだ。
「ロケット団でありながら、こちらの味方もしていた。だいたいの予想はついている。あのドンカラスもそれなりのヒントになったからな 」
ノイズは銃を向けた。
「その仮面、剥がさせてもらう 」
銃弾は仮面の上部を叩くように当たった。ヒビが入り、そこから仮面は割れた。
仮面が地に落ちた頃には、ジム内が石のように静まり返っていた。
「……ノイズ… 」
コトネがふとその名を口にした。
「やはり、そうだったか 」
「ノイズさんが……怪盗X!? 」
長い赤髪、銀色の眼。間違いはない。怪盗Xの正体は──

「そう。俺はノイズ。怪盗Xの仮面を被り……この時間軸の運命を変える男だ────