ポケットモンスターANOTHER








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STAGE1. GOLDEN MIND
記録07. 哀シイ夢ヲ見ル者ヘ

2つ目のバッチを手に入れたヒビキとコトネは、次の街、コガネシティに行くため、ウバメの森を歩いていた。
すると──
「そこのあなた…… 」
突如声をかけてきた少女。ヒビキは振り返った。
少女はこちらに向かって歩きながら言う。「あなたは他の人と──きゃっ! 」
少女は木の根に足を引っ掛けて転けた。
「だ、大丈夫!? 」
ヒビキとコトネは慌てて彼女に駆け寄り、手を差し伸べようとした。しかし──
【ベシンッ】
ヒビキの手ははたかれた。そのはたいた主は言う。
「カトレア様に汚い手で触るな! 無礼者! 」
その口調は男と間違えるくらいキツかったものの、声の質はとても柔らかく。そいつはヒビキ達と同年齢くらいの女の子であった。
「あの……助けようと思ったんだけど 」
「この方に助けなどいらぬ! 」
いや、顔は地面についちゃってるし、どう考えても助けのいる状態である。
カトレアは地面から顔を引き剥がすと言った。
「ユメカ、だから私を特別扱いしないでと言ってるでしょう 」
女の子の名はユメカと言うらしい。
「しかし、カトレア様は── 」
「「あの…… 」」
ヒビキとコトネが口を挟む。
「なんだ!? 」
ユメカは少し怒りながら聞いた。
「さっきから、カトレア様カトレア様って何なの? 」
「貴様、この方を知らないのか? この方はイッシュ地方エスパータイプ四天王にして、当地方に新しくできるバトルフロンティアのフロンティアブレーンとなられるカトレア様だぞ 」
「バトルフロンティア? 」
「ふ、フレンチ…ぶ、プレーン? 」
コトネもヒビキも頭に?しか浮かばない。
「フロンティアブレーン。ジムリーダーの様なものです。それよりユメカ、まず私の前に自分の自己紹介をしなさいと、いつも言っているでしょう 」
カトレアはまるで母のようにユメカを叱った。
「すみません……改めまして、ユメカと言います。先程はすみませんでした 」
叱られた彼女は素直に謝り、丁寧にそう言った。
「コトネです。よろしく 」
「ヒビキ…… 」
ユメカの強い視線を気にせず、その方へと手を差し伸べた。
「えっ……? 」
「ため口でいいよ。よろしく 」
ユメカは少し戸惑い、カトレアを見た。カトレアはにっこり笑いながら頷いた。
「……よろしく(なぜ親しくなろうとできる!? 私のお前に対しての態度は許せぬものばかりただったのに ) 」
差し伸べられた手を、ユメカは自分の手で受け取った。
少し喉の調子を整えると、カトレアはヒビキに向かってこう言う。
「貴方からは何か、他の人とは違うモノを感じます 」
「他の人と……違う? 」
コトネとユメカはヒビキの方を見た。ヒビキの様子に特に変化はない。
「貴方の夢について、教えてもらえますか? 」
「僕の夢はポケモンマスターになること 」
「その理由は? 」
「っ…………── 」
言葉は詰まった。が、すぐに続けた。「──この地方に来て一日目の夜。不思議な夢を見たんだ 」
ヒビキは斜め上の空を見上げる。
「何もない空間に、雪がたくさん降っていて、真っ白で……。その中に、一人立っていた。あの英雄が 」
「レッド……ですね? 」
その英雄の名をカトレアは当てる。
「うん 」
「私も同じ夢を見ました 」
そのカトレアの台詞にヒビキは少し驚いた。カトレアは続ける。「私達、イッシュの四天王とチャンピオンは皆、同じ夢を見ました。おそらく、どの地方でも同じ事が起きていると思います。この意味が分かりますか? 」
ヒビキは答えをすぐ返した。
「その夢、レッドさんが、強者を求めている 」
「それに気づいたのはいつですか? 」
カトレアは立て続けに質問をする。
「その夢を見た時から使命のようなモノを感じていた。確信したのは今 」
「でも、そう思ったのにはもう一つ理由があったのではなくて? 」
ヒビキは更に驚いた。見抜かれていた、という心の声が顔に出ている。
「……気づいてたの? 」
「先程のジムでも魅せてくれた貴方の力も、貴方の中に潜む他の人格の影響でしょう? 」
「……うん 」
ヒビキはそれを言われて、カバンの中からあるモノを取り出した。
「この……金色のメガリングの影響だと思う 」
カトレアは、冷静に言った。
「私と同じ四天王に、ツキミという方がいます。その方から聞いた話ですが、3000年ほど昔、ハジメという英雄が現れ、世界の危機を救った。その英雄は、金色のメガリングを使っていたのだとう。私の推測ですが、貴方の心に憑依している人格は…… 」

ヒビキはゆっくり頷いた。


選ばれしモノ達は、いずれ気ヅクダロウ。
自分の存在が、この世の存在を抱えている事二。
人の争いとは哀しいモノダ。
しかし、私は見てキタ。
人の争い以上に、哀しい世界ヲ──


月光雅 ( 2015/05/05(火) 17:02 )