記録10. 月の光と雷の輝
「そろそろ……いくよ。」
ヒビキが言う。
「どうぞ 」
ヒビキ達は今、コガネジムの前に立っている。覚悟を決め、扉を開けようとしたその時!
「ヒビキー! 」
ユメカの声がした。振り返ると、何かを抱えている。
「ユメカさん。それは? 」
「この子は、ノコッチよ。カトレア様が暗闇の洞穴で捕まえたのだけど、ヒビキに似てるから渡してきなさいと頼まれて 」
ユメカはヒビキへノコッチを差し出した。
「ノコッチ…… 」
ヒビキはノコッチと見つめ合う。
「いくよ! 」
ノコッチは大きく頷き、ヒビキの頭へと飛び移った。
「ごめんねユメカさん 」
「コトネさんは気にしないでいいよ。それじゃ! ジム頑張ってねヒビキ 」
ユメカの背中はやがて人混みの中へと消えた。
「よし 」
ジムの扉が開く。そして、彼らを待ち構えていたのは……
「ようこそ、コガネジムへ! 」
このジム、ジムリーダーのアカネはノーマル使いだと聞いている……が、
「私が得意とするのはフェアリータイプよ! 」
「フェアリー……タイプ? 」
「ノーマルじゃなかったの!? 」
ヒビキ達はとても驚いた。
「前まではノーマルやったんやけど、必死に修行した成果…フェアリータイプを極める事ができたの! 」とアカネは説明する。
しかし、コトネが言った。
「あの、関西弁と丁寧語がごっちゃになってるんてすけど…… 」
対してアカネは説明する。
「関西弁はフェアリーに似合わないと思ったから直してるんだけど……まあ、なかなか直らなくてね 」
「妖精ですからね 」
関西弁の妖精……確かに何か違和感を覚える。
「アカネさん、僕と勝負を 」
「焦らずとも、今からやりましょ! 」
バトルが始まった。観客席ではコトネとマグマラシが見守る。
「舞いなさい! 【ピッピ】! 」
ジムリーダーアカネの一匹目はピッピ。
「……いくよ【ノコッチ】 」
なんとヒビキは、早速ノコッチを繰り出した。
「【とっしん】 」
ノコッチはピッピに突っ込む!
「【チャームボイス】! 」
音攻撃のチャームボイスは避けることが出来ない。ノコッチは大ダメージをくらう。
「続けて【はたく】! 」
「【へびにらみ】」
続いて攻撃を仕掛けてきたピッピをノコッチは睨む。ピッピは麻痺状態になった。
「【ドリルライナー】 」
ノコッチの突進で、ピッピはアカネ側の壁までふっ飛ばされた。どうやら急所に当たったようだ。
「反撃よ【ゆびをふる】 」
【ゆびをふる】は何かの技をランダムで出すという恐ろしい技だ。
ピッピの【インファイト】!
「まずい!ノコッチ【まるくなる】 」
ノコッチは防御力を上げ、何とか【インファイト】をしのいだ。だが──
「【めざましビンタ】よ! 」
「【ドリルライナー】」
ふたつは激しくぶつかり、爆発を起こす!
【ズドーーーーーーンッ】
煙が晴れる……結果は──
「両者戦闘不能!よって、引き分け! 」
「ノコッチ、ありがとう 」
「ピッピ、おつかれさま。ゆけっ【ミルタンク】! 」
「お願い【ゲコガシラ】」
それぞれの二体目はミルタンクとゲコガシラだ。
「ミルタンク! 先手必勝【ころがる】! 」
「【みずのちかい】で打ち上げて 」
無防備に突っ込んできたミルタンクを、水の柱が打ち上げる。
ミルタンクは宙に舞う。
「今、【いあいぎり】」
「ミルタンク!! 」
ミルタンクは地面へと強く叩きつけられた。
この状況、素早いゲコガシラにミルタンクが押されているように思えるが、
「ミルタンク【ミルクのみ】 」
なんと、ミルタンクは体力を回復したのだ。これは長期戦になりそうだ。
「ミルタンク【のしかかり】! 」
ゲコガシラがミルタンクの下敷きに!
「続けて【しねんのずつき】! 」
「ゲッコウガ!! 」
「【ころがる】よ! 」
「よけて! 」
何とか“ころがる”はかわしたものの、先程のコンボで大ダメージを受けてしまった。
「頑張って、ヒビキ! 」
観客席で、コトネたちがヒビキを応援する。
「……ゲコガシラっ! 」
ヒビキは指示に迷う。攻撃しても体力を回復される上、接近すれば、あのコンボで大ダメージを受けることになる……どうする。
「【ころがる】! 」
「いや、僕たちは僕たちのリズムで……勝つ」
ミルタンクがゲコガシラに急接近する。
「ゲコガシラ【かげぶんしん】 」
【ころがる】はゲコガシラに当たらなかった。
「【みずのちかい】 」
「ミルタンク!! 」
再びミルタンクは打ち上げられる。
「今だ【いあいぎり】」
ゲコガシラの【いあいぎり】がミルタンクをとらえた!
ミルタンクは戦闘不能。ゲコガシラの勝ちだ。
ジムリーダーアカネは次のモンスターボールを構える。
「舞いなさい【ニンフィア】! 」
華麗に投げ出されたそのボールからは、妖精が舞い降りた。
ニンフィアはフェアリータイプ…特に有効な策はない。
逆に、マグマラシ以外は不利なタイプではない。こちらの残りは二匹、確実に勝てるはず。
「ニンフィア【でんこうせっか】! 」
予想以上に速い!
「こっちも【でんこうせっか】」
なかなか当たらない。そう思った時、ニンフィアがゲコガシラに微かに当たった。まるで、わざとそうしたかのように。
「ゲコガシラ!? 」
ゲコガシラをよく目を見ると、メロメロ状態になっている。
「ヒビキ気をつけて! ニンフィアの特性【メロメロボディ】よ! 」
コトネが観客席で叫ぶ。
「これがフェアリータイプの本質。これからここは、うちらの舞台よ! 」
「っ! 距離をとって……! 」
ゲコガシラはメロメロ状態でヒビキの声が聞こえていたない。
「【ムーンフォース】! 」
「ゲコガシラぁ! 」
最後まで、ヒビキの声は届かなかった。
【ズドーーーーーン! 】
ゲコガシラ戦闘不能。
「さあ、これで1対1やで! 」
「よくやったゲコガシラ 」
ヒビキは一度深呼吸をし、そして眼を開けた。
「光り輝け、轟けイナズマ! ゆけっ迅雷! 【エリキテル】! 」
「来たぁあ! ヒビキの金ピカモード! 」
観客席でコトネは大はしゃぎする。
「エリキテル【でんきショック】! 」
「ニンフィア! 」
激しい電撃がニンフィアを襲う。
「続けて【あなをほる】! 」
「ニンフィア、気をつけて!」
ニンフィアの背後からエリキテルが飛び出す!
「後ろに【メロメロ】やで! 」
「【パラボラチャージ】で跳ね返せ!」
【メロメロ】は電撃に弾かれた!
「【でんきショック】! 」
再びニンフィアは電撃をくらう。
「ニンフィア!! そんな、【メロメロボディ】も【メロメロ】も封じてくるなんて! 」
「【パラボラチャージ】だ! 」
「【ようせいのかぜ】! 」
その向かい風でエリキテルは大勢を崩す!
「これで決めるで! 【ムーンフォース】! 」
「【でんきショック】! 」
月の光と雷の輝がぶつかる!
「いっけええええええ!!!!!」
【でんきショック】は【10万ボルト】へ進化を遂げた!
【ズドーーーーーン!】
ニンフィア戦闘不能!エリキテルの勝ち!よって勝者チャレンジャーヒビキ!
「うちの、うちのフェアリー軍団が……ぐすん」
「えっ……」
ヒビキは目が棒になるが、安心はできない。ジムリーダーを泣かしてしまったかもしれない!
「ヒビキ……くん。おめでとう 」うるうる
「いや、そんな涙目で言われても 」
いや、そんな棒目で言われても。
「これを受け取って 」うるうる
ヒビキは【レギュラーバッチ】を受け取った!
「……いいバトルやったわ! また、お相手をお願いできる? 」
「えぇ、いつでも。それより、ザ・関西弁になってますよ 」
「あっ……まあ、いいわ! うちはこれが自然体や! 」
「あはは 」
コトネとアカネが笑う中、ヒビキだけが真顔である。
「それじゃ、気をつけてね! 」
「はい!」
「うん 」
3つ目のバッチを手に入れたヒビキ、これから彼を待ち受ける悲劇とは!?