秘密の鍵を求めて 後編
アルセウスと呟いたチコリータは大水晶で起こったことを話し始めた。
「私、大水晶にビッパとペラップと一緒に向かったら、アルセウスがそこにいたの…。戦ったら負けちゃったけど…悲しそうな顔してたし、怒ってる顔もしてた。きっと、いろんなポケモンの感情が混じっちゃってたんだと思うけど…私…どうしていいのか、わからなくて……」
チコリータは涙を流して話した。涙は頬をつたっていき、ヒトカゲの頬に堕ちていった。
チコリータ…お前、泣いてるのか?夢が怖くて、アルセウスにどうしていいか分からなくて…でも、お前なら答えを見つけられるよな?俺は知ってる。だから、俺が居ても居なくても一人でやっていける。でも俺は、あいつにやられた仮を今度は俺とチコリータでやりたいんだ。だから…ここで立ち止まってたら、チコリータが泣いちまう。少しでいいから、時間をくれ…頼む!
ぐっと拳を握りしめ、ゆっくりと目を開ける。目を覚ましても、チコリータは泣いている。頬に伝わる温かい涙。
「チコリータ……」
「!…ヒトカゲ…っ…バカァ…心配したんだから…」
チコリータの顔は涙でくしゃくしゃになっていた。他のポケモンもみんなヒトカゲに気づき、目線をヒトカゲに向ける。
ギルドの皆やジュプトル、ヨノワール、セレビィも一斉に彼の名前を呼んだ。
「心配かけて…ごめん皆」
ゆっくりと立ち上がり、謝った。背中の傷が少々痛むが、そんなことは言ってられない。
「グへヘ、ほらよ」
そう言って、グレッグルが投げて来たのは、赤いマントだった。
「そのマントはお前の傷を隠すのと、フレイムバングルと同じ効果を持つものだ。この数日の間に作って置いたんだ。感謝しろよ、グヘヘへ」
「っ…ありがとう!グレッグル」
少し涙を浮かべながらも、ヒトカゲはグレッグルに感謝の気持ちを込めた。フード付きで探検隊バッジでマントを止めることが出来る。背中の傷跡は一生治らないが、ヤツとの戦った、最後の戦いでもあるという証。マントを付け、首元に黒く光る探検隊バッジを取り付けた。
「なかなか似合ってるじゃないか、ヒトカゲ」
ジュプトルが言うと、ヒトカゲは照れてくさそうにしている。
「ふふっ…あ、はいどうぞ」
セレビィが微笑んでいると、思い出したかのようにヒトカゲに手に持っていた闇の歯車を手渡した。
「闇の歯車…ありがとう…ていえばいいのかな?良く分からないけど…話は、なんとなくだけど…聞いてたよ」
ジュプトルがなるほどというと、言った。
「俺と、セレビィとヨノワールであいつを倒したいんだ…だから行かせてくれないか?」
「場所は知ってるからね」
ジュプトルが言うと、セレビィが言った。ヒトカゲは首を振った。
「ダメだ…あいつは戦ったけど、強すぎる」
「ふっ…俺達だけじゃない。ヒトカゲ、チコリータ、付いてきてくれるか?お前たちの力も貸してほしいんだ」
突然の言葉にヒトカゲは驚いた。
「えっ……」
セレビィが微笑んでヒトカゲの手をもっていった。
「ふふっ、世界を救った者同士で、アルセウスを助けてあげましょ?そのためには、アナタを元に戻したから、みんな疲れちゃってるの、だから、しばらくしてから助けに行きましょ?」
「あ…うん…わかった。親方様、しばらくまた、お世話になっていいですか?」
ヒトカゲが言うと、プクリンは笑顔になり、こう言った。
「もちろん!!」
チコリータ達は笑顔になり、顔を見合わせていった。
「ありがとう!親方様!!」
「しばらく世話になる」
「ギルドの皆さん、私はジュプトルと旅したので、皆をだますことは、もう御座いません。その代わりダークライの話…聞かせていただけないでしょうか?。未来で起こったこともはなしますから」
ギルドの皆はヨノワールの話を聞いて、プクリンを見つめる。チコリータが言った。
「皆、大丈夫だよ。ヒトカゲが眠ってる時も、普通に話してたじゃない?いつも通りでいいんだよ」
そう言われると、ビッパがヨノワールに近づき言った。
「未来の話、効かせてくださいでゲス!未来で起こったことを聞けば、これからどうすればいいのかも、分かるかもしれないでゲスからね!」
「ええ、そうですね。ビッパさん、成長しましたね…あれから何カ月もたったから…なのかな?」
ヨノワールが言うと、ビッパが答えた。
「ヒトカゲ達にも負けてられないでゲスからね!」
そういうとヒトカゲとチコリータは照れていた。ギルドの皆もヒトカゲ達には負けられないと言って皆で明るい話題を作って世界をもっと平和にするぞと意気込んでいる。
「ヒトカゲ、後で話があるんだが、いいか?」
ギルドの皆とチコリータはワイワイしているがヒトカゲが微笑んでいると、ジュプトルが隣にやって来てそう言った。
「あ、ああ…構わないが…」
「よぉーし!アルセウス、助けるぞ―!」
「ああ、場所は運命の塔だって、ジュプトルが言ってたぞ。彼らは、交差点でまってる、さぁ、行こう!」
朝早くに起きて、準備をした彼らは、ギルドを出て、ジュプトル達と一緒に運命の塔へと昇り始めた。運命の塔を登りながらヒトカゲは昨日の夜言われたことをチコリータに言おうかどうか悩んだあげく、結局言わなかった。言っても、言わなくても彼女は一人でやっていけると分かっていたから。闇の歯車を首にかけていたため、握りしめ、力を開放してジュプトルも、セレビィもヨノワールも戦っている。もちろん自分も。最上階まで登りつめるため、頑張っている。そして、最上階まで上り詰めると、以前見たアルセウスの像が粉々に砕け散っていた。
もがき苦しむアルセウスが目の前にはいた。
「アルセウス!」
ヒトカゲが叫ぶがアルセウスは苦しんでいた。
「俺やヨノワールが操ったのもあいつだ。最初は自我を保っていたが、最終手に気にはディアルガと同じになったか…あいつを止めるぞ!」
「ああ!」
ヒトカゲ達は一斉に声を出し、闇の歯車を持った者は力を開放し、セレビィとチコリータは援護に回る。
「リーフストームッ!!」
無数の葉っぱをアルセウスに浴びさせるが、反撃され、吹き飛ばされる。
「ぐあっ!」
「危ない!」
マントを羽織ったヒトカゲがジュプトルを空中で掴み、地面へと着地する。
「合体技行くぞ!ヒトカゲ!」
「え、そんなもの作りましたっけ?まぁ…いいや!火炎放射!」
ヨノワールの突然の言葉に戸惑いながらもヒトカゲは火炎放射をアルセウスに打ち込んだ。
「シャドーボール!」
燃え盛る炎と黒い玉が合体し、黒い炎と化した火炎放射はアルセウスへと攻撃される。
「なるほどねぇ…ゴースト技は効かないけど、合体させて、効くようにしてるのか…」
援護しているセレビィが分析をしながらも、サイコキネシスを放つ。
「!大地の力だ!飛べ!チコリータ!ヒトカゲ!」
ジュプトルが回りの柱を自身の葉っぱで切り裂き、足場を作り、上から攻撃を仕掛けろという合図だった。
「行くよ!チコリータ!!」
「うん!!」
地面はえぐれ、足場がぐらぐらになったが、ヨノワールとセレビィは飛んでいるため、効かない。
「ぐっ…」
足を少し痛めたが、ュプトルはエナジーボールをアルセウスの足に放ち、足場を崩した。
「大ぃ…文字ぃいいいい!!!!」
力いっぱい空気を吸い、アルセウスに放つ。業火に焼かれるアルセウスは苦しむが、チコリータは手を緩めることはしなかった。
「ソーラービーム!!!」
日差しが強くなっている今、皆の想いを込めて、アルセウスに放つ。二人はえぐれた地面にシュタッと着地をした。
「まだ終わっちゃいない!一気に畳みかけるぞ!」
「うん!」
チコリータ達がジュプトルの言葉に返事をし、攻撃を仕掛ける。
「もう一発、お見舞いしてやる!大文字!!!」
「リーフブレード!……何っ!?」
アルセウスが突如姿を消し、大文字は壁に当たり、消えた。ジュプトルは足を止めた。
「シャドーダイブか…っ厄介な技を」
ヨノワールがつぶやいた。
「っ!!ヨノワールさん危ない!!」
「なんだと!?」
セレビィはヨノワールをかばい、地面へ叩き落される。
「うっ…あ」
「セレビィっ!!」
ジュプトルが駆け寄り、セレビィを抱き上げる。
「今まで戦って来た奴より…はるかに上だ…」
ヒトカゲがつぶやいた。
「うん…そうだね。でも、私達は負けないんだから!!」
もう、どれくらい戦っただろうか。分からないが五匹はアルセウスを止めるため、技を出し合い、アルセウスも反撃してくる。もうアイテムがない。その時、ディアルガの声が聞こえた。
「聞こえるか?ヒトカゲ」
「この声は…ディアルガ!?」
「奴を、時の咆哮で仕留める。ヤツの後ろには時空ホールがある。ヤツを仕留めたら、お前たちは未来に帰るんだ」
突然の言葉にチコリータは驚いたが、目の前にいるアルセウスを見つめたまま、戦闘態勢になっている。技のヒットポイントももうない。
「時の咆哮!!」
近くでディアルガの技を叫ぶ声が聞こえた。後ろを振り向くと、ディアルガが居た。
「ディアルガ様!!」
ヨノワールは彼の名前を言った。
「ぐ……おぉおお…」
アルセウスは倒れ、地面は煙に包まれる。
「時空ホールは開けてある。未来に帰るんだろ?」
また、あの言葉だ。帰る。
「チコリータ…言えなくてごめんな…」
チコリータの目を見つめて、ヒトカゲは悲しそうな顔をした。ジュプトルは復活の種をアルセウスの口の中にいれ、アルセウスを復活させ。アルセウスの暴走も止まり、アルセウスを起き上がらせた。
「チコリータ…俺達は未来に帰らなくちゃいけない。過去の世界に未来のポケモン達が居たらおかしいだろ?まだ、未来の世界は太陽が昇っただけだ。これから、よくしてかなきゃいけない。だから、俺もジュプトル達に手を貸さなきゃいけないんだ」
「え…うんん…違う…ありがとう、ヒトカゲ。私は、アナタに出会えたお陰でここまで個強くなれた!未来を良くしていかなきゃいけないのは…私達の方だよ…ありがとう…ヒトカゲ…私達は離れていても、ずっとずっと…友達だよ!!」
泣きながらも、チコリータは黒く輝いた探検隊バッジをびしっと前に突き出して、笑った。ヒトカゲも、探検隊バッジを見る。チコリータは叫んだ。叫んだのと同時に、ジュプトル、セレビィ、ヨノワール、ヒトカゲは未来へと帰っていった。その場にいるのは、アルセウスとディアルガと、自分だけ。アルセウスは黙ったまま、彼女を見つめている。そして口を開いた。
「私の暴走を止めてくれてありがとう。またいつか、必ず会えることを信じて…」
「うん…信じてる。ずっと、ずっと。ディアルガも、助けてくれてありがとう」
「あ、ああ…私はもう帰るぞ。アルセウスは、ここにずっといるんだろ?」
ディアルガの質問にアルセウスは黙ったまま頷く。ディアルガは帰り、アルセウスは姿を消した。残ったのはただ一人。顔を上げ、彼女は言った。
「ありがとう、ヒトカゲ!!あなたの事が…大好きなのは…ずっとずっと…変わらないから…私も、私達ももっともっと、強くなって、未来を今みたいにしていくんだ…必ず!」
チコリータは涙をふき取り、そう心に刻み込んだ。未来へ帰っていったヒトカゲの為にも、ジュプトル達未来のポケモンの為にも、前に。そして
強く生きるために―