the movie〜liarna Last Christmas〜 R15
ここは、ポケモン達だけが住む、ポケモンだけの世界。今日の午前中も僕らは調査団の仕事をし、午後からは団長からのご命令で休みを頂けることになった。水の大陸のワイワイタウン。午前中の時から、外は薄暗く、寒かった。
外でボーッとしていると空から降ってきた。
寒い冬。白い雪がパラパラと降り、僕の鼻の先に冷たいものが付いた。
「冷たっ!」
落ちた鼻先を触り、そう叫んだ。
「あははは!」
調査団の入り口から笑い声が聞こえた。後ろを振り向くと、パートナーのツタージャが笑っていた。冷たい雪で驚いた僕を笑っているのが分かった。
「ツタージャは、中に居なくて良いのかい?」
「だいじょーぶだよ。イーブイはさむくないの?ワタシは、くさタイプだからすこししたらまた、もどるけど…」
そう言われ、イーブイはツタージャの横顔を見つめたあと、目線を前へと戻し、歩き始める。ワイワイタウンの全体を見渡せる場所にツタージャと共に向かった。向かっている途中に、ツタージャには聞こえないように、そっか、と答えた。
「ゆき、ふってるから、ホワイトクリスマスだね!」
ツタージャはイーブイの横顔を見てニコニコして答えた。僕もふっと笑ってツタージャの顔を見つめながら答える。
「そうだね」
「ワタシ、さむくなってきたから、もうかえるね!イーブイもはやくかえってきて!きょうはごちそうらしいから!」
そうにこやかにいいツタージャはイーブイに手を振って階段を降り、足早に調査団の本部へと帰っていく姿を、悲しそうな顔で僕は見つめた。
(ごめん、僕は行けそうにないや)
光が失ったその瞳は、悲しげな表情しか作れなかった。
一緒に居たいが、居られないのは、分かっているから。
僕は、ポケモンを殺していた。
両親の仇を取る為に。
我に返ったら、怯える訳でもなく、逃げるわけでもなく。
僕は頭を押さえて笑っていた。
罪を犯したんだと。
それからてんてんと名前を変えて、ポケモンに会えば、本来の自分とは性格を変えていった。
言わば、仮面を作っていった。
もう、どれが本当の自分の素顔で、自分の名前なのかさえも、仮面なのかも忘れている。
イーブイという名前も、偽物だ。
僕自身の体も、本当にイーブイなのかさえも、最近は分からない。
「はっははははっ!…これで、僕は僕という存在と、おさらばできる」
高台から階段を降りて、ラプラスに未知の場所へと案内して貰った。
そこに、もう一人両親の仇を打つ奴がいるから。
「イーブイはまだこないのー?」
ツタージャは食堂でイーブイを待っているようだった。
「ポケモン協会の者だ!ここにイーブイがいただろ。どこにいる」
威圧的な態度で、ウインディは団長のデンリュウに言った。
「イーブイ?さぁ、午前は仕事をしていましたが、午後は帰ってきてませんけど?」
「この近くの周辺にいるかもしれない!探せ!」
と、部下のエーフィや、ブラッキー、ピカチュウに指示を出した。
「あの、どういうことですか?」
デンリュウがウインディに尋ねた。
「イーブイ…本当の名前も知らないが、3年前にポケモンを殺害している」
「え…?」
と、答えたのはツタージャだった。全く私の居る前ではそんなそぶりを見せなかった。つまり、自身を隠していた。
「うそ…いや…いやだよ…うそだといってよ、イーブイっ…!!!」
信じられないという感情と、自分を騙していたという二重の意味でツタージャの瞳から涙が溢れ出した。
「ツタージャ…」
アーケオスはツタージャの名前を呼ぶことしか出来なかった。
「久しぶりだね…」
雪が降る夜の森、奥深くで僕は相手に言った。
「5年ぶりだな。探し回ったよ。協会は今頃俺を探してるようだけど、3年前とか言われてるだろうが、あれは偽物だ。5年前、お前を逃がしたときに、お前のパートナーを殺した」
笑って、俺は続ける。
「っはははは!最高のラストクリスマスだな!!」
そう言って出していた拳銃を奴に突きつけ、同時に引き金を引いた。
次の日ツタージャがついた先は、イーブイが倒れている場所だった。体は雪で半分埋もれていた。雪をどかしてイーブイの顔をそっと触った。
「嘘つき…」
顔は冷たくて、ワタシに嘘を付いた。
ずぅっと前から。
君は、ずぅっと嘘を嘘で塗り潰して来た。
だから、素直じゃない。
素直になれない。
君は、復讐をした。
それは、許されないこと。
嘘で騙していた事も、ポケモンを殺す事も絶対に許せない。
サイテーな奴だ。
でも、君が選んだ道のり。
ワタシは、選べないし、塗り替える事をしてしまえば、君が生きた道を否定する。
だから。
だから、ワタシは言いたい。
貴方はこの人生、幸せでしたか?
一人、寂しい場所で、亡くなった場所で、彼のお墓を作った。
一つの花をそっと添えて、雪が降る森を後にした。
嘘で騙した嘘つきなポケモンと
騙された者のポケモンとの
最後のラストクリスマスは儚く冷たい雪の中へと消えていった。