ポケットモンスターANOTHER








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― 金色の悪魔
記録35. ソウルシルバー〈後〉

「ドンカラス《ブレイブバード》!! 」

黒鳥は天に(はばた)く。
蒼穹の閃光を纏って華麗に舞う。
まるで銃のリア・サイトを通すように、鋭く、鋭く睨みつける。
そしてルギアに狙いを定めた。

「────っ!! 」

心の中でトリガーを引く。
蒼穹の黒鳥は撃ち出された弾丸のように、“刹那と呼ばれる時”を駆ける。
宙に刻まれ、いまだ残って見える(そら)の閃光。
しかしそこに黒鳥はいない。

“……────っ!? ”

神を貫く諸刃の弾丸。その身を裂いて、敵を裂いた。

『カァァ 』

“君のポケモン。個々が尋常でない精神力だ ”

「ああ。特にこのドンカラスは、一番長く俺と地獄を歩んできた仲間だからな 」

“仲間────それが君の力の正体か ”

「? 」

“次代の操り人よ。君にはソウルシルバーの悟りを開く権利がある ”

記録35. ソウルシルバー〈後〉

「カイロスッ!! 」

ドンカラス、トゲキッス、メガカイロスと立て続けにルギアに倒されていく。
残りの手持ちはおおあごポケモン・オーダイルのみとなった。

“君ならソウルシルバーにたどり着くことができる。その権利がある ”

「ソウル……シルバー 」

モンスターボールを見つめる。
俺はこいつと共に進化してきた。
こいつと共にヒビキに出会い、自分の弱さも知った。
そして俺は、やっと人間になれた。
足りないことはたくさんある。だが────
こいつとなら、俺はどんな極限も超えられる!

「辿り着いてやる────その極地へ。オーダイル 」

放たれた球から弾きでる青の獣。
その名はオーダイル。

“《ハイドロポンプ》 ”

「《ハイドロポンプ》だ! 」

2つの弾丸が、神と獣の間でぶつかり合う。
広がる衝撃波。やがて弾丸は散る。
互角。正確にはルギアが勝るが、勝敗を分けるほどではない。

“なかなかやってくれる ”

「オーダイル《おんがえし》!! 」

綺麗な光を放つ白いオーラを纏い、オーダイルは突進する。
その威力は絶大だった。
かわし損ねたルギアの懐を白槍が穿つ。

“────ッ!!! ”

「続けて“れいとうビーム” 」

刹那も開けず、攻撃は放たれる。
ルギアに放つ氷の刃。

“ハアッ────!!! ”

ルギアの《エアロブラスト》はことごとくその刃を砕く。

“強くなりたければ覚悟を決めよ!! その先に、君の未来がある!! ”

「俺の……未来 」

***

三年前────
その日、二人で、暗夜に浮かぶ歪な月を見上げていた。

「轟、僕はね、“優しい世界”を創りたかったんだ 」

「優しい……世界? 」

ふと、サカキがそう言った。
背中に孤独を負いながら、小さな声で。

「誰も悲しまずに済む、平穏な世界さ 」

「……創りたかった、って事は、創れなかったんだよな? 」

「ああ。いや、正確に言えば、やり方を誤っていたんだ 」

あの頃のノイズには、その“誤ったやり方”の正体はわからなかった。

「轟、人っていうのはね、幸せを求めるものなんだよ。でも、その幸せは、他者の不幸を見下すことでしか謳歌する事は出来ないんだ。人が幸せを求め続ける限り、不平等はなくならない。だから僕は世界をリセットさせたかったんだ 」

父サカキはロケット団を率いるリーダー。彼は罪を犯した。
後悔している。
どんな奴でも、その背中を見れば分かってしまうほどに。

「皆を恐怖に陥れれば、人は皆その原郷を憎むだろう。それはある意味、平等になったと言えると思ったんだ。皆が同じように怯え、皆が同じように憎む。その状況で憎しみの原郷が消えれば、世界は幸せで、今よりも平等になると。でも、ある小僧に気付かされたんだ。その愚かさを 」

「父さん…… 」

小僧────おそらくレッドとの闘いの果てに、父は答えを得たのだろう。

「僕の命も、もう長くはないだろう。犯した罪の精算も出来ぬまま、僕は…… 」

「……なあ、父さん。俺じゃ駄目かな? 」

「────ん? 」

「俺じゃ、父さんの願いを継げないかな? 父さんの望んだ優しい世界を、正しい方法で創り出すことは出来ないかな? 」

「轟…………。ああ、出来る。お前ならきっと……正しいやり方でやってくれる 」

***

“くっ、私の体力も限界か ”

「オーダイルのHPも残り僅か 」

向かい合う神と獣。

“「それでも──── 」”

オーダイルがルギアに向かって素早く駆ける。
ルギアは大きな翼でオーダイルを叩きつける。

“ッ終わりにしよう、白銀 轟!!! ”

オーダイルを目掛けてルギアは《ハイドロポンプ》を放つ。
地に叩きつけられたオーダイルは、後転しながら攻撃をかわす。

「俺は────サカキが望んだ明るい世界を────その明日をつかんでみせる!! 」

オーダイルとノイズが並んだ。
その時────

2人から、銀色のオーラが滲み出始めたのだ。

“っ!? ふっ、達したか ”

「《げきりん》だッ!!! 」

オーダイルは龍となる。

“《ゴッドバード》!!! ”

ルギアは神となる。

龍と神がぶつかり合い、衝撃波が起こる。
視界は白く、真っ白な光に包まれる。
その時、ルギアに怯みが見えた。

「俺の……俺たちの勝ちだ!! ルギア 」

龍の突進は更に威力を増す。
神は押される一方だった。

“ああ。そして……私の敗北だ ”


────────────ッッッッッ!!!!!!!!


***

“なれたのだな。銀色の心を……持つものに ”

「──── 」

心の底で感じる熱。それがソウルシルバー。

“ソウルシルバーを悟った今、君は知るだろう。新たな力の源を ”


「────行こう、ルギア 」

“覚悟はいいな? 白銀 轟。これから歩むのだぞ? 地獄の道を──── ”



────それが、俺の運命ならば!!


■筆者メッセージ
くそっ!! 限界ダァ!! バトルシーンが書けない!!
ただでさえ更新ペースが遅いのに、すみません。
頑張れるだけ頑張りたいです。
月光雅 ( 2015/09/23(水) 08:49 )