リソウのセカイ
ガイアと呼ばれるポケモンだけが住む世界で起こった、世界の混乱。
ここにひとつの記録として、残して置こうか……。
さぁ、もっと見せておくれ、君が望む理想の世界を。
「おはよう、アリア」
ヤミカラスのオールドは部屋から出てきた、イーブイの彼女に挨拶をした。机のはしっこに止まっているオールドを見つけたアリアはオールドを見る。
「ああ…オールド、おはよう。皆はどうしたの?」
自身の翼の手入れをしているオールドは、アリアの話を聞きながら嘴で入らない羽を摘まんでは床に美しい、羽を落としている。机にも、羽が落ちているが、アリアは見向きもしない。
「皆は、街を見回って、るよ」
嘴で羽を落としているためか、言葉は途中で止まりながらも教えてくれた。
「そう、教えてくれてありがとう」
ふっと笑って、お礼を言うとオールドは両翼の手入れが終わり、アリアの顔を見つめて言った。
「目元、クマが出来てるが…またあの夢か?」
「…そうだけど」
ため息混じりにアリアは答えた。
「もう、関係ないことよ。作り替えたんだから」
机の真ん中に置かれている花瓶を見つめてアリアは言う。
「前の世界を取り戻す反逆者が現れたら、見つけて潰すのみなんだから。どれだけ抗ったって無駄」
オールドは悲しみの表情をしているアリアを見つめて、言った。
「オレ達が望んだ世界を潰すヤツは殺せばいいんだからな」
はははっとオールドは笑う。
「外の空気、吸ってくる」
そうアリアは言い、オールドとは別れた。どんよりとした屋敷から出たアリアは外の、清みきった空気に大きく手を広げた。
「あ、アリア!」
ビニール袋をサイコキネシスで浮かせて戻ってきたエーフィのジンはアリアを見て、走ってきた。
「ジン…何か買い物してきたの?袋、持ってるけど」
ニコニコとしているジンは耳打ちしてきた。
「みんながそろったら見せてあげる」
それじゃ、といいジンは屋敷へと戻っていく。
先程の袋に書かれていたロゴは見覚えのある場所だ。過去に、私を捨てた家族が経営している、ケーキ屋。
見たくもなかった家族が経営しているケーキ屋。ギリッと奥歯を鳴らした。思い出す。
入らない、といい放った母親は、私を捨て父と兄と姉を連れて家を離れた。
いい子にしていた自分を捨てて、何処かへと姿を消した。探し求め見つけた場所で見たのは、自分の存在が居なかったかのように、家族は仲良く暮らしていた前のセカイ。
「いままで…」
ポツリと呟いた言葉。今は自分達以外ガイアに住んでいた全てのポケモンの記憶を消して、作り替えた新しい世界。出来るのであれば自分達の過去の記憶も消してしまいたかった。
「…っ!マリーとアングレ…お帰りなさい」
ハッとうつ向いていた顔を上げるとマリーのキルリアとアングレのマニューラが立っていた。
「外の空気、吸ってたの?アリア」
マリーが言うと、アリアは頷いた。マリーに先に行けとアングレが言うとマリーは、はや歩きで屋敷の中へと入っていく。
「また、あの夢か?」
アングレが近づき、そっと抱き上げた。
「……うん」
アングレがいると安心する。
「俺たちを見かけると皆、笑顔をして挨拶してくれる。俺たちが望んでた世界だ」
そう、作った。彼が言うように。前のセカイは、自分達は不必要とされていたセカイだった。回りからは嫌な目で見られて、罵声も浴びせられ、戻ってきても、笑顔で迎えてくれる家族も居ない。みな、見捨てられた者達が作り替えた世界。
それが、ガイア。
自分達皆、幸せな世界を満喫していた。