the movie 〜 Kaito Fantomu sheep〜 中編 R15
ばっさばっさと翼の音が耳に残る。ファイアローの翼の音。警察はまいた。ゆっくりと降下して、セキタイタウンの地面へと足をつける。
「ありがとう、ファイアロー。出ておいで!モココ!」
赤と白のボールから出て来たのはピンク色をした羊、モココがポンっと出て来た。
「ファイアローと、ほかの子、お願いね」
そうシープはいい、モココにポケモンが入っている小さな肩掛けバッグを手渡し、モココは目を細めて、受け取った。黒髪ショートヘア―のシープの髪は風で少し靡く。モココたちと別れ、シープはフレア団秘密基地へと足を踏み入れる。左奥にある、大きな石に触れ、招かれた。
「シープ、待っていたぞ」
石のエレベーターに乗り、地下へと行く。すると、トランシーバーで話をした研究者が待っていた。
「こっちへ来い」
そう言われるがまま、彼に付いて行った。研究者が他にもいる部屋へと連れてこられ、言われたモノを渡した。
「これだよこれ。よくやったっ!これで、最終兵器が起動できる!」
メガストーンを受け取り、舞い上がる研究者をただ、無表情で見つめていた。我を思い出したかのように、一度咳払いをした研究者は、報酬を渡した。もらったものは、一枚の写真。
「……貴様、いつの間に」
研究者を睨みつけ、言った。受け取った写真は、自分の写真。私服の姿。
「なぁ〜に。シープが捕まらなければいいだけの話だろ?」
まぁ、それもそうだが、と心の中で納得した。ポケットの中にくしゃくしゃにした自分の写真を入れた。
「依頼はこれで終わりだろ。アンタたちも、警察に目を付けられてるんだ。下手な事………」
研究者にそう言っていると、地響きが起きた。ゴゴゴゴゴという音を立て、一斉に何かが入ってくる音が近くから聞こえた。
「怪盗シープ!お前を今から現行犯逮捕する!」
後ろを見ると、先ほどの研究者が居なくなっていた。逃げようにも、出口が警察たちに塞がれている。
「午後9時半!怪盗シープを現行犯逮捕!」
抵抗はせず、そのまま棒立ちしていたが、警察に押さえ込まれ、腕を掴まれ少し顔をしかめた。
「っ…!」
「まさか、ガキとはな」
警察が一言放ち、仮面を外す。そして、くしゃくしゃにしていた写真をポケットから出され、部下らしきものが言った。
「この子…前に」
「その話は後で言え。シープを連れて行け!」
そう警部らしき人物がいい、連れて行かれた。顔を布で隠されていたが、人がざわついている音や、パトカーの音が聞こえる。
(…あの子たちなら大丈夫)
そう思い、あとは彼らに託した。パトカーに乗せられ、警察本部へと連れて行かれた。
「起きろ」
ばしゃっと水の音と共に、自分が水をかけられていることに気が付いた。ぽたぽたと水が髪から床へと落ちる。
「……」
連れてこられた後、何も答えなかった。黙秘をし続けた。今も、尋問されているにも関わらず。手錠をかけられ、身動きが出来ない。
「いい加減答えろガキ!」
椅子があるにも関わらず、警察は私のお腹目掛けて蹴りを入れて来た。
「うっ…が…!!…がは…!」
意識がもうろうとしていて、痛みが全身に広がるような感じだった。椅子は吹き飛び、壁に打ち付けられた。
「は……ぁ……はぁ…」
息を吸うのも精一杯だ。カメラがあるがそんなことはどうでもいい。
「貴様名義の調書だ」
そう言って差し出してきたのは自分名義の証書の紙とペン。
「ああ、すまなかったな。手が無きゃ書けないか」
そう言い、公安の警察はもう一人いる、刑事に手錠を取れと顎を上げて指示をした。
「名前を書け」
差し出され、受け取った。ペンも。自身の名前を書き、手渡した。書かなきゃ何かされる。危機感を感じたから。
「それでいい」
目が笑ってはないが、口だけはにっこりと笑顔を出していた。背筋が凍りそうだ。だが、信じて待つしかない。椅子に無理やり座らされ、尋問がもう一度始まろうとしていた。
セキタイタウン、フレア団秘密基地の岩影にて。
『みんな、出てきてくれ』
肩掛けバッグから赤と白のボールを4つ取り出した。
『仕事か』
と、一番最初に言葉を発したのは、ヤミラミ。
『あの作戦、上手くいって良かった!』
にこやかに発言したのはドレディア。
『だが、警察も油断ならないぞ』
警戒しつつモココの顔を見つめて、言ったのはジュナイパー。
『警察署に行くぞ』
その言葉で皆頷いた。ファイアローの背中に3匹は乗り、ミアレ警察署の近くへと向かった。ジュナイパーはファイアローの後ろに続き、空を飛ぶ。
ふと移動中に疑問に思ったドレディアはモココに聞いた。
『ゾロアークはどうしたの?モココ』
『俺達とは別行動だ。ミアレ警察署の近くに行けば会える』
後ろは振り向かず、モココはドレディアに言った。
『ゾロアークを発見したぞ』
ファイアローがミアレ警察署の近くにある、屋根裏から顔を除かせているゾロアークを見つけ、人やポケモンに見つからないように、裏から回り、ゾロアークと合流した。