ポケットモンスターANOTHER








小説トップ
STAGE1. GOLDEN MIND
記録23. 清き水を求めて

ヘラクロスをシジマのもとへ預けたことにより、空の移動が出来なくなった。
そのためヒビキたちは今、アサギの海の上にいる。
「ラプラス、あと半分程度よ 」コトネはそう言いながら、ラプラスの頭を撫でた。
ラプラスはこくりと頷くと、再び泳ぎ始めた。
「ヒビキには凄いものを見してもらったし、私たちも頑張らないとね 」

────────────。

「えっ? 」
コトネはその時聞こえた“水が地下道の中で滴るような音”に振り返った。
もちろんこの海の底に地下道などもなく、あるのは“渦巻島”という洞窟だけだ。その洞窟はここからかなり距離があり、中で響いた水の音がここまで聞こえるはずがない。
「ねぇヒビキ。今の音って…… 」
ヒビキにもきっと聞こえているはずだと思い、ヒビキの顔を見てそう問い掛けたが、ヒビキはキョトンとこちらを見るだけで、何のことだかわかっていない様子だった。

────────────。

またその音はした。今度はより近く感じる。まるでコトネを誘うように。

────────────。

しかし、コトネが感じたのは不安や恐怖心ではなかった。
「コトネ? 」
ヒビキは心配そうにこちらを見ている。
「そこにいるのね 」
「っ? 」
「──ヒビキ。ごめんだけど、少し寄り道さしてくれない? 」
「……構わないよ 」


*ノイズside[アサギシティ]

「ここがアサギの灯台か 」
5つ目のバッチもゲットしたノイズは、ヒビキ同様に、ミカンにアサギの灯台へ来るように命じられた。
「よし、とりあえず中へ──」
足を踏み入れようとすると、天から女の声が聞こえた。
「危ない! 退いてくださぁい! 」
「はぁ!? 」
ノイズは動揺しながらも、その落ちてきた女を受け止めた。
「ありがとうございます。まさか下に人がいるなんて思ってなくて 」
「いや。僕もまさか上から人が落ちてくるとは──って瑠璃神! 」
「っ! ノイズさん! 」
上から落ちてきた少女は瑠璃神、つまりユメカであった。
「なんで上から落ちてきたんだよ 」
「いやぁ、着地は得意なんですけど、まさか下にノイズさんがいるとは(汗 」
「まったく。それ女のやることじゃないだろ! 」
「──だからあれほど下を確認しなさいと言ったのに…… 」
テンポの良い会話をしていると、今度はカトレアが〈ねんりき〉をつかって降りてきた。
「で、ノイズさんはどういう用事で? 」
「ああ。実はだな── 」


*sideコトネ[渦巻島]

「きゃっ──── 」
ゴロゴロと鈍い音をたてながら、崩れた足場の石ころは落ちていく。
「気をつけろコトネ。この状況じゃ俺も助けにくい 」
「わかってる。頑張る 」
そこからは無言で、ただ直感で足を進めた。

────────────。

その音のもとへと着いた。とある部屋の前で立ち止まり、覚悟を決めて踏み入れた。すると──

──来たのカ。紅葉 琴音……──

「魔女か 」
その声はヒビキにも聞こえた。

──どうやら貴様にも、力を得る理由があるらしイ──

「力を…… 」

──さあ、その足を踏み入れロ。そして清き水の野獣と相乗りしてみせヨ! ──

その声は聞こえなくなった。コトネは彼女の言うとうりに、その足を踏み入れる。変わった風景の真ん中に、こちらを立って見ている影がある。

「貴方が清き水の野獣……スイクンね 」
スイクンは白い息を吐きながら、足で地面をコツコツと叩いた。彼の足から広がる氷の結界はコトネとヒビキの間を遮った。

──さあ、試される時だ ──

「っん……… 」
コトネは息を飲み込んだ。

*ノイズside[アサギの灯台]

「なんで着いて来るんだ 」
「いいでしょ別に、カトレア様がそうおっしゃたのだから 」
「瑠璃神お前な──」
「──ユメカです! 」
二人のテンポのいい会話に、カトレアは笑いをこらえ、口を挟まなかった。
「もうすぐ最上階だな 」
「そうみたいですね 」
「ノイズのせいで熱くなりました! 」
「はぁ!? 瑠璃っ──ユメカがぐちゃぐちゃ言うからだろが! 」
「ほらすぐカァッとなって、いつものクールさはなんだのですか? 」
「それは────すまない 」
ノイズのその応えに、辺りは静まり返った。
「ごめん。なんかいらないこと言っちゃった? 」
「いや、ユメカは悪くない……(ああそうだ。悪いのは── )」


*コトネside[試しの間]

「ベイリーフっ! 」
コトネは、スイクンに有利な草タイプのベイリーフを繰り出した。だが、スイクンは氷技を多用に操り、こちらを圧倒している。
「スイクン……さすがは幻のポケモンね 」
ベイリーフは氷を割ってスイクンに襲いかかった!
「〈エナジーボール〉よ! 」
鮮やかな緑の弾丸は、スイクン目掛けて宙を掛けた。だが、スイクンはそれを難なく氷の槍で貫いてしまった。
「っ〈れいとうビーム〉を具現化しただと!? 」
そんな戦い方があるのかと、ヒビキは驚いた。自分たちの斜め上をいく多様な戦術。それに対抗するために必要なのは、あらゆる経験から導く作戦と、ねじ伏せる力だ。でも────
「私には足りない……どちらとも!? 」
「視界を狭めすぎるなコトネ! 何か……何かあるはずだ! 」
「う、うん! 」
ヒビキのアドバイスを胸に刻み込み、コトネは辺りを見渡した。
(ヒビキの言うように、状況を一番理解出来るのはトレーナーなんだ)
[スイクンのれいとうビーム! ]
「っ!! ベイリーフ、14時の方向にある氷塊に隠れて! 」
ベイリーフはコトネの指示に従い、その位置へと飛び込んだ。
氷の光線が当たり一面を攻撃したが、ベイリーフは氷塊に守られた。
「レーザへビーム型の〈れいとうビーム〉か 」
「ベイリーフ〈くさのちかい〉!」
巨大な樹木の柱がスイクンを貫いた!
攻撃を受けたスイクンは、宙で回転しながら威力を半減し、次の攻撃に備えた。
「あれはっ────! 」
スイクンの周りに多数の水の弾丸が構えられた。
[スイクンのハイドロポンプ! ]
「ベイリーフ〈リーフストーム〉!」
草の竜巻が弾丸を巻き込み、スイクンを引き裂く!
「ベイリーフ、レーザービーム状の〈エナジーボール〉!」
ベイリーフの草の刃は、スイクンを貫いた。
「(コトネ……やはり君は凄いよ。状況理解とその判断力は、おそらく僕に勝るだろう )」
「ベイリーフ──! 」
[スイクンのぜったいれいど! ]
「ベイリーフ!! 」
ベイリーフは足の先から頭の天辺まで氷漬けになった。
「勝負あり……か 」
[スイクンはほえるを使った! ]





「んんっ 」
目が覚めると洞窟の入り口にいた。
「スイクンは? 」
「逃げたよ。ん、見逃してくれたの方が正しいかな 」
「そっか…… 」

──その調子だ紅葉 琴音。さあ、そろそろあちらの様子も見てきた方が良さそうだナ──

*ノイズside[アサギの灯台]

「メガカイロス〈インファイト〉! 」
メガカイロスの拳が、デンリュウを倒した。
「……ありがとデンリュウ。これで継承の儀を終わります 」
「ありがとうございました 」
「こちらこそ。またいいバトルをさせていただきました 」
ノイズは自分の右腕にある重さ噛み締めた。
「これが俺の──メガリング! 」
ユメカとカトレアはそれを遠くから見ていた。
「ノイズ……(やはり貴方は──)」
「(ユメカ、やはりノイズさんは、あれを呼ぶのにふさわしいのですね)」

それぞれがまた、新たな力に近づいた。だが、彼らの向かう未来という地獄もまた、彼らに近づいているのである。彼らはその地獄の先に、何を得て──何を喪うのだろうか。


■筆者メッセージ
読んでいただきありがとうございます。だんだんわけがわからなくなってくると思いますが……どうかそこは辛抱してもらいたいです。ですから改善点などありましたら、できるだけ指摘してもらえると助かります。

次回は「赤色の怒り」です。
月光雅 ( 2015/07/30(木) 09:47 )