プロローグ
「こんばんはー。ご機嫌いかがでしょう?ご主人。」
暗い夜だった。
まるで月以外は全て闇の水に沈んでしまったように、一寸先も見えなかった。
進んでも進んでも、足はずぶずぶと沈むばかりで、自分に話しかける"そいつ"にたどり着けない。
「あ、言ってもわかりませんよねぇー。では説明いたしますが―」
"そいつ"はにんまり笑うと、ぽっかり浮かぶ月をバックに、その刃を高々とかかげた。
血をすったような赤いやいばは月明かりにぎらりと光る。
「ご主人は、あともう少しでしんでしまいまーす!」
楽しそうに、
それは楽しそうに、
けらけらそいつは笑った。
とっさに俺はそれを思い出した。
「そう・・・私は、」
とても恐ろしい存在。
「シニガミ、です!」