三人の旅
ここは、ポケモンと人間が暮らす世界。私が知っている三人の少年少女の話をしよう。
「待ってよ、ファイア、グリーン!」
一人の少女が二人の名前を呼ぶ。森を駆け巡り、二人を追いかけた。足をつまずき転ける少女に寄り添う二人は少女の幼馴染。
「大丈夫か…リーフ?」
「うん…大丈夫。擦りむいちゃったけど…」
茶色いとげとげ頭をしている少年は突如、リーフの手を掴み、立ち上がらせた。ここからそう遠くない小屋へと一目散に彼女を連れて走り出す。
「ちょっ…ちょっと待ってよグリーン!どこ行くの!?」
「ま、待てよグリーン!」
連れて行かれるリーフを追いかけ、ファイアも走った。ファイアは息を切らして二人を追いかけると、小さな小屋へとたどり着いた。グリーンは、リーフをつれて小屋へと入る。ファイアも少し走り小屋へと入る。三人は一晩、小屋に居ることにした。三人で夜空を見て次の日、彼女の姿が見当たら無いことに気がついた。グリーンは小屋の周りを懸命に探すが、見当たらない。ファイアも起こして、二人で捜索をするが、見当たらない。マサラタウンへ戻ってきた二人は、両親に泣きながらも説明した。
「リーフが…何処にも居ないんだっ!探しても、探しても!!」
「お、落ち着くんじゃグリーン!街の人にも探して貰う。すぐに見つかる!」
そうグリーンに言ったのは、オーキド博士だった。それから、五年後リーフを助け出す為、ファイアとグリーンはポケモンとポケモン図鑑をオーキド博士から譲り受け、マサラタウンを後にした。三人で、戻ってくるために。
トキワシティまで一緒に向かった二人は、一度別行動を取ることにした。グリーンは、ニビシティへ向かいジムリーダーのタケシとの勝負を。ファイアは、トキワシティで情報を探すことに。トキワシティでの情報を手に入れたファイアは情報を纏めることに。最近、ロケット団がハナダシティでうろついていると言うことを得る。もちろん、他の場所でも。この情報をグリーンにも教えるため、ファイアはすぐさま、ニビシティへと向かった。
グリーンがジム戦をしているあいま、ファイアはポケモンセンターへと一度向かい、ポケモン達を休ませた。グリーンとは行き違いになり、ファイアもタケシとの戦いをし、バッジをゲット。ポケモンセンターへ戻るとグリーンと合流を果たした。
「ファイア!何か情報掴んだか?」
グリーンが手を上げて、ファイアの名前を呼び、情報交換をし始める。互いに情報交換をしていると、見知らぬ少女の声がソファーの後ろから聞こえた。
「この人達も、人を探してるみたいだね」
二人は、後ろから聞こえる声が気になった為、ソファーから立ち上がり、少女の方へと足を運ぶ。
「ねぇ、私もお兄ちゃんを探しているの!一緒に探してくれる?お兄ちゃん達」
名はユリーカと言った女の子は、ぷにちゃんとデデンネというポケモンを連れ、二人と一緒に行動する事に。なんやかんや葛藤も有りながらも、お月見山へと足を運んだ三人。そこで、見覚えのある少女と出会った。
会いたかった。でも、こんな形では会いたく無かった。
そんな複雑な思いを秘めて、出会ってしまった。
「五年ぶりね、ファイア。グリーン」
ロケット団の幹部となっていた、幼馴染のリーフ。互いにポケモンを出して、戦った。2体1では部が悪いと感じたリーフは、したっぱを連れて、行方を眩ました。
「待てっ!リーフ!!」
グリーンは土煙に消える彼女に手を差しのべるが、彼女はその場から居なくなってしまう。
「グリーン…覚悟を決めよう。こんな戦い、嫌だけど…」
ファイアはその場で足を止めている幼馴染に言い、ファイアは先に歩き始める。三人は、ロケット団のしたっぱを倒しつつ、情報を得られないか、聞いたが、リーフの情報は全く無し。そのままお月見山を後にした。
ハナダシティへと向かい、何者かとぶつかったファイアはその反動でこける。
「ちょっと!待ちなさいよ!!」
女性の声が聞こえるため、顔を上げると。そのまま、ぶつかった相手は、どこかへ見失い、叫んだ相手は自分を見つめて、手を差し出していた。
「大丈夫?怪我してない?」
「あ…はい。怪我はしてません。ありがとうございます」
ファイアはお礼を言うと、相手はウインクさせて
「アタシはカスミ。ジム戦したいんでしょうけど、あいにく今は出来ないのよ。さっきの連中にポケモン取られちゃって」
と、言った。
「俺、ファイアです。隣に居るのは、グリーンと…ユリーカです。さっきの連中は…」
ファイアは途中で言葉を止め、カスミが真剣な顔でこう言った。
「ロケット団ね。あーあ。私はついてないなぁ、私のポケモン取られるんだし…」
ロケット団の事を言うと、両手ダラーんとさせて、悲しそうに言った。
「………ロケット団は、どこに行きました?」
「多分、24番道路よ。あぁ、それと、貴方の名前聞いて分かったわ。リーフってこの行方、探してるんだってね。タケシから聞いてるわ」
カスミが言うと、ファイアの目付きが変わった。
「何か分かりましたか?」
カスミは少し、黙ってからゆっくりと口を開いてこう言った。
「彼女はロケット団、ボスの部下よ」
「…………!」
ファイアの顔が驚きと、不安の顔になっていった。ふらふらとよろめいてから、彼はこう言った。
「そうか……そうだったんだ…」
「ちょっと!しっかりしなさい!」
カスミが足がよろめいて、今にも倒れそうなファイアを支えてそう言った。彼的に、精神的ダメージの方が大きいのだろう。ファイアも悩んでいた。どうして、居なくなったのか。けど、今分かった。ロケット団員になって、ポケモンを、人を…痛みつけて悪党になるって……何を彼女を変えたのか、俺にはよく、分からない。理解をしたら、いけない気がする。そう、思った。
「俺……そのロケット団員を追いかけます…ありがとうございます、カスミさん」
そう彼は言ったが、
「ダメよ、あんたまだ…」
だが、ファイアはカスミの手を払って言った。
「俺は……!知らなきゃいけないんだ!」
そう言ってカスミが言った24番道路へ二人は走って行く。
「ユリーカ!やっと見つけましたよ!探したんですよ!?」
「あっ…お兄ちゃん…あの二人…大丈夫かな」
後ろから声が聞こえたため、振り向くと兄、シトロンがいた。ユリーカは二人を心配するも、大丈夫だと信じて、兄と共に、カロス地方へと帰って行く。
その頃、ファイアとグリーンはレインボーブリッジで先輩トレーナーの、レッドに出会っていた。五年前にリーフを探すと言ったっきり、帰って来なかった。レッドに情報を貰い彼は五年ぶりにマサラタウンへ帰ることを二人に言い、その場を去る。マサキの家へ向かい、ロケット団員と言われたが、何とか誤解をときポケモンから元に戻してもらったお礼として、サントアンヌ号のチケットを二枚貰い、マサキの家をあとにするファイアとグリーン。
ハナダシティへと戻り、カスミのポケモンを渡して久々にハナダシティへと来ていたマチスとも会い、二人とタッグで戦い、ジムバッジを貰う。マチスに自転車の引換券を貰い、ハナダシティを後にした。
クチバシティへたどり着いた二人。ここは港町。とりあえず、聞き込みをすることにした。ポケモンもだして、ポケモンはポケモンに聞き込みをする。三時間前、行けるところまで行き、話をする。短パン小僧の少年にも。そして、三時間後、午後5時ポケモンセンターへ行き、話をする。
「情報は…どう?」
ファイアは昔の感じで訪ねてきた。
「ん……っとな。ロケット団がシオンタウンとタマムシシティと、ヤマブキシティの三つの街で何かやらかしてるらしいんだ。船乗りのひとに聞いたら、教えてもらったんだ。ファイアは?」
「俺は…電気親父さんに聞いたんだけど、ゲンガーを連れている、女の子が居たんだ。髪は茶色で、瞳はブルーだったらしい」
「その、電気親父さん、視力よずぎ。っと、ツッコミは置いといて…リーフじゃないか?どこにいったか、分かるか?」
「多分、さっきグリーンが言った三つの街のどれかにいるんだと思う…行こうよグリーン」
話終えたあと二人は、クチバシティをあとにした。シトロンとユリーカに再開したファイアとグリーンは、リーフをどこで見かけたのか尋ねた。
グリーンが聞く。シトロンは暗い顔をしていった。
「シオンタウンで…セレビィの首を締めあげて…ました。そのあと追いかけて、見つけたんですが……サカキと名乗る相手に」
シトロンは言葉が詰まり、上手く言葉に出来ない。あの光景が目に焼き付いて離れない。またも別行動を取り、ファイアとグリーンはタマムシシティへ。シトロンとユリーカは、シオンタウンへと向かう。タマムシのゲームコーナーへと向かい、気になるところを手当たり次第探した。すると、ポスターの裏に謎のスイッチがあったため、ボタンを押すと地下への階段が現れ、二人は先へ進んだ。ロケット団のアジトだと確信した二人は奥へと進む。したっぱを倒し、カードキーを手に入れ、最上階まで上がっていった。そこには、ずっと、待っていたであろう、彼女とサカキが待ち構えていた。サカキはソファーに座り、俺たちを見つめていた。
「やっと…会えたね。ファイア」
「リーフ…後ろに居るのが、サカキなのか?」
「……ポケモンを出して」
問答無用で彼女はキュウコンをベルトにつけていたモンスターボールから出して、彼らに言った。
「なんで、こんなことしなくちゃならないっ!?帰ろうよ、リーフ!!」
必死の叫びで、ファイアはリーフに言う。が、リーフはキュウコンに指示をした。
「噛み付きなさい!キュウコンっ!」
言葉は若干震えている気がした。グリーンがとっさにファイアを突き飛ばし、自信の腕を噛みつかれ、叫ぶ。
「うっ…ぐっあああ!!」
「っ…!!!」
自信がそう指示したのは間違いない。だが、幼馴染を守って自分から攻撃を受けたグリーンの姿を見て、息を吸うのを止めた。
息が苦しい。
呼吸の仕方ってどうするんだっけ?
目の前の光景に意識を奪われて、身体中が震えているのが分かる。
私は次第に、綺麗なブルーの瞳から涙を流してた。
息は荒いが、吸って自分を落ち着かせる。
自分はセレビィを殺してしまった、罪悪感と、幼馴染を傷つけた、罪悪感で、何とも言えない気持ちになったこと。
目の前を見てみると、ゲンガーが私に催眠術をかけているのが分かった。
「ゲン…ガー……」
「さぁ、帰ろうか」
サカキはキュウコンの背中に乗せたリーフにそう言った。蹲るグリーンを見つめ、ファイアはグリーンの心配をしている。二人を見つめて、エスパーポケモンのテレポートにより、二人は姿を消した。二人が姿を消したと認知するまでに、そう時間はかからなかったが、ファイアはグリーンを連れて、ポケモンセンターへとすぐさま向かった。
ファイアとグリーンは戦いの疲れ、腕の治療ですぐさま、眠りについた。次の日、ファイアはリザードンが手持ちに居ないことに気がついた。アジトへ向かうも、居ない。空になったモンスターボールだけをただ、誰も居ない、自分しか居ないアジトで見つめていた。グリーンに何処へ行っていたのか理由を聞かれるのがめんどうだ、すぐさま、ポケモンセンターの病室へと戻る。
「う……」
目を開けるといつもの場所だった。いつもと違うのは隣にゲンガーがいないと言うこと。そして今、思い出した。ファイアとグリーンに出会って。記憶を思い出した。私が持ってる能力、ううん違う。私だけが持ってる能力。ポケモンと話せる事。だから誘拐された。散々体に傷をつけられた。絶望を体に植え付けられた。10年ずっと繰返し繰返し同じ事をされた。旅に出られるのは10才になってから。やっと会えた二人なのに……こんな形で再開するなんて。もう嫌だよ。我慢の限界だよ。ファイアの悲しい顔は今でも覚えてる。もう、悲しい顔はみたくない。だから、会わなければ悲しい顔を見ずにすむ。鉄格子を見つめる私はグリーンを思い出していた。グリーンに怪我をさせたのは私のせい。いつもなら、サカキがやって来る。だけど、違った。
「リザードン?」
オレンジ色が目に写った。すぐに彼の名前を言った。リザードンは名前を呼ばれ、微笑む。
「無事か?」
「……」
私は答えられない。
「今から出してやるから待ってろ」
リザードンがそう言うと私は叫んだ。
「止めて!お願いだから…もう、来ないで…居たら傷つける…だけだから…」
始めて聞く悲しい声。辛い声。リザードンは彼女が相棒だと言うことはファイアやグリーンから聞いていた。けど、こんなにも弱く、悲しい声を聞いたのは始めてだった。あって間もない間だから当然だが…。
「ほぉ……我らを見つけるとは。流石と言っておこうかリザードン」
サカキが出てきた。リーフはリザードンに叫んだ。
「リザードン…逃げて!」
「逃がすものか!ゴローニャ、岩なだれだ」
ゴローニャを出していたサカキはリザードンに向かって放った。土煙が舞う。岩に埋もれたリザードンは姿を見せない。
「来い、命令だ」
ゴローニャに鉄格子を壊させ、サカキがリーフの腕を引っ張り、外へ連れていく。
「ハァ…ハァ…待てよ…」
リザードンの怒りを聞いた。
「彼女を……放せぇぇええ!!!」
岩が赤く燃え上がり木っ端微塵に砕かれた岩。リザードンがサカキに向かって火炎放射を打つ。ゴローニャはとっさにサカキを守り、役目を果たしたかのように自爆した。壊れた研究施設をただ単に、リーフは黙って見つめている。
「キミのお父さんに会いに行こうか」
燃える研究施設を見つめているサカキが放った言葉にリーフは驚いた表情を見せた。一歩下がって唇を震わせて。
「嫌…それだけは…嫌っ!!」
胸に手を添えて、叫んだ。
あの時の、小さい頃の記憶がフラッシュバックした。二人と遊んだ記憶なんてほとんど覚えていない。父に暴力を振るわれ、大丈夫か?ごめんな、と言って、なでられる。歪んだ愛と執着心を持った父だと、あの時から思っていた。母は自殺し、父はロケット団の研究者だったため、私をさらった。それ以前、以降の事は思い出したくもなかった。
ああ、暴力は振るわれたくないが、一緒に父と居たい。そうひそかに思うように為っていたのかもしれない。私も歪んでいるんだと感じた。
ファイアやグリーンと会いたい。その反面、昔、父が暴力を振るっているという事を、知られたく無かったから。今は研究に夢中で私の事など、お構い無し。
「……分かった行く。でも邪魔しないでね…」
一度は嫌と言ったが、サカキにそう言い、父に会いに行く事にした。
三週間後、タマムシシティからマサラタウンへと戻ってきていたファイアとグリーンはというと。
「腕はもう、大丈夫なのか?」
「ああ、心配させちまってすまない…何か、情報掴めたか?」
ファイアの部屋で会話をしている二人。パソコンのキーボードをカタカタ押しているファイアはグリーンの問いに、振り向きもせず答えた。グリーンは、腕や手首を動かしながら彼の言葉を待つ。
「シルフカンパニー…カントー地方で最も大きい都、ヤマブキシティが俺は怪しいと思う。そこに、彼女も待っている気がする。決着を着けるなら、シルフカンパニーだと思う」
「以下にも、ロケット団の野郎共が占拠しそうな場所だな」
しばしの沈黙の後、ファイアは動いていた手を止め、グリーンに言った。
「…何か、聞こえないか?」
パチパチと何かが燃えるような音。焦げ臭い匂い。カーテンを勢いよく引いて、窓の外を見る。
「研究所が燃えてる!?」
「下、見てごらん」
椅子から立ち上がり、二人、ベッドの上に乗ってファイアはグリーンに冷静ながらも、言う。下には黒い帽子、黒い服を来ている、ロケット団がマサラタウンを占拠していた。三週間センターにいたのだ。連絡も取って居ない。誰も居ない事は密かに感じては居た。が、心にそんな余裕がないから、人も探せない。何とか二人だけで話さないと心が壊れてしまいそうで。ズキズキと心が痛むんだ。ずっと。二階から階段を降り、ポケモンを出した。ハイドロポンプでドアごとロケット団員を吹き飛ばし、カメックスは研究所の消化活動に辺り、ファイアとグリーンはしたっぱ全員を蹴散らした。
「シルフカンパニーがやっぱ濃厚そうだな」
「ああ、行こうヤマブキシティへ」
カメックスの消化活動を見届け、カメックスをボールに戻し、ファイアは空を飛べるポケモンを出し、背中に乗りヤマブキシティへとグリーンのポケモンと共に向かった。
シルフカンパニーに乗り込んだ二人は、一緒に最上階まで進む。ロケット団と戦いながら、下っ端から話しを聞いて、奥地まで進むと、そこに、マサラタウンの人立ちが鉄格子のなかに入れられていた。目に飛び込んできたのはそれだけじゃなかった。リーフとサカキが立って待っていた。シルフカンパニーの社長さんも、マサラの人たちとともに、捕まっていた。鉄格子を見た後、リーフとサカキを見つめていると、リーフが口を開いた。
「ポケモンを出して、ファイア、グリーン」
「どうしても…か?」
「………」
グリーンが訪ねても、彼女は答えない。ファイアがポケモンを出した瞬間、リーフもポケモンを出した。すると、私はこう言った。
「ふふっ…いいのよ…それで。さぁ、グリーン貴方もよ」
最初から、戦わなくちゃいけないことは、分かり切っていた。あのあと父と再開して、幼馴染と戦うことを告げると、微笑んでいた。なぜだか、理由は聞かない。聞きたくもない。そして、燃えた研究施設へ戻りリザードンを解放して、手当をした。ポケモンと話せる私はシルフカンパニーへとポケモンに案内をされ、ここにやってきた。なにしても、抗っても…何も残ろうとしない。残らない。だから、最後までサカキと父についていくと、決めた。悩んで、泣いて、叫んでも無駄。だから、私は幼馴染と戦うことを決めた。
「何で…こんなことしなくちゃならないんだよっ!こんなの!間違ってるっ!!!」
グリーンが言ってる事も、分かってる。何でこんな事しなくちゃいけないのか…すべては父が仕向けたことだから。だから、私も手を出せない。でも、グリーンはそういいながら、ポケモンを出してくれた。
フシギバナをボールから出した。彼女の微笑む笑顔は見たくない。悲しいから。苦しくなるから。胸が締め付けられるぐらい、悲しい言葉に聞こえて仕方がないんだ。だから、ここで、決着をつける。ファイアは、カメックスを出していた。リーフはリザードン。サカキはニドキングを出していた。タッグバトルが始まる。徹底的に、サカキを潰す。許さない。その、殺気をグリーンはサカキに向けていた。ファイアはただ、悲しい瞳。赤く燃えるような瞳をリーフに向けていた。まるで、無口の昔に戻ったような感じに。
「思い出してよ…昔の事…。カメックス…」
リーフに囁きかけるかのように、ファイアは言う。そして、カメックスの名前を言った瞬間、一度、閉じた瞳を開いて叫んだ。
「ハイドロポンプっ!!!」
リザードンに目掛けて水の放射が飛んでくる。リーフはリザードンの背中に乗ってリザードンに空を飛ぶよう指示した。天井は破壊され、シルフカンパニーの上からは、街の夜の風景が見えた。
「予想済みだっ!方向を上に変えろ!カメックス!」
聞いたことがないファイアの声。怒ってるの?それとも、どういう意味なの?教えてよ、ファイア。
「リーフ、帰ってこいっ!!」
優しい言葉。だけど、そんな言葉じゃ私は帰らないわ。ねぇ、もっと言ってよ。帰らせてくれるような言葉をっ!!そして、私は叫んだ。
「私は…帰らないっ!!」
「なんだとっ!?」
驚きの声がマサラタウンの人とグリーンの声、そしてファイアから発せられた。まるで、絶望をこの目で見たかのように。何をお前の運命を変えたのか?いいや。もう、変えられていたんだ。サカキによって!グリーン…頼んだ。サカキを倒せ。俺は、リーフと戦う。これは、決められてしまった運命なんだから。
「あぁ…そうか…お前はこのまま一生道具として…」
「聞きたくないわよそんな言葉っ!…火炎放射っ!」
「くっ…もう一発ハイドロポンプ!……生きるのかよっ!?」
叫ぶ言葉。聞きたくない言葉。思いを全部言葉に出して。
「えぇ、そうよ!逃げられないのなら、このまま一生!…もう、会いたくないのよ!居たら、自分が傷つく!苦しむのよ!リザードン、これで終わりにするわよ!」
やっと、分かったよ。彼女から発せられた言葉によって。
「………」
カメックスはぴたりと止まった。もちろん、ファイアも。リーフはハッとして、叫んだ。
「そんな目で…見つめないでよ!いや…嫌…もう、やめて…もう…嫌…嫌…」
「指示もしなくなった今がチャンスじゃ!」
オーキド博士の声が聞こえた。ファイアは片方の腕をスッと上げて、カメックスに指示をだした。
「これで終わりにするよリーフ、だから、安心して…。…アクアテール!」
リザードンだけを吹き飛ばし、空中で舞うリーフをファイアは両腕でキャッチをした。ファイアの腕の中で抱かれるリーフは意識を無くしていた。微笑むファイア。リザードンをボールの中に戻し、グリーンの戦いを見つめた。そして、カメックスに言った。
「手伝ってあげて、カメックス」
その言葉と同時に博士からもらったストーンが突然、輝き始めた。
「な、なんだ?」
「あれは…」
両腕がふさがってよく見えない。だけど、カメックスの姿が変わるのはわかった。牢屋にいるシトロンがメガネを少し上に動かした後、ユリーカと同時に叫んだ。
「「あれは…メガ進化!!!」」
特性や進化を越えた事をシトロンはマサラタウンの人達に言う。
何とか、サカキのポケモンを倒す。ぐらぐらと揺れる廃墟と化したシルフカンパニー。街の人達を救助してシルフカンパニーから出る。サカキがどうなったかファイアは振り向いたが、その場にはもう居なかった。
ファイア、グリーンはヤマブキシティのポケモンセンターへ行き、彼女の治療をジョーイさんに頼んだのであった。
彼女を助けて二週間がたった。二人は二週間何も話さなかった。話したい気分には、なれない。
目を覚ますと、白い天井が最初に目に飛び込んで来た。上半身を起こして、左に向くと、ファイアが寝ていた。左手を握られている。
「……ん?」
「気が付いたのか」
目を開けて、顔をあげるファイア。ノックする音が鳴り、入ってきたのはグリーン。三人は何も答えない。少しだけ、沈黙が続いた。すると、ファイアとグリーンが同時に口を開いて言った。
「「お帰り」」
彼女は嬉しくないような顔をしていた。
複雑な思いを今、抱いている。
ただいまと言うべきなのか。
二度と会わない事の意味を込めて、サヨナラと言うべきなのか。
偽りの言葉を言った。
「ただいま」
と。
二人は私の姿を見て、その言葉を聞いて、いきなり抱き付いてきた。
「ずっと、会いたかった…迎えに行くのが、遅くなってごめん…ごめん!」
二人は、泣いている。すすり泣く声が。ただ、私の戻るべき場所は、ここじゃない。
また、二人を悲しませる事は分かっている。最初から分かっていた。
父から逃れられないことを。
何処へ逃げても、何処へ向かっても。
悪夢は終わりを告げさせてくれない。
ごめんなさい…。
「少し、一人にしてくれる?」
二人にそう言うと、涙を拭いて頷き、席を外してくれた。二人が居なくなり、足音も遠くなる事を確認して、回復装置が置かれて居る窓側へ向かう。
「体調は大丈夫そうね、リザードン」
着替えずに一つのボールを手に取りそう彼に言った。
『…ああ』
掠れるような声で彼は言った。手持ち六ぴきをポケットに入れ、病室の窓を開けた。リザードンをボールから出し、背中にのってサカキの元へと向かう。
ジョーイさんが慌てている事に気がついた二人がリーフが居ないことに気がつくまでにそう時間はかからなかった。
「あのバカリーフっ!!」
グリーンは彼女への怒りと、自分がなぜ気づかなかったのかという自分への怒りをも含んだ言葉を発した。ファイアは少し、頭を捻った。
三つの街に、ロケット団員がいた。その二つは俺たちが阻止した。つまり、ひとつだけ残っている街。一度だけ訪ねて、誰も人が居ない…そう考え、ロケット団アジトに落ちていた、アイテムをバックから取り出す。シルクスコープ。幽霊や正体が不明なものを見えるようにする、シルフカンパニーが開発したアイテム。グリーンはああ、と思い出したのか、シオンタウンと名を言った。ファイアは頷き、ジョーイさんにお礼を言い、すぐさま、リーフが向かったであろうシオンタウンへと向かった。
「………お帰り、リーフ。帰ってくると思っていたよ」
聞き覚えのある声。顔を上げると、右胸にはRの文字が。
「さぁ、このポケモンを君に…あの二人の元には帰らないんだろ?」
大きく上下にうなずく。そして、ポケモンが入ったモンスターボールを受け取る。サカキの後ろには、おじいさんが汗を流して私を見つめている。
「サカキ様」
「どうしたんだね、リーフ」
「ここは、私が」
私は言った。
「いいだろう。なら、私は先に帰ってる事にするよ」
そういって、彼は歩き出した。サカキが階段を下りた後、私はもらったモンスターボールを握りしめる。リーフは小さな声でバカと言った。諦めが悪い二人に言った。
シオンタウンへとついた二人は、ポケモンタワーへと入って、全速力で階段をかけ上がる。
「リーフ!」
グリーンが彼女の名を叫ぶ。
「………グリーン、悲しい思いさせて、ごめんね」
突然、リーフが口を開いて謝りだした。
「ファイアとグリーンは何も知らない。知らなくていいことなの。だから、目を瞑って?」
「そんな事、出来ないよ。たとえリーフが言っても、俺達は目を瞑らない」
「そう…なら、消えてよ」
彼女は彼らに言ったのと、同時にポケモンを出した。
「何だあれ…あれは、ポケモンか?」
グリーンが言うと、リーフが言った。
「DNAポケモン。デオキシス…これが最後よ、マサラタウンに帰って」
「リーフ!!」
グリーンが彼女の名前を叫ぶ。ファイアはグリーンの顔を見た後、ポケモンを出して言った。
「無駄だよ。今の彼女は本気だ。だから、何を言っても無理だと俺は、思う。だからポケモンを出して、グリーン。ほら、見てよ彼女の目、前とは違うよ。悲しい目じゃなくて、本気の目だ」
「………ばっかやろうが!!!」
グリーンは叫ぶ。そして、フシギバナを出した。ファイアはカメックスを出して、リーフを見つめる。
「何をそんなに、君を縛る?」
ファイアはリーフに問いかけた。
「何も、縛ってないわ。デオキシス、サイコブースト」
「嘘ついちゃ、だめだよ。カメックス」
「チッ…フシギバナ!」
「「守る!!」」
二人は同時に、守るの指示を二匹のポケモンに言った。デオキシスはアタックフォルムだと言う事を図鑑をチラ見して、分かった。デオキシスは、丸い水晶の真ん中に手を手前に持っていき、技を溜め始めフシギバナ、カメックス目掛けて色とりどりの波動を撃つ。
「……!なんて力だ!。カメックス!持ちこたえて!」
「フシギバナ!持ちこたえろ!」
だが、守るをしていても、力が強すぎて、持ちこたえられない。二匹は吹き飛ばされる。吹き飛ばされた二匹に、二人も吹き飛ばされる。
「ゲンガーっ!!カメックスとフシギバナのモンスターボールを取って!」
モンスターボールから出しておいたゲンガーは二人のポケットからカメックスとフシギバナのモンスターボールを念力で取った。
会いたくない。会えば会うほど、傷つけて貴方達の命が、消えそうで。嫌だから。もし、本当に覚悟があるのなら…この思いを解き放って。解放して。だから、待ってる。その間までは、
「さようなら」
目の前が真っ暗で何も見えない。グリーン…カメックス…リーフ…。リーフの後ろ姿が見える。俺を見向きもせず、歩いていく姿が。ゆっくりと目を開けると誰かの声が聞こえる。誰かの姿が見える。温かい何かを感じる。俺の、名前を呼んでいる。お母さん?目を開けると、真っ白い天井が見えた。
「うっ……」
声を出した。苦しい。痛みがズキズキする。
「ファイアっ!!」
涙が頬へ落ちてきた。お母さんが叫んでる。傷だらけな俺と無傷な母親。だけど、心は俺と同じ。ズタズタだと、思う。苦しいはずだ、俺と同じで。悲しいはずだ。だけど、俺はリーフを取り戻すまでは、諦めたくない。必ず、助けると誓ったんだ。だから、ここで倒れてるわけにはいかないんだ。動いてくれ、動かないといけないんだ。
「お母さん…俺、俺はリーフを取り戻したい…だから、止めないで」
とっさにこの言葉が出た。お母さんは涙を流している。あふれ出てくる涙がお母さんを苦しめる。体を起こして、お母さんを見つめる。体中痛いけど、そうは言ってられない。
「あとで、謝るから…今は行かせて欲しいんだ」
こんなに傷ついて、倒れて、幼馴染を助けようとしている息子の姿を見て、心臓が破裂しそうなことぐらいは、痛いぐらい、分かる。
でも、俺より苦しんでるのはリーフだと、思う。
「……」
泣いてるだけで、なにも言わないお母さんをベッドから起き上がり、抱き締めた。
「ごめん…母さん」
そう言い、服を着て、グリーンに会いに行った。
グリーンと合流して、リーフを探し回った。
ナナシマの6の島にいた彼女を見つけて、声をかけた。
「どうして…居なくなったの?」
「……」
俯いたまま、水をただ見つめている彼女はなにも答えない。服装はあの時と同じ格好。連れ去られるまえの格好。
「怖かったの…」
あふれでる涙は水辺に落ち、波紋を出す。
「もう…分かんない…色んな気持ちが混ざりあってどれが本当の気持ちか、嬉しい気持ちじゃなくて、悲しい気持ちばかりが込み上げてくるの…苦しいの…辛いの…二人と一緒に旅がしたかったっ!!」
でもそれは父がしたこと。洗いざらい今の気持ちを吐き出した。父を憎んでいる気持ちも、確かにある。どうしてあんなことをしたのかと。今の父に言っても、可笑しな事ばかり発言していたのは覚えている。
今は、父の事を忘れたい。憎しみだけを残していればいい。それがいずれ力になるから。
二人は寄り添い言葉を交わすことなく、ただただ一緒に居てくれた。
私が泣き止むのを待ってくれていた。
「マサラタウンに……帰りたい」
六の島から故郷マサラタウンへと空を飛び、戻ってきた。
「おかえり、リーフ」
街の人はリーフに気づき、真っ先にその言葉を言ってくれた。
「帰って来るの、待ってたよリーフ。おかえり」
次第に、彼女の表情は崩れ去り、泣きじゃくった。
故郷に帰って来てかれこれ数日たった。父は行方知れずだが、決着をつける事を考えながら、一人食事を取っていた。
「リーフ、これからのこと何だけど…俺らと一緒に旅をしないか」
食事を終えて、食器を洗い一人ポツンとリビングの窓を眺めながらボーッとしていると外からファイアに言われた。
「うん、行こ。ずっと、待ってたこの日を。待ちわびてた」
リーフの言葉を聞いて、ファイアはニッコリと微笑んだ。グリーンとも合流。リーフのジムバッジ、自分達のジムバッジを集める。そして八個目のバッジがある、トキワシティへと戻ってきた。仕掛けを進み、その先に待って居たのはロケット団のボス、サカキだった。
「サカキっ!」
待っていたよ、というような表情だけで無言だった。
「あの時とは違う。歴としたジム戦…さぁ、始めましょう…ファイア、グリーン」
シルフカンパニーで戦った時と同じ。だが彼女の言うとおり今は、ジム戦。最後のジムリーダーはサカキという事に驚きだったが自分達の実力を、ジムリーダーとしての職業で今、目の前にいるサカキ達を倒す。倒して、ポケモンリーグへと向かう。
「行くよ、ピカチュウ」
「行くぜ…ゴルダック」
互いにポケモンを出し、勝負をした。
そして、最後のバッジを手に入れた三人は、ポケモンリーグへと足を踏み入れた。
キクコおばあさんの話によると、父はジョウト地方にいるらしい。
父にあって、話をするために先へ進む。
チャンピオンの椅子に座っていたのは、レッドさんだった。トリプルバトルを行い。なんとかギリギリ勝利した三人。奥の部屋へと向かい、旅で一緒に戦ったパートナー達を写真に納めた。
そしてチャンピオンになって二ヶ月後……
ポッポ達が鳴いている。朝が来たようだ。目をゆっくり開けると、そこには小さい頃の私たちが私の顔を除いているように見えた。視界がちゃんとしてくると、ファイアとグリーンがの私の顔を除いていた。
ここは、私たちが遊んだ小さな小屋。小屋の隣には小さな泉などができていた。体を起こして、ファイアとグリーンに言った。
「……帰ってきたんだね、ここに」
そう、俺達は帰ってきたんだ。チャンピオンのレッドさんを倒して、殿堂入りの装置において、俺達の旅が記録された。色褪せない記憶となって。博士はずっと泣いてたっけあの時。
「五年前の事と比べると、皆変わったよね。性格も」
リーフはクスッと笑うとそういった。俺達も昔の事を思い出す。喧嘩したり、一緒に泣いたり。笑ったり。
「………本当は、一緒に最初の一歩を共に歩みたかった。けど、それは叶わなかったけど、助けに来てくれた時は本当に、嬉しかった。ありがとう、ファイア、グリーン」
満遍なく笑みをファイアとグリーンに向けると、二人は頬を赤く染めた。そういえば、いつの日か知らないけど、笑顔が作れるようになった。今日からまた、新しい未来を切り開くんだ。私と、彼ら二人で。
その日の夜、ベッドで寝転がって、手を上に上げてボーッとしていた。
父を探す手がかりを見つけるために考えていた。
暗闇に灯る光 総集編2へ続く……