the movie 〜最初から始める〜
〜キミの世界〜
私は、家にあるゲーム機。GBAにポケットモンスターリーフグリーンのカセットを差し込んだ。電池がちゃんとささっていることを確認し、ゲーム起動のスイッチを上に上げゲームを起動した。
久々に起動した。いつぶりだろうか?そんな思いをしつつも、オープニングが流れた。ニドリーノがゲンガー相手に引っ掻くらしき攻撃をしている。ノーマル技は効かないと思うが…苦笑いをしつつも、オープニングが終わり、作品タイトルと共にフシギバナが映し出され後ろには葉っぱが吹き荒れ飛んでいる。Aボタンを押した。フシギバナの鳴き声が流れた。画面が変わり以前書いて、そのままだったレポートが表示されていた。主人公の名前はリーフ。図鑑は150匹。カントーの図鑑は完成させていたらしい。プレイ時間は50時間ほど。何も言えないまま、ボタンを押した。今まで何をしていたのか、軽いあらすじが表示される。ポケモンの交換をしていたらしい。
あらすじが終わり、レポートを書いた所でゲームが再開された。
「……」
無言でボックスの中身を確認した。ポケモンは全部そこら辺で捕まえたであろう、キャタピーやポッポばかり。また、最初からプレイしようとして、交換に疲れてやめてしまったんだろう。
「こんなことしていたんだ…自分」
ボックスを一通り見終わりそう自分はポツリと呟いた。
ボックスを閉じて前を向いた。
画面越しだから、キミには私の表情は分からないし、キミの表情が笑っているのか、泣いているのか、私は確認することは出来ない。
だってゲームだから。
何を思い、チャンピオンを目指し、悪の組織と戦うのだろうか。
行くとこ行くとこ、毎回悪の組織と出会うのは、こりごりなのだろうか?それとも、大事な人を守る為に戦っているのだろうか?
それは、私には分からないだろう。
操って、自分のやりたいようにプレイする私は、画面越しのキミがどういう思いで私を見て思うのだろうか?
私を嫌うだろうか?
それとも、ありがとうとお礼を言われるのだろうか?
それも、私は分からない。
プレイしている私は流れるポケモンセンターのBGMを聞きながら、思った。
画面越しでしか見られないキミに一言言いたい。
ありがとう。そして、ごめんなさい。
今まで沢山キミを操作して沢山遊んだ。
でも、もう一度最初からプレイしたい。
キミが消えても忘れない思いで。
沢山の思いでを小さな自分の宝箱にそっと片付けて鍵を閉めた。
もう一度、ゲームを起動し、フシギバナの鳴き声がこだまする。
十字キーを下に押して、ボタンを押した。
さいしょからはじめる
レポート
「私のポケモン達、元気にしてるかな…」
私を操作しているキミは、どう思ってプレイしているか、表情も確認することは出来ない。誰がプレイをしているのだろうか?私は、分からない。
ごめんね。
キミがそう思っているかも私には分からない。
突然うっすらと、視界が白くなっていった。
久々にストーリーをやりたい。さいしょからはじめる、を押してオーキド博士の説明を受け、男の子を選んだ。ライバルの名前を決めた。ファミコンの前に立っている主人公を動かし、パソコンから傷薬を引き出した。昔のようにわくわくを思い出しつつも、自分の部屋の階段を降りて、母親に挨拶をした。
「そうね、おとこのこはいつか、たびをするものよ」
行ってきます。 口には出さないが思い、男の子を操作して家を出た。草むらへ向かい、オーキド博士に止められる。研究所に案内され、ポケモンを三びき選ぶといいといわれ、最初に選ぶポケモンのモンスターボールの前まで歩き、レポートを書こうとした。
ちゅうい!まえのレポートがかかれているとうわがきをされますが、よろしいでしょうか?
そう、でてきた。
男の子が前のレポートを見て、何を思うのか。私は分からない。
これだけたくさんやって来たことのかいたメモの上にうわがきが出来ない。そんな勇気はないのかもしれない。
ただ、ゲームだからレポートが書ける。うわがきできる。
きっと、キミは怒るだろうか?
それとも、悲しむだろうか?
画面越しで表情が分からない私は、何とも言えない感情に襲われている。
このまま、ボタンを押せば、全てが新しく変わる。
唇を噛み締めて十字キーを上に押した。
レポートをかいています。でんげんをきらないでください
私は男の子を操作して、レポートを書いた。