ポケットモンスターANOTHER - STAGE1. GOLDEN MIND
記録21. 蒼き閃光

「──── 」
その日は、三日月だった。
生き物の息もないくらい静かな夜。
その中にたたずむのは激しく流れ落ちる滝。

断崖の洞窟。夜に訪れるには少し危険な場所だ。だが、集中力を鍛えるにはとてもよい場所でもある。

「───── 」
この時間帯はポケモンたちも寝ている。襲いかかってくるものなどない。

「────っ 」
硬く結ばれた少年の唇は放れた。この状況である筈のない音がしたのだ。

────────
──────
───

「──つばめがえし! 」

何かの殺気を感じた。即座に指示をだす。
眼を開けて、ゲコガシラと向き合っていたのは────ニョロボンだった。
「大したトレーナーだ。ワシのニョロボンの不意打ちに対して、的確な指示をだすとは 」
人の気配が、洞窟の中からした。

歩く度にぴしゃぴしゃと水が跳ねる。その音は静かな夜に恐怖心をもたらした。だが──そのような敵意識は一瞬にして解けた。

「シジマだ! タンバシティのジムリーダーをやっている! 」
「ヒビキです。ジム巡りをしてます 」
シジマは足を止めた。
「この滝で修行か? 」
「この──ゲコガシラとの精神を統一するには丁度良かったので 」
シジマは再び、こちらに向かって歩いてきた。ヒビキの目の前で立ち止まった彼は言った。
「いい心構えだ。ポケモンと通じあってこそのポケモンバトルだものな 」
シジマはその分厚い手を、ヒビキの肩に乗せた。
「決めたぞ。ワシの修行相手になってくれ! 」
ヒビキにノーという選択肢は思い浮かばなかった。ジムリーダーの弱点を理解するチャンスだからだ。

「勝負は一対一。先に相手を倒した方が勝ちだ 」
「ゲコガシラ── 」
ヒビキのポケモンはゲコガシラ。対してシジマはニョロボンだ。
「ニョロボン、こころのめ! 」
ニョロボンはゲコガシラに狙いを定めた。
「ばくれつパンチだ! 」
「みずのはどうで向かい討て! 」
ゲコガシラは高速で水の弾丸を撃った。しかし、ニョロボンはそれを弾きゲコガシラに接近した!
「くっ! かげぶんしん 」
大量の分身がニョロボンを囲んだ、だがニョロボンは迷わず本物を攻撃した。
「そんなっ!? 」
「こころのめは技を必中にする! 」
「ゲコガシラ!いけるか?────なっ!? 」
どう見ても大丈夫ではない。混乱している!
「ばくれつパンチは命中しにくい代わりに、喰らった相手を混乱させる! 」
なるほど、こころのめでばくれつパンチの命中の悪さをカバー、
ばくれつパンチが命中することで、こちらは確実に混乱。
この人──かなり強い!
「決めるぞニョロボン! きあい── 」
ニョロボンの拳を中心に風が舞い起こる!
「ゲコガシラ! 目を覚まして! 」
「ゲコゥ??????? 」
「ゲコガシラァァアアアア!! 」
「──パンチ! 」
ニョロボンはきあいの詰まった拳を構え、ゲコガシラを狙って接近!
「ゲコッ!? 」
ゲコガシラの混乱が解けた!
「なにっ! 」
「つばめがえしだ! 」
目を覚ましたゲコガシラに、ヒビキは素早く指示を出したが、ニョロボンの拳が速かった──
ゲコガシラは戦闘不能
勝者はシジマとなった。
「──よく頑張ったよ。ゲコガシラ 」
ヒビキはゲコガシラを慰めた。
「その通りだ。あのタイミングで混乱が解けたんだ。十分成長の余地はあるぞ! 」
あのニョロボンに勝てなかった。
その事実だけが、ゲコガシラの心に残った。
ヒビキ達の絆は、想像を絶するものだそうだ。だが、それでも勝てなかった。
シジマはヒビキに、礼だけして帰っていった。

「くっ────! 」
ヒビキは地面の砂を握りつぶした。
「力がいる──あのニョロボンに勝る力が! 」
「ゲコッ────! 」

「っ────!? ゲコガシラ!? 」


月光雅 ( 2015/07/20(月) 10:22 )