ポケットモンスターANOTHER








小説トップ
STAGE1. GOLDEN MIND
記録13. 消え去った眠り姫

「──っ! テールナー! 」
コトネの目の前で、テールナーは横たわる。込み上げてくる不安と恐怖。彼女の瞳は、その身体よりも震えていたのかもしれない。
「嬢ちゃんさっきの口はどこいった? 」
「くっ、卑怯よ! 大勢で 」追い打ちをかけるような言葉に、コトネは一歩退いてしまう。
「卑怯……ふっ、私たちの勝ちに揺るぎわない 」自信と確信に満ちた言葉──だが

「【ムシャーナ】【シャドーボール】!! 」

その言葉をも斬る邪悪な光線が入り口からロケット団員へ駆けた。
「うあああっ!!! 」
コトネは振り返り、その姿を確かめた。
「カトレアさん! 」
カトレア、隣にムシャーナとユメカが立っている。
「大丈夫? コトネさん 」ユメカはコトネに駆け寄り、声をかける。
「くっ、イッシュの四天王か 」
「だが、目的は達成した。撤退させてもらう 」
ロケット団はドガースに煙を吐かせて逃げた。カトレアはそれを追いかけようとする。
「ムシャーナ【サイコキネシス】 」
カトレアの身体は浮く。そしてロケット団の方へと飛んでいった。
「カトレアさん! っ」
追いかけようとするが、右脚が痛んで上手く歩けなかった。
「コトネさんは無理しないでください。カトレア様に任して 」ユメカは言った。
仕方が無いという気持ちと、悔しいという気持ちが、コトネの心を
痛ませた。



エンジュの街並みから少し離れたところに、飛行船のようなものがあった。
「──あれは! 」
飛行船の後部に取り付けられている倉庫。その中に大量のポケモンが閉じ込められていた。
「いけない! 」とカトレアは倉庫の中へ駆け込んだ。が、
その時、倉庫の扉が自動で閉まり、ロックが掛かってしまったのだ。

「カトレア様! 」ゆっくり駆けつけたユメカは叫んだ。もう遅い。飛行船は宙に浮き始めた。
「どうした!? 」
丁度そこへヒビキとノイズが駆けつけた。
「あの中にカトレア様が! 」ユメカが説明をすると、二人はモンスターボールを構えた。
「いくよノイズ 」
「ああ、ヒビキ 」
【ヘラクロス】と【カイロス】を繰り出し、二人は飛行船を追った。

「──っあれは! 」
二人は止まった。飛行船の裏についている大砲がこちらに標準を合わせたのだ。
「撃たれる覚悟を決めないとなぁ 」ノイズは言った。
しかし、ヒビキは気づいてしまう。
「っ! 違う! あれは僕たちなんか狙っちゃいない! 」

【パシュン 】

放たれた弾丸は、ユメカをかばったヒビキの胸元を捉えた。
「くっぁ── 」
ヒビキは目の前が真っ白になる。
白く……白く……真っ白に。



眼が覚めたら、湖の前にいた。
「……この湖って 」ヒビキには見覚えがある。
『誰か……いるの? 』
その声の方へ目を向ける。そこには幼い自分がいた。
『返事をしてよ 』
その子には、自分が見えていないと分かった。本来自分はいるはずないのだから。

──見ツケタ ──

今度は違う声がした。
聞き覚えがある……冷たい雪のような女の声だ。
『誰? 』

──私は魔女。貴方を迎えにキタ ──

『迎えに? 』

──そう。貴方は金色 響であって金色 響ではナイ。貴方は ──

「金色 一(カナイロ ハジメ) 」
光景をただ立ちすくんで見ていたヒビキの口から、その言葉は出た。なぜ思い出せなかったのだろうか。自分は、過去に魔女と会っていた。カロス地方にいて、まだ幼く、物事への好奇心の強かった自分。
その日、自分は親とはぐれてしまい、彷徨った挙句、この湖へと辿り着いたのだ。そして──

──貴方には、世界を救う使命がアル。それは貴方が金色 一から生まれ変わったための運命。変えることなどもう出来はシナイ ──

『使命 』
その時の自分は、その言葉に釣られて、彼女の差し出す金色のメガリングを手にした。

──逃げることもデキル。でも、さすれば後悔がついてくるダロウ。これは、貴方が選んだ力 ──

『力──』
幼い自分は倒れた。自分が無口になったのは、その頃からだったのだな。今ようやく気付く。

「さて── 」
俺は後ろを振り返った。
光が見える。あそこに行けば、現実に戻れるのだろう。
俺は一歩踏み出した。

──いいノカ? そっちは地獄ダゾ? ──

その一歩を阻む冷たい声があった。
「もとはといえば、あんたの与えた力だろ? それに、逃げたとしても、後悔がついてくるだけだしな 」俺は背中で答えた。振り返らずとも、彼女が納得しているのが分かる気がした。
前へ進むたび、光は強くなる。
胸元の痛みも戻ってくる。

──それでも前に進むノカ? ──

「ああ、守りたいものが山ほどあるからな 」


■筆者メッセージ
限界だ!
僕にこれ以上ややこしくならなくする技術がないので、頑張ってついてきてください!
月光雅 ( 2015/06/07(日) 16:01 )