期間限定!数量限定!イチゴモリモリパフェ!
先にお金を払ってから、マスターに突然耳打ちされたビアンカは、ばっと目線をマスターに向けた。
「それ、ホントですか!?」
喫茶店の外で椅子に座って、ビアンカは目を輝かる。マスターのクチートに言う。
外は人が買い物袋を持ち、歩いている。平和な日常そのものだ。
「ええ、残ってまして…最後の一個だけ。ちょうど、キャンセルが入って帰って行かれたかたが…以下がなさいます?ビアンカさん」
「もっ…勿論!!食べます!」
よほど嬉しかったのか、顔を両手で覆った。
「あなた様の気をきかせたのか…キャンセルしたのです。それではしばらく、お待ち下さいませ」
ぺこりとクチートは頭を下げ、厨房へ向かう。
「それ、私ですよ」
右から聞こえたのは、聞きなれた声だった。
「ファルツェア!」
名を言われ、ふっと笑う。右目を怪我し、治療を終えていたフライゴンの彼が言った。
「ここのパンケーキを食べていたのですが…お腹いっぱいになりまして…。リツァの資料を持ってショックを受けていた貴方を見て、マスターに言ったんですよ。戻ってきたら私がキャンセルした、期間限定を食べさせてあげてください、と…」
「それって、確保してくれたってこと?」
「お店の方からしたら、迷惑な話ですけど。彼女は分かりましたと、言ってくださいましたよ。良かったですね、ビアンカ」
ニコッとファルツェアは微笑み、その場を後にした。
「あ、ありがとう!ファルツェア!」
ビアンカは手を振り、ファルツェアと別れた。しばらくし、パフェを待っている間にノートを取り出した。
「これで…夏のマンゴーシャーベットパフェと、秋のハリマロンパフェに、冬のミカン&柚のパフェ…春のイチゴモリモリパフェっ!制覇だっ!!」
一人で盛り上がっていると、ライチュウがやって来た。
「ビアンカ、期間限定のパフェシリーズ、制覇したのか?」
「あっ…」
テンションがマックスの時、やって来られたため、驚いてペンを落とす。
「あっははーフィナル先輩…」
固まって言葉が上手く出てこない。
「今度は何を制覇するんだ?」
椅子に座り、フィナルはビアンカに聞く。
「えっ…今度はパンケーキとかですかね?種類沢山ですし。ドラゴンフルーツのパンケーキとか、ちょっと気になりません?」
ビアンカはノートを片付け落としたペンをフィナルから貰い、そう言った。
「……」
フィナルは驚き、固まって言葉が出なくなった。
「ボク、変なこと言いました?」
「いや…ドラゴンフルーツ、この喫茶店扱ってるのか…?」
「今度マスターに聞いてみます」
と、ビアンカは言った。「扱ってない気がする…」とフィナルはボソッと言い、ビアンカの前に置いてあった、水を飲み干した。フィナルは椅子から立ち上がり、ビアンカに言った。
「団長と稽古してくる。ビアンカ、ほどほどにしておけよ」
「フィナル先輩も、稽古ほどほどに!」
「あーはいはい」
手当てするのは、ボクだからと怒っているようにも聞こえる。聞き流し、すぐさま稽古場へ向かうフィナルを、プンプンと頬を膨らませながら、ビアンカは見つめていた。目線をお店に戻した時、ウェイターがやって来た。
「お待たせしましたー」
「来た来たー!!」
カメールが持ってきた期間限定のパフェを心待にしていたかのような声をだし、ビアンカは目を輝かせる。
「ごゆっくり」
カメールはぺこりとお辞儀をして、室内へと入って行った。パフェと共に頼んでもいないパンケーキが付いて来ていた。パフェの前に紙が置かれているため、ビアンカは読む。
『期間限定パフェを制覇したお礼です byマスター』
と紙には書かれていた。室内をちらりと見るとマスターが微笑んでこちらを見ていた。
「ありがとう、マスター」
聞こえないかも知れないがそういい、ビアンカはぺこりと頭を下げる。両手を合わせ、「いただきます」と言った。スプーンを取り、パフェを頬張る。
一番したにはコーンフレーク、次にイチゴアイス、小さな四角状のスポンジケーキ、そしてイチゴソースのかかったバニラアイス。の横にはイチゴとイチゴを潰し混ぜた薄桃色の生クリームたっぷりのパフェ。
「う〜ん!美味しい!旬なだけあって美味しい!!」
ビアンカはニコニコしながら、パフェを頬張る。パンケーキは、季節それぞれの果物が乗り、生クリームと粉砂糖がかかった薄目のパンケーキだ。そちらもナイフとフォークで切り、パフェをある程度食べ手からパンケーキを口にいれる。
「ん〜!!」
美味しい。と口には出さない。ニコニコしているだけで、食べ進める。ふと、室内へ目を向けると、客が食い入るように窓に顔を押し当てビアンカを見つめていた。
「なんだ、あれは!?」
と、きっと思っているのだろう。期間限定を制覇した者のみが食べられる、パンケーキだと客は知ったのだろうか。マスターを呼び、客は聞き始めた。
鼻に生クリームをつけながら、ふっと笑みを溢して目線をパンケーキとパフェに戻し、食べる。一年通わなきゃ、食べれない、数量限定の期間限定パフェなんだ。そう簡単には食べれないだろう、とビアンカは思った。ボク以外にも常連客は居るんだ。1日30個限定なんだから。最終日の今日でイチゴは終わり。また、来年。食べられなかった時の悔しさはボクにも良くわかる。そう思いながらもパクパクと食べる。綺麗に食べ終え、ナプキンでくちまわりを吹き、バイトのポケモンに新しい水をいれてもらった。
「ふぅ…食べた食べた」
水を飲み、マスターにぺこりとお辞儀をし、自身の部屋へと戻っていった。