ポケットモンスターANOTHER








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STAGE1. GOLDEN MIND
記録24. 赤色の怒り

7個目のバッチを手に入れるため、ヒビキとコトネはチョウジタウンに訪れていた。
「くしゅんっ! 」
「寒いの? 」
「まあね 」
「マグマラシ貸そうか 」
「ううん。マフォクシーがいるから 」
チョウジの町は、ジョウト地方で最も寒い町と聞いたことがある。とは言っても、シンオウ地方よりかは断然マシだが……

『なあ、知ってるか?色違いのギャラドス!』
『ああ、赤色なんだろ?』
『そうらしいんだが、どうも奴のいる怒りの湖は辺りが見えなくなる程の雨が降ってて、近づかないと見えないし、近づこうとしたら攻撃してくるんだって! 』
『マジかよ、あっでもさ…』

「色違いの──赤いギャラドス? 」
「行ってみる? 」
「うん 」
ヒビキには嫌な予感しかしなかった。ただ色違いなだけというのに──

怒りの湖に着くと、噂通り雨が降っていた。
だが確かに見える……ギャラドスの影が。
この湖は、中で泳ぐコイキングが見える程にすきとおっており、とても大きな湖だということで評判だと聞いていた。まあ、大きな湖なのは合っている。だが、中で泳ぐコイキングが見えない。水がすきとおっていないというより、そもそもコイキングが居ない様に見える。

「君は──ヒビキ君ではないか!? 」

振り向くと、一人の青年が立っていた。
「誰? 」
「ワタルだ 」
青年はワタルと名乗る。
「ワタル…… 」
「現在、この地方のチャンピオンだ 」
「っ!! 」
「ヒビキ、チャンピオンさんとお知り合いなの? 」
「ああ、一度お手合わせ願った事があった 」
ヒビキは苦笑いをしながら、ワタルを軽く睨んだ。
「君には才能がある。また、君の成長したバトルが見れるといいね 」
敵ではない、だがヒビキは少し警戒していた。ヒビキは、彼の強さを知っている。
「おいヒビキ! 」
またまた、声をかけられる。今度はノイズだった。
「ノイズ、ユメカとカトレアさんまで!」
「ほう、イッシュの四天王 」
「チャンピオンさん、大変だぜ! 」
「なんだ 」
「あれはロケット団の仕業だ! 」
「なんだと!?」
「ロケット団! 」
「ゲートで通過料金要求してくるから、叩きのめしたんだが、そしたら怯えながら、ポケモン強制強化計画について教えてくれたんだ。」
「ポケモン 」
「強制強化計画だと!? 」
ヒビキはもう一度ギャラドスを見た。
確かに、何かに操られている様に見えた。
赤い体に赤い目、苦しそうな声。
「ヒビキ君、ノイズ君、 」
ワタルはヒビキとノイズの肩に手を乗せ、そして言った。
「あれを見て──ポケモンは恐ろしいものだと思うかい? 」
「違うな。間違っている 」
ヒビキに続けて、ノイズは言った。
「俺も同じだ 」
「俺もだよ。昔、同じチャンピオン仲間に聞かれたことがあってね。その時僕は「違う」と言えなかった。進化する生き物……無限大の可能性を持つポケモンを恐れてしまった。でも、ポケモンを強くするのは絆の力だ。絆は恐ろしくなどない。むしろ勇気だ 」
「「絆の……力 」」
ヒビキとノイズは右腕にあるメガリングを見た。
そして、モンスターボールの中のポケモン達を見る。
コトネも捕まえたポケモン達を見て言う。
「この水、ロケット団への……人間への怒りと憎しみに溢れてる 」
「コトネさん…… 」
そして、ワタルは言う。
「行くぞ! みんな! 」

ヒビキはゲンガーを
ノイズはトゲキッスを
コトネはバタフリーを
カトレアはムシャーナを
ユメカはキングドラを
ワタルはカイリューを繰り出した!

ノイズのトゲキッスを見てヒビキは言った。
「とても可愛がってくれてるみたいだね 」
対してノイズは、「そちらこそ! 」と返した。

「ギャララララララアァァァ!!! 」

「とりあえずあの暴れん坊を止めよう! 」

「────そうはさせないよ!! 」
その声に、恐怖を覚えた。何処からか聞こえてきたその声は、とても鋭く冷たかった。
「誰だ!? 」
──────
──
ひとつの影がヒビキたちの前に現れた。そいつはフードを目深く被り、鼻と口だけをこちらに見せていた。
「我が名は“リヒト” 」
「邪魔をする気か!? 俺たちの 」
「邪魔……? 違うよ。デリートだよ!! 」リヒトはダークボールを構えた。
「くっ────!! 」ヒビキたちは身震いする。
「いけっ! サマヨール! 」
現れたのは霊界の覇者。サマヨールだった。
「6対1……か。少し面倒だな 」
「ゲンガー! 〈シャドーパンチ〉!」
「サマヨール〈シャドーボール〉! 」
ゲンガーは突き飛ばされる。
「ゲンガーっ!!──ぐっ! 」
飛ばされたゲンガーはヒビキとともに木にぶつかる。
「トゲキッス〈じんつうりき〉! 」
「〈あくのはどう〉! 」
空を飛んでいたトゲキッスは、邪悪な光によって撃ち落とされた。
「トゲキッスっ!!──くぁ! 」
邪悪な光はそのままノイズをも貫いた。
「ノイズ!! 」
「くそっ! 」
「バタフリー〈ねむりごな〉! 」
「ムシャーナ〈サイコキネシス〉! 」
「キングドラ〈れいとうビーム〉! 」
「カイリュー〈げきりん〉! 」
4体が同時にサマヨールに襲いかかった。だが──
「サマヨール〈まもる〉 」
サマヨールは結界により攻撃を防ぎ、さらに防いだ攻撃のエネルギーをこちらに放射した!
「「「「くぅあああ”!!!! 」」」」
トレーナーたちもも被害を受ける。
「ふーん。チャンピオンに四天王までいるのに……予想内だったなぁ 」
リヒトは蹴りを付けようと手を上げ合図を出そうとした。
「ん? 」
3人が立ち上がった。ヒビキとノイズ、そしてコトネだ。
「あはは! これは予想外! 君たち神に選ばれてたんだ!あっははぁ! 」
リヒトは笑いをピタリと止めて沈黙を呼んだ。
「でも、目的は別なんだぁー 」
リヒトは彼女のもとへ歩いていった。カトレアのもとへ。
「その力をよこしてもらおうか 」
「させないっ! 」
「────っ 」
リヒトの後ろから飛びかかろうとしたヒビキだったが、サマヨールの〈サイコキネシス〉で返り討ちに遭う。
「くぁっ!! 」
「さあよこせ! そのゼルネアスの力を! 」
リヒトがカトレアに触れようとしたその時──

「ブリガロン〈ウッドハンマー〉! ゾロアーク〈幻影“水槍”〉! 」

空から落ちてきたブリガロンが、リヒトの腹に大樹の攻撃を食らわせた。リヒトは怯んだ。遅れて落ちてきたゾロアークは水の槍で彼を貫いた。
「くっ、誰だ! 」
リヒトは空を見た。
「────っ 」
ヒビキは、その白い仮面とマントに見憶えがあった。
「怪盗Xっ!? 」
ドンカラスに乗った奴は、リヒトを睨んだ。
「くっ、サマヨール……撤退。予想外だ 」
リヒトは雨の中に逃げていった。

「怪盗X……貴様は── 」
ノイズはその瞬間に、答えを得てしまった。もしかしたら得ぬ方が良かったかもしれない……彼の正体を。


■筆者メッセージ
なんだかんだと言って二作目を書き始めてしまいました。次回は「悪の対象」です。二作目も次回も是非見てください。
月光雅 ( 2015/08/02(日) 23:12 )