the movie 〜love〜
分厚い薄暗い雲が世界を包んでいる。空から冷たい雨が降り注いでいる。少し、肌寒い。季節は秋で、黒い傘をさして雨で少し、服が濡れていた。学生服が濡れて染み込んでくる。駅の前で傘をさし、一人の少女を待っていた。
「ごめん!待たせちゃった?」
灰色の傘をさして走ってきたブレザーを来た少女が、待っていた俺に言った。
「いや、俺も来たばっかだから大丈夫だ」
「そう、なら良かった。どこへ出掛ける?」
ブレザーを着た少女はほっとして彼に言った。何処へ行こうかと。
こんな日だ。遊びたいが、雨の日だから遠出は出来ない。身近で何か出来ることを探さなくては。
左手で顎を押さえて考えていると、少女はモジモジと体をくねらせて照れた顔で言った。
「あなたの喫茶店に…行きたいな…ダメ?」
「良いよ。それじゃ、行こうか」
二人は歩きだし、傘をたたんだあと、駅へと入って行った。電車に乗り、ゆらゆら揺られ、彼が経営…というよりはヒカルが経営している喫茶店ナイトへとやって来た。夜に経営している訳ではなく、午後からの経営だ。店は少し細い路地にあり、学生仲間と共に、よくここへ来る。ただ、今日は二人っきりなだけで。
からんからんと、ドアを開けたときにベルが揺れ動き、音が響く。二人の後ろからもう一人スカーフを付けた人が入ってきた。
「貴方達は、どうする?あなたは…そこね」
喫茶店ナイトのオーナーヒカル。ここは有名な喫茶店で、よく人が来る。今日は雨なので、あまり人が来ないみたいだ。
「あ…私は彼の…部屋に」
「行ってらっしゃい」
そう少女はいうと、彼の腕に腕を絡ませて二階へと上がっていった。
「ごめんなさいね、お客様」
「いえ…ここ僕が居た場所に似ててなんだか、落ち着きます」
「そう。それは良かったわ。オススメで良いかしら?」
「はい、お願いします」
僕はそうマスターにお願いした。
二階の部屋へとやって来た二人は、椅子は有るが、座らず立ったまま話を始めた。
「なんか…変な感じ…貴方がそばにいると…その」
顔をチラチラと確認しながら、頬を赤く染めている。
「心臓がバクバクして…貴方が側に居ないと…嫌。その…貴方が、好き…なの」
少女はハッと我に帰り慌てて、俺の右手を握った。
「あ…私今、何て…言ったの」
そう言われると俺は、少女の腰を左手でそっと添えて、自分に近づけた。顔が近い、と言われる前に俺は言った。
「好きって言った、よ?」
「わ…私も…好き。大好き貴方が」
そう言われると、彼女から抱きついてきた。俺は彼女と共に、抱き合った。二人だけの時間を過ごした。
たった一人の恋人と共に。
コーヒーを飲んだあと、会計をし、喫茶店を出ると、目の前には見覚えあるポケモンが居た。
「甘い彼らのお話、楽しんで貰えた?」
「…エーフィ。僕は下の階に居たけど声は聞こえたし、僕しか居なかったから。あの二人も僕が下に居ること忘れて無我夢中に、話してたみたいだし。僕も少し、照れ臭い思いにはなったよ」
僕が感想を言うと、エーフィはニコッと笑って答えた。
「ふふっ楽しんで貰えた見たいね。良かったわ。まだまだ楽しんでね」