秘密の鍵を求めて 中編
「はぁ…っはぁ…待ってろ、チコリータ今行く!ビッパ、ペラップっ!今行くからなっ!」
水晶の洞窟を進みながら、そう言ったヒトカゲ。と、言ったものの腕に巻いているのはフレイムバングルのみ。それでも行かなきゃならない理由は最初っからある。水晶の洞窟奥地まで行くと、以前開けた大水晶への道があった。ダンジョン内で拾ったアイテムを駆使しながら、そのまま大水晶への道へと進んだ。
ダンジョン内のポケモンを倒しながら階段を目指す。青から赤に変わった水晶を見つめながらも奥へと目指す。
一番奥地へ進むといきなり地響きが起きた。氷柱状になっている小さいながらもとがっている水晶が地響きで落ちてきてる。地響きが鳴り終わると、一歩ずつ足を動かし、島の中央部が見える場所まで歩く。一番奥に、誰か傷ついて倒れているポケモンの姿があった。だが一番の驚きは、ここからでもはっきり見えるポケモンの姿。アルセウスの後ろ姿が見えた。中央部まで進むとチコリータ、ジュプトル、ヨノワールが傷ついて倒れていた。見にくいがビッパとペラップも倒れていた。ペラップはビッパをかばい、倒れている。
大きな体がこちらへ動いた。俺を見下すような顔をしてこちらを見つめていた。
ぎりっと歯を鳴らし、火炎放射をアルセウスにはなった。
「火炎放射っ!!」
すっと、何かが、アルセウスを盾にしたポケモンが居た。焼け付いたポケモン。炎を出すのをやめると、苦しそうな顔をして地面へ倒れ込むポケモン。アグノムだった。アルセウスの影に隠れていたのか…でもそうだとしても、俺が攻撃して、倒したことになる。
「そんな…俺…が……アグノムを……うぐっ!?」
急に吹き飛ばされ、宙に舞い、地面へと叩き落された。
「うっ…げほっ…げほっ…」
咳をして、口から血を吐き出した。地面が少し血に染まる。すそで血をふき取り考えた。
(少しでも、チコリータの所に行って、通信玉を使って…この状況を親方様に知らせなきゃ……だが、本当に、あの場所まで行けるのか?今の攻撃を食らって、相当なダメージを追った、この俺に……)
汗をたらりと流し、アルセウスを見つめる。アルセウスは顔を上に上げ、技を繰り出した。
「流星群!!」
アルセウスが技を言い、大水晶の奥地に隕石が降りかかる。それを見計らって、中央部まで走るヒトカゲ。
「うぉおおおおおっ!!」
中央部まで走り、チコリータが付けているトレジャーバックの中にある、通信玉を取り出し、切り替えをオフからオンにしたが、流星群を背中に直で受けてしまう。
「ぐあああっ!」
チコリータをかばうように、俺は意識を失いかけた。
「大水晶……に……アルセウ……ス…が」
このことだけを伝え、頃がって、湖の近くで止まった通信玉を持っているプクリンへと伝え、そのまま意識を失った。先ほどの流星群の攻撃で、地面がえぐれ、水が顔を出した。水晶の破片で、通信玉の機能は失われ、あまり声は聞こえず、心配したプクリンは、ギルド内で、叫ぶ。
「ヒトカゲ!?大丈夫かい!?ヒトカゲ!!」
雑音しか聞こえず、自分の部屋を出て、ギルド内に居るメンバー全員に伝えた。
「皆、今すぐ大水晶に行くよ!何か起こってる!!」
「はい!!」
残っているメンバーのディグダ、チリーン、グレッグル、プクリンの四匹で大水晶へ向かう事にした。チリーンが準備をしていると、プクリンが持っている通信玉には雑音しかなく、アルセウスと呟いたヒトカゲも返事はない。
「急いでいかないと…」
そう呟きながらも、チリーンに通信玉を渡しトレジャーバックに入れた。
大水晶へたどり着くと、中央部が破壊されて穴が開いていた。プクリン達が走ると、みなかなりの傷を負っていた。ジュプトル、ヨノワール、ビッパ、ペラップ、チコリータ、ヒトカゲ、アグノムが倒れていた。すぐさま、あなぬけの玉を使い、救助をする。ギルドに戻り、皆それぞれ看病をする。一番傷がひどいのはヒトカゲだった。背中の傷が中々癒えない。薬を塗っての、一向に治らないような…何か特別な力が働いているのかもしれないと、プクリンは思った。他の熱水の洞窟、北の砂漠、に向かっていた、キマワリ、ドゴーム、ダグトリオ、ヘイガ二も戻って来て、手当をしているメンバーの手伝いをしたりして、一日は大慌てになっていた。買い物で足りない傷をいやすための、買い物をしたりしていたのだった。
「う、う〜ん…こ、ここは…?」
目を覚ますとそこは見慣れない場所だった。
「あ、目が覚めたんですね!良かった…心配してたんですよ、ジュプトルさん」
隣にいたのは、セレビィだった。心配した顔をしたまま、セレビィは続けた。
「ここは、プクリンギルドのようです。私も、キザキの森で倒れていた所、ヒトカゲに助けて貰って…でも、ヒトカゲは…」
優しく答えたあとセレビィは、俯き始めた。
「ヒトカゲが…どうしたんだ…セレビィ」
「そ、それが……」
答えずらい言葉を返されたジュプトルは、立ち上がり、とりあえずはギルドの中を案内してくれと、セレビィに言った。
「分かりました…」
そう言ってセレビィは、ビッパとヘイガ二、ドゴームが眠っていた部屋を出て、廊下を渡り、ギルド地下二階へとやって来た。そこにいたのはギルドのポケモン達や、ユクシー、エムリット、アグノムそして、ヨノワールだった。
「目を覚ましたのか、ジュプトル。セレビィ、ヒトカゲの所に行って、チコリータの手伝いをしてあげてくれ」
「分かったわ」
「それなら、私も行きますわ」
ヨノワールの言葉に返事をするとギルドの弟子の一匹、キマワリがセレビィと共に、チコリータのいる部屋へと向かった。
「先に目を覚ましていたのか、ヨノワール。それと、ヒトカゲがどうしたんだ?セレビィも答えてくれやしない」
その質問に容赦なく、返した。
「ヒトカゲは、生死をさまよっている」
「なっ…!?」
ジュプトルは返す言葉もなかった。
「元相棒だからな…心配するのも無理はない。だからこうして、チコリータやセレビィが傷をいやしているんだが、ここ数日全く目が覚めないらしい。私も目を覚ましたのは今日の朝だからな。運ばれて四日は立ってるらしい」
ヨノワールが話し終えると、しばしの沈黙が続いた。が、ビッパが何かに気が付いた。
「な…何でゲスか…?小刻みにギルドが……」
小刻みに震えているギルドは次第に大きな揺れへと変化していった。
「なっ…何だ!?」
「あっ…ヒトカゲさんの部屋が!」
チリーンが指を指すと、赤い光が弟子の部屋を照らしていた。
「……ヨノワール!」
「ああ…!行くぞジュプトル」
ジュプトルとヨノワールは少し迷ったがすぐさま、ヒトカゲのいる部屋へと走って行った。ギルドのポケモン達は何が何だか全く分からずにいた。しばらくすると、ギルドの揺れは収まっていき、揺れが収まるとセレビィが大慌てでギルドのポケモン達のそばへとやって来た。
「た…大変!!」
すぐさま、セレビィ達は、ヒトカゲが眠っている部屋へ向かう。
「きゃあああっ!」
「チコリータ!」
アロマセラピーで回復をしていると、突然ヒトカゲの体が赤く光、チコリータは吹き飛ばされた。吹き飛ばされたが、ジュプトルが受け止め床へとおろしてくれた。セレビィも吹き飛ばされたが、ヨノワールがやって来て、壁にはたたきつけられずには済んだ。
「あ、ありがとう…二人とも」
「それより、この力……やはり俺とセレビィ、ヨノワールと同じか…」
なにやら、良く分からない言葉をつぶやいたジュプトルに、チコリータは訳が分からなかった。突然攻撃してくるヒトカゲを見ながら、ジュプトルやヨノワールは狭い部屋で戦い始めた。
「何?ジュプトル達と同じって!?」
「セレビィ!」
チコリータの質問は聞かず、ジュプトルは彼女の名前を叫んだ。
「はい!」
そう返事をして、セレビィは、ギルドの皆に知らせに行った。すると、ジュプトルがヒトカゲの攻撃を受け流しつつ、先ほどのチコリータの質問に答えた。
「俺達の体の中に、闇の歯車があるんだ」
「や、闇の歯車って何!?聞いたことも、見た事もないよ!!」
「それは、後で説明する!今はヒトカゲを止めることに集中しろ!」
ジュプトルに言われ、チコリータは、ヒトカゲに眠り粉を巻いた。
「うっ…ぐ……俺は、お前を…倒す…」
ヒトカゲが眠りに付いたと思ったが、ヒトカゲはチコリータを見つめて、そう言った。
「嘘っ!?眠り粉が効かないなんて…」
チコリータは驚いた。ほとんどのポケモンが眠りにつくのに、と思った。
「くっ…ここじゃあ、戦いにくい…どこかで戦える場所があればいいんだが…無理か?」
ジュプトルが焦りながら言うと、ヒトカゲは、ジュプトルに目もくれず火炎放射をチコリータに向けて放った。
「危ない!」
ジュプトルはチコリータを守ったが、代わりにジュプトルが攻撃を受けてしまった。
「ご…ごめん…」
「俺は、大丈夫だ…」
チコリータが謝ると、ジュプトルは苦しそうに、そう答えた。
「ええい、世話の焼けるやつらだ!」
「す、すまない、ヨノワール」
ジュプトルが立ち上がり、ヨノワールにそういうと、ヨノワールはヒトカゲにシャドーボールを放ったが、すべて避けられ、狭い部屋から出て行った。
「っ!あっちには、セレビィが!」
「追うぞ!」
傷つきながらも後を追いかけた。ギルド地下二階へと走るヒトカゲは何か叫んでいた。後を追いかけながらも、チコリータはジュプトルに聞いた。
「ヒトカゲ…どうなっちゃうの?もう、戻らないの?私の大好きな…あの笑顔に」
「……いいや、戻して見せるさ…必ずな!」
その言葉を信じつつ、チコリータは小さく「うん」と答えた。
「うぁあああああああぁああああ!!」
苦しい悲鳴を上げるヒトカゲは、ギルドのメンバーにさえも刃を向ける。セレビィが何とか、ギルド全員を守ったが守れるのも時間の問題だと、思った。まさか、こんな力を持ってるなんて…とセレビィは汗を流しながら思った。
「イヤだ…嫌だ嫌だ嫌だああああ!」
「わわっ…なんかすごい苦しそうでゲスね…」
ビッパが驚いてそう言ったが、ドゴームに言われた。
「苦しそうなんじゃなくて、苦しいんだよ!なんだ…何か嫌がってるみたいだが…」
後ろで話している声を聴きながら、セレビィは賭けに出た。
(効くかどうか…わからないけど…描けるしかなさそうね…)
「ハァハァ…この廊下、長いっ!」
「もうすぐだ!」
チコリータが言うと、ジュプトルがそう言った。地下二階が見えるとセレビィが、ギルドのポケモンを守っていた。
「えいやぁーっ!癒しの鈴っ!!!」
セレビィが癒しの鈴を発動したが、あまり効果はないと思ったが…徐々に苦しそうな目はいつも通りの目へと戻っていった。
「チコリータ、今だ!」
ジュプトルに言われ、チコリータは頷いた。
「眠り粉!!」
ヒトカゲは眠っていき、チコリータへと寄り添っていった。
「ごめ…ん……」
小さい声で、謝って眠ってしまったヒトカゲを優しくツルで抱きしめた。
「私こそ…ごめんね…気づけなくて……」
涙声になりながらも、チコリータも眠っているヒトカゲに謝った。
「そ、それで、なんで急にヒトカゲが暴れたんだい!?」
ペラップが翼をバサバサしながら、チコリータに聞いた。
「私…わかんない…アロマセラピーでセレビィと一緒に傷をいやしてたんだけど…なんか…突然あばれだして…」
チコリータはヒトカゲを抱きしめたまま、ペラップの質問に答えた。セレビィが冷静に、彼の背中の近くに毛の中に隠されていたモノを取り出した。
「それは、これよ」
そう言って彼女が取り出したのは時の歯車と似たものだった。
「闇の歯車よ」
セレビィの口から言われた言葉。色は赤く時の歯車とは色が正反対であり、時の歯車と全く同じ形だった。
「そ、そんなもの、聞いたことがないよ!?」
ペラップがそう言った。他の、チコリータやユクシー、エムリット、アグノム、ギルドのポケモン達も頷く。
「この世界が作られたときから、合ったんだ。時の歯車は時間を止めるが、闇の歯車はポケモンの不安や悪事を働いた者達によってつくられたんだからな」
ジュプトルがそういうと、セレビィは闇の歯車を持ったまま頷いた。隣には、チコリータがヒトカゲを心配そうに見つめている。
「そう、そして闇ギルドが時の歯車と同じ形として、作り上げた。闇の歯車は、持つだけで、心が操られ、敵味方関係なく攻撃する。つまり、暴走する」
セレビィは冷静に、ジュプトルの言葉を付け足す。ギルドのポケモンや、ユクシーたちは黙ったまま聞いている。
「俺とヨノワールは操られてしまって、闇ギルドが作った歯車を盗み、暴走してしまったんだ。歯車が出来たのは、自然災害、落とし物、欲しいもの、悪事を働くものが作ったモノだ。そして、世界が狂い始めたのも、不思議のダンジョンが出来てしまったのも、多分、闇の歯車のせいだろう。俺の考えだがな…真に受けるなよ」
ジュプトルが言うと、ペラップが言った。
「じ、じゃあ…自分たちがやって来たことは…間違っていたのかい?」
「真に受けるなとさっき言ったはずだ」
ジュプトルが言うと、ギルドのポケモン達は俯いていた。
「時の歯車みたいに、数は五つなのかい?」
アグノムが口を開き、そうジュプトルに尋ねると、「ああ」と答えた。
「俺と、ヨノワール、セレビィ、ヒトカゲだからあとは一人だ」
「ええ…でも、分かるけど、強すぎるのよね…」
セレビィが言うと、チコリータが小さく呟いた。
「アルセウス………」