ポケットモンスターANOTHER








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STAGE1. GOLDEN MIND
記録09. 月下に舞う

ヒビキ達は日が暮れる前にコガネシティに着いた。が、カトレア達は何やら重要な用事があるらしいのでとりあえず別れることになった。

「わあ、凄い建物 」
ザ・都会の景色にコトネは大興奮だった。
「ワカバとは大違い 」
「そうね。そうだ! ポケモンセンターに止まる前にコガネ百貨店で買い物でもして行きましょ」
「……うん 」

──同時刻、コガネ百貨店

「待ちなさぁい! 」
コガネ百貨店の宝石を盗んだ犯人をジュンサーは追っていた。
犯人は三階から二階へと逃げていく。
【ガシッ】
「捕まえたわ!」
「ふぇ!?」
ジュンサーはしっかりと男の手首を掴み、手錠を掛けた。
「あなたを窃盗の容疑で現行犯逮捕します! 」
「え、何のことですか! 僕はやっません! 」
男は必死に抵抗する。
「言い訳しても無駄よ! 」

これにて一件落着。そう思うのが普通だが、実はこの捕まえられた男は犯人ではないのだ。
「……サンキュー、ゾロア 」

ジュンサーの追いかけられていた犯人は、捕まえられた男性に化けたゾロアだったのだ。ゾロアは口にくわえた宝石を、奴に渡した。

「へへ、こいつはいただくぜ!」


怪盗Xに──
怪盗は急いで正面玄関を飛び出す。
【ドスッ】
「いってっ!」
「……痛い。ってX!? 」
「ヒビキ!? 」
怪盗とぶつかった相手はヒビキだった。
「あっ! 仮面の男!」
あとから駆けつけたコトネは叫んだ。
「また、悪いこと? 」
ヒビキは少し冗談っぽく問いただした。
「怪盗ですから 」
怪盗は丁寧に一礼しながら言う。
それを見て、ヒビキはモンスターボールを構える。
「ほう 」
「悪いことなら許さないよ? 」
「勝てるかな? このX様に! 」
怪盗もモンスターボールを構えた。

「ゆけっ【グライオン】! 」
怪盗はグライオンを繰り出した。
「またグライオン、となるとヒビキは──! 」
「【ケロマツ】 」
予想通り、ヒビキはグライオンとの因縁のあるケロマツを繰り出す。

満開の月の下で、バトルは始まった。


「先手必勝【つばめがえし】! 」
グライオンは一度大空へ飛び上がり、そして急降下する。

「威力が最大になる前に【いあいぎり】」
ケロマツは攻撃を受け止めた。
「ちっ(前より遥かに強くなっている) 」

「【みずのはどう】 」
「避けて【どくづき】だ!」
グライオンは水の弾丸を華麗にかわして、こちらへ突っ込む!

「飛んで避けて 」
ケロマツはジャンプして攻撃をよけた。が、

「回り込んで【はたきおとす】! 」
「しまった! 」
ケロマツの下を潜ったグライオンは一気に上昇し、背後からケロマツを地面にたたきつける。

「【どくづき】 」
真上から毒の拳は落ちてくる。

「【かげぶんしん】!」
グライオンの攻撃は当たらなかった。
「囲まれた!? 」

「ケロマツっ【みずのはどう】 」
グライオンは水の弾丸に貫かれた。効果抜群だ!

「く、グライオン。本体は十一時の方向にいる。【いわなだれ】!」
「えっ、あの指示の出し方 」
「ケロマツっ!!!! 」
ケロマツは岩の中へと埋れた。

「──何つってなぁ! 」
ヒビキは眼を開いた。
「なにっ!? 」

【キュイーーーーーン!】
岩と岩の間から神々しい光が溢れ出る!

「例えその身が汚れても、清き心で周りを包み込め! 」
ヒビキは手を月にかざす。
岩から一筋の蒼い光が飛び出した。
「ゲコガシラ……ここに水参! 」
「進化した? 」
「くっ、進化したところで、俺のグライオンに勝てるものか! 【どくづき】だ! 」
「ゲコガシラ【みずのちかい】!」
大地から出る水の柱がグライオンを貫いた。

「体勢を立て直せ! 【つばめがえし】だ! 」

「ケロムースで抑えるんだ! 」
「しまった! 」
グライオンはケロムースにより身動きが取れない!

「決めろ【いあいぎり】! 」

ゲコガシラの一刀がグライオンを斬った。
グライオンは倒れた。

「……負けた。か 」

「よくやったゲコガシラ 」
ヒビキはゲコガシラと抱き合う。万円の笑みで。例え瞳が閉じていようとも、彼らはそれで繋がっている。

「……X 」
ヒビキが怪盗に近寄ろうとしたその時!
【ズドーーーーーン】
ヒビキと怪盗の間で爆発が起こった。
「くっ……何!? 」
気がつくと、怪盗の横にもう一人、立っていた。
「困るんだよねぇ! 我々ロケット団の邪魔をされちゃぁ! 」

「ロケット団!? ……ってことは、Xもロケット団員ってこと? 」
怪盗はヒビキに背を向けて言う。
「……すまないヒビキ。俺にも…事情っつーものがあるんだ 」
ロケット団員は言う。
「どうにしろ、小僧! ロケット団に刃向かうば、もうただでは済まないと知れ! 」
【ズドーーーーーン】
怪盗と団員は、団員の投げたボールから出た煙の中へと消え去った……。

「事情…… 」
「ヒビキ……」
その事実はヒビキをとても悲しませた。だが──
「行こう! 立ち止まっていても……答えは出ない 」

ヒビキはまた一歩、歩き始めた。


月光雅 ( 2015/05/06(水) 19:10 )