第二話 砂丘にて
暑い…………砂丘とはこんなにも暑いものだったのか。まだ不思議のダンジョンには入っていないから天候は穏やかだが。
フリズ「とにかく暑い!!!」
俺達がいるのは「プテの砂丘」。年中昼間は暑く雨がこれっぽっちも降らない地帯だ。そしてこの地帯………水タイプの技の威力が半減になるのだ。そんな場所をなぜ選んだかって?
そりゃ威力が半減だから技をうつ回数が増える。これのどこがいいのかというと、技にもレベルがあり沢山遣えば遣うほど威力が上がる。だからわざとここを選んだのだ。
いやぁ、考え事するのも暑い。
リズ「さすがに暑すぎるよぉ。」
ランザ「こんなのでバテてたら火山とかで干からびるよ?」
いやいや、ランザさん強すぎっす。
ランザ「まぁ僕は訓練しているからね。」
そう。何でこんなにランザが暑さに強いかというと、ランザのご先祖様は一時期氷付けにされていたらしい。勿論俺とランザが氷付けになった時とは比べ物にならない時間。それがきっかけでランザ一家の男は厳しい暑さにも、凍り付くような寒さにも耐えられる体をつくっているらしい………
ランザ「水タイプだから喉がかわいても自分の水でうるおせるでしょ?」
リズ「そういうわけでもないんだよねー。」
暑さのせいか、リズは弱々しい声で言った。
フリズ「まぁ確かに自分の出した水で喉は潤せる。しかしこの暑さだ。それに水を出して飲んでも自分の体から水を出すエネルギーを消費するからマイナスだ。だからそんなに多用してたら体の水分がなくなる。」
ランザ「へぇ〜。まっ、僕はこんくらいの暑さじゃまだ水もそんなに飲まないけどね。」
フリズ「そうこう話しているうちに着いたっす。」
リズ「なにその喋り方?」
リズの問いかけにフリズは無視して
フリズ「じゃ、乗り込むぞ。」
ランザ「おぉー。」
三匹はプテの砂丘の「不思議のダンジョン化している所」に足を踏み入れた。
暑い…………ダンジョン内はさっきまでよりも暑い。やっぱり選ぶんじゃなかったよこんな所。
ランザ「廃墟の跡らしき所があるね。」
廃墟。そう、プテの砂丘は昔は大きな文明が栄えていたのだ。この文明は主に化石が発見されているような古いポケモン達の文明だ。これを一般に「古代風文明」という。そしてこの文明の頂点にたっていたのが「プテラ」だ。プテラは頂点にたち、様々な敵から国を守ったらしい。そのおかげで人々は楽しく豊かに暮らしていたらしい。
が、この生活を狂わせたのが歴史的大事件である神の激突。ディアルガとパルキアの戦いにここは被害にあったのだ。二匹の激しい戦いにより文明は壊滅。生き残ったポケモンも多くはない………
ちなみにここに生息しているポケモンは主に岩タイプや地面タイプといった俺にとっては有利なタイプだが、水タイプの技の威力半減によってダメージは通常と変わらない。雨が滅多に降らないため水タイプや草タイプなどは殆ど生息していない。例外としてサボテンのようなポケモン「サボネア」「ノクタス」「マラカッチ」やさそりのようなポケモン「スコルピ」「ドラピオン」が生息する。
まぁここにドラピオンとかノクタスのような強いポケモンはいないがな。
とまぁ俺の「知識」はこんなもんだ
フリズがこんな事を考えていながらも、アイシオンは順調にダンジョンを進んで行った。そして二階に行ける階段を見つけたと同時に近くにいた敵にも見つかった。
ランザ「あのポケモンは………サナギラスだね。」
サナギラス。ヨーギラスの進化形でパッと見ると動きずらそう。
その通りだ。しかしヨーギラスの時に比べると格段に固くなっているため厄介だ。そしてこのポケモン、進化すると恐ろしい化け物になる。
リズ「うっ。でも向こうは動きが遅い。攻撃するなら今がチャンス。バブル光線!」
リズの口から大量の泡が放出する。そしてその泡は一直線に並び、そして一直線にサナギラスの方に飛んでいく。
バブル光線。「泡」という技よりも威力が高く飛距離もかなりある。最近ではこれを使って相手の視野を狭くするというテクニックもあるらしい。
そしてサナギラスは避けようとはせずに全ての泡をくらった。そして泡がサナギラスの体に当たった瞬間に泡の中にある空気が弾けて砂煙が起きた。
リズ「やった。」
喜ぶリズ。
しかし
サナギラス「グォ。グオオオ。」
砂煙から出てきたのはサナギラスだった。
リズ「嘘………効いてない…」
そして今度はサナギラスがリズにたいあたりをする。
フリズ「危ない!リズ!」
フリズが叫ぶも、自分の攻撃が効いていなかったことに驚いていたリズはサナギラスが近くにいることに気付いていなかった。
フリズ「リズッ!!!」
サナギラス「グオオオオオ!」
リズ「え…………きゃあ!」
リズはサナギラスの攻撃をまともに受ける。そしてリズはその場に倒れこんだ。
フリズ「くっ。一階からこんなに苦戦するとはな。」
ランザ「恐らくこいつはここら辺のボス的存在だね。水源の穴にいたナマズンのような。」
ボス。そう思うのが正解だ。ここのポケモンはこんなに強くない。
ランザ「僕は相性的に不利だから退いとくよ。」
フリズ「わかった。俺に任せろ。」
とは言ったものの流石に厳しいかもな。いくら固いとはいえ、通常の4倍ダメージ、天候で半減されるから正しくは2倍ダメージのバブル光線をくらっても平然といやがる。
どう崩すかだな。
フリズ「ランザ、何か手はないか。」
フリズの問いにランザは少し困った表情で
ランザ「う〜ん。ないね。ただこいつは攻撃力が異常に高いから注意してね。」
と言った。
攻撃力が高い……これはリズを一撃でダウンさせたことからだろう。シャワーズとはHPが高い種族。それなのに、このサナギラスは一撃でダウンさせたのだ。しかもタイプ一致はしてない、低威力の技で……
サナギラス「ゴオオ。」
そうこう考えてる間にもサナギラスが近づいてきている。
フリズ「何か方法は……………そうだ!」
フリズは何かを思い付き、自分の右手を前につき出した。
そしてその手からは円型の水が出てきた。
フリズ「水の波動!!」
水の波動。円型の水を数発だし、敵に攻撃する技だ。バブル光線と同じく飛距離もある技だ。
バブル光線の時と同様、サナギラスは水波動を全てくらい。その場に倒れこんだ。
フリズ「やったか!」
しかし、サナギラスはまたも平然と起き上がった。
ランザ「やっぱり、固すぎる。」
さすがこの砂丘のボス。このくらいは耐えるか。
そしてサナギラスは「突進」をしてくる。
しかし、サナギラスが突進していった方にフリズはおらず、壁に衝突した。
サナギラス「グォ……グオオオ。」
ランザ「一体なぜ…………まさか混乱!?」
そう。俺は最初から混乱を狙っていたのだ。奴は攻撃力が高い、高すぎるのだ。だからこれを逆手にとり、混乱させて自滅されるというわけだ。
フリズ「これでとどめだ!冷凍ビーム!」
そうフリズが叫ぶとフリズは両手を前に出した。そしてその両手から水色に輝く光線が放たれ、サナギラス目がけてとんでいった。
サナギラス「グオ!グオオオオオオオ…………」
そして技は見事にサナギラスに命中し、その場に倒れ全く動かなくなった。
フリズ「ふぅ。終わった。まさかしょっぱなからこんな災難だとはな。」
ランザ「そうだね。でも君がなんで冷凍ビームなんかを?」
フリズ「何かわからないけど覚えてた。氷タイプの技ならけっこう覚えてるんだ俺。」
ブイゼルという種族は通常では氷タイプの技はあまり覚えない。
覚えるには技マシンか教えてもらうしかないというのにこのフリズは氷タイプの技を色々もっている。
リズのオーロラビームは勿論、つららおとし、凍える風、冷凍パンチ、そして先程の冷凍ビーム。
ランザ「まぁそれよりも今はリズの治療をしよう。そこまで酷くはないから。」
そういいランザはバッグからオレンの実を出し、リズに食べさせる。
そしてオレンの実を食べたリズは数十秒で元気になり、体力も回復した。
オレンの実………便利だよなぁ。
リズ「う。助けてくれてありがとう。」
何だろう最初の「う。」は……
ランザ「よし、先へ進もう。」
その声で三匹は階段をのぼっていった。
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あれからというもの、たいした敵は全く出てこず雑魚敵ばかりでていた。
フリズ「冷凍パンチ!」
サボネア「プギャー。」
ふぅ。敵の数は少なめだがやはり暑さがな……
フリズ「今は何階だ?」
リズ「七階だね。」
七階か、もう少しで奥地だな。
ランザ「聞いてなかったけど誰を捕まえるんだい?」
フリズ「『テッカニン』です。」
テッカニン。ちょこまかと動く、なんとも倒しにくいポケモンだ。
ランザ「同じ虫タイプ………絶対に勝つ!」
おぉ。ランザさんが燃えてますなぁ。こりゃ頼れるわ。
フリズ「お。階段だ。この上にお尋ねものがいるからな。気を引きしめて行けよ。
リズ「うん!」
ランザ「わかった。」
そして三匹は皆ピーピーマックスを飲み、階段をのぼっていった。