ポケットモンスターANOTHER








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STAGE1. GOLDEN MIND
記録08. 黒羽 夕焼けに散る

ヒビキとコトネは、カトレア達と共にウバメの森を進んでいた。カトレアは普段四六時中ベッドで寝ているらしく、「歩くのって疲れますね 」と何度も口にしている。
「ん? 」
ヒビキの視界にその姿が入った時、うるさい虫ポケモン達は急に鳴き止み、森の中は静まり返った。
「ノイズ…… 」
ヒビキはその名を口にする。ノイズは無言でモンスターボールをヒビキに向けた。そして──
「勝負だ。ヒビキ 」
と小さく言った。
その意見に反対する気は全くない。だから──
「うん 」
ヒビキは答えた。もう、その場が森であるということなど、二人とも忘れている。
「【アリゲイツ】 」
ノイズは指先からモンスターボールを滑らせ地面に落とした。その中からは、あのワニノコの進化系であるアリゲイツが飛び出した。
「今度こそは勝たせてもらう 」
「【ケロマツ】 」
ヒビキはケロマツを繰り出す。
「ほう、カロスのポケモンとは、まさかそっち出身だったのか? 」
「父さんも母さんもカントー出身だけど、僕はカロスだよ 」
なぜだろうか。この少年ノイズとは、何か宿命のようなモノを感じる。

「アリゲイツ【やつあたり】! 」
アリゲイツは自分の全てを使いこちらへ突っ込んでくる。

「【かげぶんしん】 」
ヒビキは技を巧みに使って交わす。

「惑わされるな……何か本物を見つける手がかりが 」
「【みずのはどう】 」
水の弾丸がアリゲイツを的に何発も撃たれる。

「──はっ! アリゲイツ、しゃがんで十一時の方向にいるケロマツに【かみつく】だ! 」
アリゲイツは指示の通りに動き、本物のケロマツに噛み付いた!
「ケロマツっ! 」
「お前のケロマツの【かげぶんしん】、影がねえんだな? 」
「……うん 」
もう少し時間を稼げるかと思ったが、仕方が無い!

ケロマツはアリゲイツに思いっきり放り投げられた。

「ケロマツ! 【でんこうせっか】 」
「【みずてっぽう】! 」
ケロマツは【みずてっぽう】をくらってなかなかアリゲイツに近づけない!

「今だ! 【やつあたり】! 」
ケロマツはみずてっぽうに向かい討つ力の影響でバランスを崩した。そこにアリゲイツは思いっきり突進した。

「続けて【こおりのキバ】! 」
ぶっ飛ばされたケロマツに追い討ちをかけるように攻撃する!
「ケロマツっ! 」
ケロマツの身体が見る見る内に凍りついてゆく。

「決めるぞ! 【やつあたり】! 」
アリゲイツが全力で突っ込んでくる!

「ケロマツっ!!! 」
その時微かに氷にヒビが入る音がヒビキに聞こえた。

「──っ【いあいぎり】だ! 」
アリゲイツが寸前まで近づいた瞬間氷は割れて、ケロマツの一刀がアリゲイツを斬った。しかも急所に当たったらしい。
アリゲイツは飛ばされ木にぶつかり戦闘不能になった。

「また……負けた 」
ノイズは自分で、負けた自分を鼻で笑った。
「なんでだよ! 」

「欠けています 」
「え? 」
そう言ったのはカトレアだった。
「貴方からはポケモンへの愛情が感じられません 」
「ポケモンへの……愛情 」
「それが、貴方とヒビキの差です 」
その言葉を聞いて、ノイズは立ち上がる。そしてヤミカラスを繰り出した。何処かへ行くつもりのようだ。
「どこへ行くの? 」
ヒビキが問いた。
「もう少し、こいつらと向き合ってみる。……俺なりに 」
ヤミカラスは大量の黒羽を散らしながらノイズを連れて飛んでいった。
「止めなくていいの? 」
コトネはヒビキに聞く。
「ワニノコを盗んだ犯人ってことはわかってるんでしょ? 」
「いいんだ。あいつは、あのヤミカラスの黒羽の様に、自分の悪いところを散らしながら、成長していくから 」
ヒビキは赤くなる空を見た。気づけば森から出ていた。
カトレアは言う。
「あの方ならできます。彼からは
ヒビキと同じモノを感じたのですもの 」
続いてユメカが言う。
「確かに、ヒビキとは正反対だったけど。何か似てましたものね。彼…… 」

「行こう皆。コガネシティはすぐそこだよ 」
ヒビキ達は沈む太陽に見守られながら、コガネを目指した。


■筆者メッセージ
今回結構短めでしたね。
それにしても、今考えたらヒビキ君達は男1人に対して女3人というなんとまあバランスの悪い旅メンバーですね。
月光雅 ( 2015/05/06(水) 18:17 )