ポケットモンスターANOTHER








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STAGE1. GOLDEN MIND
記録27. 正義とは

氷の抜け道。8つ目のジムのあるフスベシティにいくには、ここを通らなければならない。その洞窟は氷でできており、気温は低いところでマイナス40度にもなるらしい。
「寒いよぅ 」
コトネが言った。
「我慢だ。この洞窟を抜けないとジムには行けないんだ 」とヒビキ。
「──っ、なぁヒビキ。なんか聞こえないか? 」
ノイズが言い出す。
「確かに何かの鳴き声が── 」
ユメカも異変に気付く。
「よし、行ってみよう 」
「ええ! 早く抜けたいよぅ 」
「コトネさん、頑張ってください 」
カトレアにも背中を押されて、仕方なくコトネはついていった。

「なっ──── 」
その光景を目の当たりにする。
一匹のウリムーが氷の岩にくくりつけられていた。その痩せ細った身体から、捨てられたポケモンであることがわかる。
「ウゥリィィ 」
「ウリムー…… 」
震える身体にヒビキは手を差し伸べた。するとウリムーはその手に噛み付いた。
「くっ!! 」
「ヒビキ!! 」
「心配すんな。このくらい── 」
噛まれていない方の手でウリムーを撫でた。ウリムーの手を噛む力が徐々に緩んでくる。
「ウリムー…… 」
「ウリリィ 」
ウリムーは手を噛むのを止めた。
「一体誰がこんな酷いことを 」
「ロケット団以外にもこんなことをする奴がいたんだな 」
「可哀想よ 」
「ウリムー……俺と一緒にっ──!! 」
その時、ヒビキの足場が崩れた。
「ヒビキっ!! 」
ノイズの差し出した手の指がヒビキの差し出した手の指にかすった。ヒビキは落ちていった。
「ヒビキ──!! 」



「いてて……ここは 」
「ウリィ! 」
「ウリムー無事だったか! よかった 」
「ウー! 」
「それにしてもかなり地下まで落ちてしまったようだな 」
横をみるとウリムーがとても震えていた。
「安心しろ、俺はお前を見捨てたりしない 」
もう一度ウリムーの頭を撫でた。ウリムーはとても嬉しそうにしていた。
「さて──っ! 」
ウリムーの方へ飛んでくる殺気を感じた。とっさに出した右腕は、その攻撃に呑まれた。
「くぁっ! 」
「ウリ!? 」
「お見事。金色 ヒビキ 」
「貴様は──っ!? 」
その顔に見覚えがあった。
「アポロ 」
「光栄ですね。名前を知っていただけてるとは 」
「罠か……このウリムーを縛り付けたのは── 」
「そう、私です。あなたの考え方、思想は今までの出来事からだいたいは予測できました。あなたが最も最初にウリムーに触れることも 」
「ポケモンたちにこんなことまでして、一体何が目的だ! 」
「もちろん世界を壊すことです 」
「世界を……壊す!? 」
「ええ。そして新しい世界を創り出すのです。あなたも望んでいる優しい世界を 」
「優しい? なにかの犠牲に成り立った世界がか? 」
「この世界だって犠牲の上で成り立っている。私もその犠牲者だった。だからこそ壊す……愚かな考えを消し去る 」
「違う──そのようなやり方で得た結果が意味をなすことなどない。貴様が言っている優しい世界など…… 」
「金色ヒビキ。問いに答えろ 」
「……なんだ? 」
「無力が悪ならば、力は正義か? 友情は正義たり得るだろうか 」
「そもそも無力が悪だという仮定が間違っているな 」
「私はそう強いられてきた。力でねじ伏せられ、ねじ伏せられた側は何も言うことができない 」
「だから今度は自分がねじ伏せるのか? それは── 」
「確かにそれは卑劣かもしれない。だが貴様らも力で我々を否定してきた。この世は所詮そのようなものだ 」
「くっ、だからポケモンを道具のように扱うのか? 」
「そういう世界だ 」
「違う。それだけは言わせない。ポケモンは人間の道具なんかじゃない 」
「その根拠はなんだ? 貴様も私も、モンスターボールというシステムの中にポケモンを閉じ込めてきた 」
「……そうだな。もしかしたら俺も……でも俺は信じてるから……俺のポケモンを 」
「ほう 」
「だから俺はお前を否定する! お前とは違ったやり方で世界を変えてみせる 」
「ならば私も証明してあげましょう。希望に満ちただけの理想が無力だということを 」
そのままアポロは去っていった。
「アポロ……少しはお前がわかった気がする 」
「金色ヒビキ……ふっ、答えは得た。世界をこの手で壊してみせる 」
2人は歩き出した。その方向は真逆であったが、目指したゴールは同じであった。過程と結果。そのふたつが生き物になにをもたらすかは、まだ、誰も知らない。
「だからこそ見つけ出す……なにが正義で……なにが悪かを 」
ヒビキは歩みを止めた。ノイズたちが向こう側で手を振っていた。
「この仲間たちとともに 」

「悪から導き出される正義で……私も明日を掴む。私を阻むのなら、その時は殺してやる……金色の悪魔 」


■筆者メッセージ
最終記録に気を入れすぎて、少し手抜きになりました。
ちなみにウリムーはゲットしました。
月光雅 ( 2015/08/11(火) 15:14 )