ポケットモンスターANOTHER








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STAGE1. GOLDEN MIND
記録17. モーモーミルタンク

ファントムバッチを手にしたヒビキ達は、ミルタンク牧場に来ていた。
「ああ、おいしい!ヒビキもそう思うでしょう?」
「うん 」
「ミルタンクを育てた方の愛情が伝わってきます 」
「そうですね。カトレア様 」
「これは是非ポケモンたちにも飲ませてやりたいな 」
ミルタンク牧場の草木の生い茂る中、みんなでモーモーミルクを飲む。久しぶりに平穏な光景だった。
「旅立った時からいろいろあったなぁ 」
とコトネは言う。
バッチ集めも半分まで来た。
【ウィングバッチ】
【インセクトバッチ】
【レギュラーバッチ】
【ファントムバッチ】
今まで、たくさんのトレーナーとヒビキは戦い、成長してきた。
「あ、そうだ! ノイズ 」
コトネがノイズにあれを渡す。
「……タマゴ? 」
「うん、怪盗Xがあなたにって 」
「怪盗X……って誰だ? 」
ノイズは怪盗Xの事を知らなかった。
「でも、彼はあなたの事を知ってるっぽかったけど? 」
ノイズは考え込んだ。
「(まさか、アポロか!? いや、それならなぜコトネ伝いに )」
「ん? 」
ヒビキが何かに気づく。
「何? ヒビキ 」
ミルタンク牧場の草が風に吹かれ揺れる。
ヒビキの目の先には、ヘリコプターがあった。
「あれは……」
ヒビキには見覚えがある人が乗っていた。水色っぽい灰色の髪出し確か、石好きで有名な……
「ねぇヒビキ、知ってる人?」
「多分 」
ヘリコプターは姿を消した。
「………── 」

「おい、ミルタンク!」
モーモーミルク売り場から、そのような声がした。
「向こうだよな? 」
「ああ、あってる! 」
ヒビキ達が慌てて駆けつけるかけつけると、一匹のミルタンクが倒れていた。
どうやら、ポケルスという病気に感染したらしい。
ポケルスは、ある程度耐久のあるポケモン…
つまり、日頃バトルしているようなポケモンなら
どうと言う事はない。それどころか、普段より強くなるらしい。
だが、そうでないポケモンは、どんどんと繁殖していき、痛みなどを引き起こす辛い病気なのだ。
「ミルタンクの大好物、オレンの実をたくさんあげれば…きっと元気が出るはずだよ!」
と、双子の女の子が言った。
木の実は、ぼんぐり同様、木にあるそうだ。
「ミルタンク 」
ヒビキには耐えられなかった。たとえ関係のないポケモンでも、苦しんでいるのだから…
「コトネ、ノイズ、ユメカ、カトレアさん 」
「分かってるわよ!」
「ああ 」
「まったく……お前のお人好、じゃなくて、おポケ好しには呆れる 」
「流石はヒビキさんですね 」



「ずつき! 」
コトネは忘れていた。
「だからなんで…」
コトネは呆れていた。
「なんであんたがずつきするのよ! 」
ヒビキは「これは俺がやると決めた事だ 」と、また彼らしい台詞を……対してこれを聞いてヒビキらしいと思うコトネがいた。

「どこだ木の実は 」
ノイズは木の実を探していた。
「このあた── 」
その時、アサギの方へと逃げていく黒い影を見た。
「っロケット団! 」
ノイズは後を追った。
アサギシティまで追いかけて、ノイズはやっとロケット団の団員を捕まえた。
「貴様、何者だ 」
「何者……か。俺もよく分からん。だから── 」
ノイズの言った事を、団員は理解できなかった。
ノイズは、自分の在り方を…今探している。
「だから消えろロケット団! お前らみたいな障害物があったら、俺は前に進めない! 」
「はぁ! 何言ってんだてめぇ! 全然話が読めねぇよ! まぁいい、ロケット団に逆らう者なら排除する! 」
辺りに人が集まってきた。
「なんだ?ヒーローショーでも始まるのか? 」
見つけてみせる。俺の…在り方を!帰る場所を!
「【トゲピー】、【じんつうりき】! 」
「【コイル】、【でんきショック】! 」
互いにポケモンを繰り出しながら指示を出す。



「あったよ! オレンの実! 」
「ありがとヒビキ 」
「じゃあ急いで戻りましょう! 」
ヒビキとコトネが木の実を見つけた所に、カトレア達も合流した。



ほぼ互角の戦い。
「……ふっ 」
そんな時、ノイズに一つの光が!
おや……?
「トゲピー!? 」
トゲピーの様子が!?
「この光は……! 進化の光! 」
「キィィイッスィ! 」
トゲピーはトゲチックに進化した!
「トゲチック…… 」
「キィィス! 」

────────
────
──

勝者ノイズ!
「くそっ! 嫌な感じぃ! 」
ロケット団員は去っていった。
「トゲチック……お前 」
トゲチックへの進化条件は、トゲピーがトレーナーになついている事だ。
「ふっ……絆の力か 」
ノイズの隣を悠々と通り過ぎる人があった。
「っ────なっ── 」
ノイズはそいつを睨んだ。
白い仮面、白いマント。
「(まさかあいつが怪盗X。それにしても、あいつから、サカキの匂いが感じ取れる。やはりあいつは── )」



「ほら、ミルタンク。オレンの実 」
「いっぱい食べて、元気出して! 」
ミルタンクはオレンの実を食べて元気になった。
「ただいま! 」
ちょうどその頃、ノイズが帰ってきた。
もうすでに夕暮れ時、ヒビキ達はミルタンク牧場に泊まることにした。
そして翌朝、
「ミルタンク!?」
声の聞こえた部屋へヒビキ達が行くと、ミルタンクが倒れていた。
コトネが頭に手をやると、とても熱かった。ポケルスが悪化したとみられる。
とにかく頭を冷やしてやろうと、コトネは【ラプラス】をくりだした。
【こおりのつぶて】をタオルで包む。これほど冷たければ、少しはましになるだろう。
「ヒビキ! 」
「オレンの実だね 」
「うん!」
ヒビキとノイズ、カトレアとユメカ、牧場を扱う夫婦はオレンの実を探しに行った。
部屋に残ったのは、コトネとミルタンクだけ。
苦しそうにしてるミルタンクに、コトネは声をかけた。
「苦しくないよ。大丈夫だよ。私がついてる…安心していいよ 」
「ミル…… 」



「良かったんですか? カトレア様 」走りながらユメカはカトレアに問いた。
「何がですか? 」
「あなたの力なら、ポケルスなど一発です。それをわざわざ── 」
「あれは少し眠たくなりますし、それに── 」
その時のカトレアは何か企んでいる顔だった。



コトネは、ヒビキ達が帰ってきて、オレンの実をやった後も、昼食、夕食の後もミルタンクのそばにいた。そして、夜もずっと一緒だった。
眠たくなったコトネは、つい寝てしまった。それでも、言い続けた…
「私が……一緒だからね……ずっと……一緒だよ 」
たまたま起きていたヒビキはそれをみた。ヒビキはその後、自分の部屋へと戻った。

翌日…
「ミルミル? 」
「ふぇ? あっ、おはようミルタンク」
「ミル! 」
ミルタンクはすっかり元気になった。
ヒビキ達もミルタンクの様子を見にくる。
そして双子が言う。
「よかったね! ミルタンク! 」
これは看病をしたコトネのおかげだろう。

そして、お別れの時がきた…
「じゃあね! ミルタンク! 」
「ミル…ミル!」
ミルタンクがコトネに何かを訴える。
「ずっと一緒。そう約束した。だって 」
ヒビキがコトネに教える。
「ミルタンク、一緒に行きたいの?」
「ミル!」
牧場の主人も
「連れていってやって下さい。」と言っている。
「じゃ! ミルタンク、行こ! 」
「ミル! 」
「それでは…… 」
「「「「「さようなら!」」」」」

「コトネさん、良かったですね 」
カトレアは上品に手を合わせて言った。
「(カトレア様、まさかここまで読んで……恐ろしい方だ )」

ミルタンクを捕まえたコトネ。
ヒビキ達は、再びアサギを目指した。


月光雅 ( 2015/07/20(月) 10:14 )