ウィディード
父じゃない。じゃあ、目の前に居るのは…ダレ?
「クックックッ…リーフ、お父さんは死んでるんだよ…爆発に巻き込まれてなぁ…!」
差し出していた手首を引っ張り、抱き締めた。
「うっ…そだよね…」
瞳から涙がこぼれ落ちる。父の白衣を着ているソイツに、吹き飛ばすぐらいの力は今、残っていない。膝から、崩れ落ちて言葉にならない。ソイツが私の頭を優しく、撫でている。携帯のバイブオンが洞窟内で響く。白衣のポケットから携帯を取りだし、メールを確認する。
『私を倒すんじゃないのか?』
「…ああ…あぁ!そうさ!」
ニヤリと笑みをこぼしてねっとりとそう言葉に出した。
「アランの居場所……ほら、ハンチングを被ってて黒髪ショートヘアーの子だよ。どこだか分かるかなぁ?」
ソイツは、涙を流している私に顎に手を添えて尋ねてきた。
「分か…らない…しらみ潰しに…探せば…………いぃ…」
「そっかぁ…そうだよね!ありがとう、リーフ」
そういいソイツはリーフを吹き飛ばして洞窟を出ていった。
(何とか携帯の居場所を見つけて、ハッキングして突き止めたが…アサギシティじゃ)
パソコンのモニターに写し出されている場所はフスベ側の暗闇の洞穴。地図を見て、歯をぎりっと鳴らした。
「やつの事だ。今頃誰かと話してるでしょうね?」
「ナナシマへ行く途中、出会ったリーフとか?」
ちらりとベッドの隅で震えて怯えているボロボロの白衣の男を見てアランは言った。心体ともに衰弱している。ごめんと謝っていた。
「そんなバカな話しある?」
半分以上は本気でイエローはアランに言う。パソコンをシャットダウンし椅子から立ち上がり、イエローにいう。
「…行くわよ」
「はーい。待っててね、すぐ戻るから」
隅で座っている男にイエローは言い、自分の部屋をあとにした。
暗闇の洞穴へ向かうと、倒れている女の子を見つけた。
「うそぉ…ホントにいた」
「よっぽど、暇のようねあいつ」
呆れた…という声色でアランは言った。
「それより、彼女連れてポケモンセンター行かなきゃ。ここからだとフスベが近いし」
イエローが放心状態の彼女を抱き上げ、アランに言った。アランは頷き、フスベシティへ向かう。二人は見知らぬ彼女に連絡を受け、ワカバタウンからフスベシティへと向かった。
「リーフ!」
グリーンが病室のドアを勢いよく開けて彼女の名を叫んだ。
「お、落ち着いてください。今、ようやく落ち着いて眠ったんですから…」
ジョーイさんがグリーンを宥めて言う。病室の外で彼女二人はリーフを見つめていた。
「グリーン、あれ見て」
グリーンの肩をポンッとたたいてファイアは窓ガラスの外にいる少女二人のことを言う。リーフの表情をみると、苦しそうな表情で眠っていた。病室を出て、二人と対面した。
「お前らがリーフをあんな風にしたのか」
「それだったら、助けずに放置してると思うけど?」
「犯人だったらそうしてるよね。ありがとう、彼女を解放して教えてくれて」
ファイアは二人にお礼を言い、アランはファイアに言った。
「当然のことをしたまでよ」
グリーンは二人に謝った。
「さっきは…疑って悪かった。お前らは…なにもんなんだ?」
「ただの旅人よ」
イエローが言うと、ファイアがいう。
「でも、誰か探してるって。それにシルバーが…」
意外な人物の名前が出てきた事に驚いた表情をアランは見せた。
「シルバーってやつとも何か、関係が有りそうだな」
グリーンが興味を示していう。
(探っていたのか…)
アランは眼を細めた。。
「シルバー、何か言ってなかった?」
アランは考えながらも二人に聞いた。
「いや、見てないって言ったらそのまま何処か行った」
ファイアはアランの問いに答える。
「そう。それと、さっきの誰か探してるっていう答えは当たってるわ」
(しばらく、様子見か…)
アランは考え、二人にいう。
「俺たち、彼女が退院したらカントーへ戻ります」
「ああ…そう。ならカントーでもよろしく」
アランがそう言うと二人は、えっという言葉を洩らした。
「私、カントー出身だから。イエローはここ、ジョウト出身だけどね」
アランは二人にいい手を振ってその場を後にした。
それから一周間、リーフは目を覚まし退院してカントー地方のマサラタウンへと戻ってきた。
彼女は外でファイアとグリーンとで話していると、父親が帰って来た。イエローと一緒に乗って帰って来た。
「おとう…さん」
ボロボロの白衣を着ている父は怯えて入るが、リーフを抱き締めた。
「おとうさん!待ってたよ…」
リーフも抱き締めて叫んだ。
恨んでいた
父を
でも、いつしかそんな気持ちは無くなっていて
今生きている父親の姿を見て、安心した
イエローはマサラタウンに居る、アランに会いに行く。二階に居る彼女を階段から見つめた。アランは窓の外を眺めて、ファイアとグリーンは親子を見つめて微笑んでいる姿を見つめていた。
「足取り、掴めなくなった」
ポツリとアランは階段を上がりきったイエローに言う。
「しばらくは休みましょう。私たちも」
「そういうことにする」
アランは背伸びしてベッドへと向かい、眠りについた。リーフの泣く声が聞こえる。
「おやすみ、イエロー」
アランはそういうと寝息を立てた。イエローはアランを起こさないように階段を下りていった。
それから二年、リーフはアラン、イエローと仲良くなり父の心のケアをしながら幸せに暮らし始めた。