ポケットモンスターANOTHER - STAGE1. GOLDEN MIND
記録12. 炎帝と雷皇

気がつくと、深い霧の中にいた。真っ白で、自分の姿すら見失ってしまいそうになるくらい深い霧。辺りを見渡しても何も見つからない。

──金色……響 ──

「誰? 」
どこからともなく、不思議な声が聞こえてくる。それは幽霊のような女の声だった。その声にヒビキは問う。
「誰? 」答えがないのでヒビキは繰り返した。今度は少し力強く。

── ふふっ、永遠を生きる魔女……とでも言ってオコウカ ──

「魔女 」その答えもとても意味深そうなもので、ヒビキを不安にさせる。
すると霧の向こうに女の影が現れた。それを見て感じた事は2つ……1つは、彼女は死んでいながら生きているという事。2つは、彼女はヒビキについて何かを知っているという事。

──貴方には力がアル。貴方は選ばれし戦士。闘え……これから起こる絶望ト ──

彼女はヒビキに手を差し伸べた。ヒビキにその手を握ることはできそうにない。その手は近く見えて、あまりに遠かった。

──これから貴方を試ス。雷の野獣と相乗りしてミセヨ ──



霧の中から現実へと戻る。ぼんやりと頭上の明かりが瞳に写る。窓の外に見える和風の街並み。
「そうか……エンジュに来てたんだ 」
昨日、車軸の雨の中をこのポケモンセンターへ急いで駆け込んだ。コトネは途中でウソッキーを捕獲。全く、急いでるという時にのんきな奴だな。向かいのベッドに情けなく寝転がっている。とても疲れたのだろう。

ヒビキは顔を洗い、窓側のカーテンを開けた。
「……まだ降っていたのか 」
昨日の雨はまだ残っていた。静けさを感じるくらい大量に降っている。その時、北の空が光った。とっさに右腕で遮ったが、その光の量は並大抵ではなく、音もとてつもなかった。
「雷…… 」

──雷の野獣と相乗りしてミセヨ ──

「ん……ん? 」
雷の音でコトネも目が覚めた。
「おはよう 」コトネは半分寝た状態でそう言った。
「おはようコトネ。ちょっと俺、行かなきゃいけないところがあるから出かけてくるね 」ヒビキがそう言って、部屋から出て行ってから数秒後にコトネは気がついた。
「! ヒビキ今、俺って……! 」
後から思い出すと、彼はその時、眼を開けていたような気もする。



「ノイズ…… 」
「ヒビキ…… 」
二人の瞳に互いの姿が写る。
焼けた塔の前で、ライバルは再会を果たした。
「その眼、急ぎ様。お前も 」ノイズがヒビキに問う。
「……選ばれし戦士だ 」
「やはり……俺が選ばれたんだからお前もだと思ったさ 」
「奇遇だな。生憎俺もそう思っていた 」
「ん? ヒビキ、お前は 」ヒビキの口調にノイズも感ずいた。
「少しずつ、こいつと俺との同化が始まっているみたいだ。伝説の勇者と俺との 」
「伝説の勇者とお前の? 伝説の勇者って 」
「ハジメ、始めてメガシンカという境地に達し、世界を救った男 」
「どこでそんな情報を? 」
「魔女が教えてくれたさ。永遠を生きる魔女が 」

ドゴゴゴゴーーーン!!!

再び雷がなり響く。
「行こうか、ノイズ 」
「ああ、試される時だ 」
二人は焼けた塔の中へと入っていった。木でできた床のギシギシという音は、二人に不吉な予感をさせる。
「お前……前よりかなり人間らしくなったな 」ノイズが言った。ヒビキは応えをすぐにした。
「そりゃ、今はハジメだから 」と。
「そういうことじゃない 」言ってノイズはヒビキの前で止まる。
「その顔、何か悩み事を抱えている顔だ。前までは、その眼開けなきゃ仏像みたいだったお前が 」
少し間をおいてノイズは続けて問うた。
「何があった 」ノイズはヒビキの眼をじっと見つめて言った。
「………… 」ヒビキは何も言えなかった。
「……わかった。今の無し。早く行こう 」
「……ああ 」
二人はまた歩き始めた。



「もう、どこ行ったのよ 」
一方のコトネはヒビキを探していた。雨の中傘をさして歩いていると、舞踊場があったので入ってみたが、

「お前ら大人しくしやがれ! 」
舞台の真ん中に、ロケット団員がいる。
「全員ポケモンをよこせ! さもないと俺の【ウツボット】が黙っちゃいねぇぜ! 」
「待ちなさい! 」コトネは腹の底から声を出した。
「? 誰だてめぇ 」
「関係ないでしょ。今から負ける人には 」
「あぁ? 調子のんじゃねえよ! 」
コトネはモンスターボールを構えた。この地方に来てからは初めてバトルさせるかもしれないポケモン。【テールナー】!
「テールナー【かえんほうしゃ】! 」



奥は火の海だった。赤く燃える炎が、ヒビキ達の周りを包み込み、そしてその先に、二つの影が見えた。
「あれが── 」
「──炎と雷の野獣か 」
その言葉に答えるように、二つの影は、【エンテイ】と【ライコウ】はこちらに近づいて来た。

──さあ、見せてミヨ。貴方たちの実力ヲ! ──

「っ── 」
ヒビキが瞬きをしたそのほんの一瞬に、
ライコウは【しんそく】をし、
高速でヒビキの懐に入り込み、後脚で彼を蹴り飛ばした──
「──くぁ! 」
木の柱と背骨のあたる鈍い音がその痛さを物語る。
「ヒビキ! 」
「馬鹿! 前を──! 」
──ヒビキの忠告は既に遅い。
エンテイの後脚はノイズを強く蹴り飛ばしていた。
「くっ、一筋縄じゃいかねえょな 」
「……っ当たり前、見たらわかる 」
二人は立ち上がり、モンスターボールを構えた。
「いけっ!【マグマラシ】 」
「【アリゲイツ】 」
二人は背中を合わせる。
作戦を練る余裕はない。
ただ行動するしか──
「マグマラシ【かえんぐるま】! 」
火炎の弾がライコウへ向かう。
ライコウの【ワイルドボルト】!
「マグマラシっ! 」
互角の「ご」の字も当てはまらない格差だ。
「アリゲイツ【みずてっぽう】! 」
エンテイの【フレアドライブ】!
水の弾を無視して向かい打つ!
「アリゲイツっ! 」

すると、二匹はどこかへと走り去った。
「なんで…… 」
「今の一撃ずつで計られんだ。僕たちの実力を 」マグマラシとアリゲイツをモンスターボールに戻し、塔を出ようとした。
その時──

【ギシギシギシ──ギシャッ! 】

「しまった! 」
床の木が割れ、ヒビキ達は塔の底へと落ちてゆく。
─────「【ヘラクロス】! 」ヒビキはヘラクロスのモンスターボールを取り出そうとした瞬間、余りの体勢の悪さに、別のモンスターボールを弾いてしまった。その中身は──
「っタマゴが! 」
タマゴはボールから解き放たれるとノイズの元で光を放った!

「こいつは──! 」
孵化して誕生したのは、【トゲピー】という珍種のポケモンだった。
「っトゲピー【ねんりき】だ! 」ノイズは咄嗟に指示を出した。トゲピーはエスパーでヒビキ達を宙に浮かせた。その時の地面と足との間は1ミリもなかったかもしれない。



塔の外はもう晴れていた。
「ごめんヒビキ。トゲピーは返す……ってあれ? 」
トゲピーはノイズの服をしっかり掴み、断じて離そうとしなかった。まるで赤ん坊のように。
「はは、ノイズの事を親だと思ってるんだ 」
「……親──

『俺の背中に、決して着いてはくるな。それは悪に満ちた背中だ 』

── 」ノイズは頭の中に浮かんだ記憶を振り切った。
「ノイズにあげるよ。可愛がってあげてね 」ヒビキはにっこり笑ってそう言った。もう眼は閉じている。
「可愛がる、か 」ノイズは笑う。「またお前から一つ学んだよ 」ノイズは続ける。「貰うばかりではフェアではない。俺からはこいつを 」と言い、ノイズはモンスターボールをヒビキに差し出した。
「これは? 」
「そいつは【ゴースト】。だが── 」

モンスターボールから、強制的にゴーストが飛び出た。するとゴーストは光を放った。
「進化だ 」
ゴーストは【ゲンガー】へと進化を遂げた。
「可愛がってくれよ。ヒビキ 」ノイズはヒビキの様ににっこり笑ってそう言った。


──まだまだ実力不足ではアッタカ。だが、得たものはアッタハズ。もっと、力を求めるノダ。金色 響。そして ──


月光雅 ( 2015/05/09(土) 08:09 )