秘密の鍵を求めて 前編
「ハァ…ハァっ!大変でゲス〜〜!!」
サメハダー岩で休んでいたヒトカゲとチコリータはビッパの荒い息と声で入口を見つめていた。するとビッパがやって来て、もう一度同じ言葉を二人に言った。
「大変なんでゲスよっ!二人とも!!早くギルドに来てゲス!!」
二人は顔を見つめ合い、ビッパと共に、プクリンギルドへと走って向かっていく。トレジャータウンを走り、こうさてんを走り、ギルドへと向かう。
「ハァハァ…皆〜連れてきたでゲスよ〜〜(疲れたでゲス…)」
地下一階、お尋ね者の掲示板の場所では、ギルドのポケモン達ががやがやと何かを言っていた。
「どうしたんだ?ペラップ汗をだらだら流して」
ヒトカゲは顔をしかめながら、ペラップに質問をしたが、俯き始め、何も言わない。
「ま、まさか……」
チコリータが言うと、プクリンは頷いた。
「その、まさかだよ。お尋ね者の掲示板の真ん中を見てごらん、二人とも」
言われるがままに、二人は掲示板を覗いた。
「ジュ……ジュプトル!!……セレビィ!!」
ヒトカゲは驚いた。目の前で未来へと帰っていった彼と未来の世界で出会ったセレビィがなぜ、お尋ね者になっているのか。驚きを隠せずにいた。
「私達も、驚きましたわヨノワールと共に未来へ帰っていったジュプトルと未来の世界に居るセレビィがなぜ…お尋ね者になってるのか…」
キマワリが、驚いている二人に言った。
「ヘイ!唐突だったんだよ、掲示板を変える役割をしている、ダグトリオも驚いて、しばらく表へと返せなかったんだよ。このことを教えてくれたのは、トゲピーがリーダーのハッピーズだったんだが…」
その言葉で、ギルドメンバー全員がうつ向いていたが、プクリンが口を開きギルドメンバーに言った。
「皆!ジュプトルとセレビィを保護して、何が起こっているのか、皆で調べるよ!!ジュプトルとセレビィ保護にシフトするよ!!」
「おおおおおおーーーー!!!」
ギルドメンバーはジュプトルとセレビィ保護に協力すると、ヒトカゲとチコリータにプクリンは言った。悲しんでいる姿は見たくないから、と。優しく言ってくれた。これからジュプトルとセレビィ保護の作戦が始まろうとしていた。トレジャータウンを横切り、じゅうじろうから階段を上がり、プクリンギルドへとやってきた。梯を降りる。
地下二階に行きみな、あの頃の様に集まり、ジュプトルとセレビィを保護するためにペラップがプクリンからペラップに紙が渡され、皆に紙を見せてからペラップが言った。
「今から、グループを分ける。名前を呼ばれたら、言われた場所に行って捜索してくれ」
そう言ってペラップは紙を見て読みにくい文字で書かれた名前を読み上げた。
「ダクトリオとヘイガ二は熱水の洞窟に向かってくれ」
「承知した」
ダクトリオは返事をした。ヘイガ二は頷く。
「次、キマワリとトゴームは北の砂漠へ向かってくれ」
「分かりましたわー!」
「頑張ろう、キマワリ」
「あ、アナタに言われなくても分かってますわ!」
照れているキマワリを見ながら、ペラップは一度咳払いをした。
「ゴホン…次行くぞ。水晶の洞窟は私とビッパだ。最後に、親方様とヒトカゲ、チコリータはキザキの森に」
「分かった」
「まかせて!」
二人は返事をすると、ペラップは頷き、続けた。
「ほかのメンバーはギルドに残っててくれ。それじゃあ、かくじ準備をして、行くよー!」
「おーっ!」
皆は息を合わせて声を張り上げた。
トレジャータウンでしっかり準備をしてキザキの森にたどり着いた三人は、軽く頷き森の奥へと進んでいく。生い茂る草やわさわさと時間を取り戻し動いている気や葉っぱは見ていて心地よいものだった。それでも、世界を救っても狂暴なポケモンはまだまだいた。階段を目指し、階層を重ねて、何かないかと奥へとすすむ。
「うっ……」
うめき声が聞こえた。スカーフを首に巻き、スカーフの結び目部分に探検隊バッジを取り付けているヒトカゲはハッとした。この声、聞き覚えがある。透き通った声。優しい笑顔。チコリータと親方様は奥へと進もうとしていたが、木と木の間に道があった。
「待って二人とも!」
二人を呼び留め、自分のそばへと戻ってくる二人に、指を指して、道があることを確認させた。
「道…」
チコリータがつぶやいた。
「ああ。さっき、うめき声が聞こえたんだ。多分ケガしたポケモンが居るはずだ。行こう」
「うん」
チコリータは答えてヒトカゲの後ろに付いて歩く。プクリンもそのあとに続く。
「ジュプトル……さん…たす…けて…」
視界が薄くなっていく。一緒に旅をした彼の名前を呼んで。意識を無くし、数分後に彼らがやって来た。
「セレビィっ!!」
ヒトカゲはセレビィを見つけ、走った。
「あ、待ってよヒトカゲ!」
チコリータは走る。プクリンも嫌な予感がしつつもそのあとを追う。
「しっかりしろ!セレビィ!」
「セレビィ!」
チコリータもヒトカゲの隣に行き、ヒトカゲを見た後、セレビィを見つめ、彼女の名前を言った。
「気絶してるみたいだね」
ヒトカゲの右側にプクリンがやって来て、セレビィを見つめてそう答えた。
「と、とりあえず穴抜けの玉を使って、すぐにギルドに運ぼう!!」
「う、うん!」
チコリータは慌てながらも、自分がかけているトレジャーバックを自身のつるを起用に使い、穴抜けの玉を使い、ギルドへ戻っていった。
元自分達が使っていた弟子の部屋で休ませているセレビィ。状態を確認したペラップが弟子の部屋から出て来た。ギルド地下2階で皆集まっていたメンバーたちはペラップを見つめた。
「悪いが、だいぶ重症だ。話が出来る状態じゃない。詳しく、話を聞かせて貰おうじゃないか、ヒトカゲ、チコリータ」
話を聞くため、ペラップはヒトカゲとチコリータに話を聞こうとしたが、プクリンが止めた。
「ボクが話を言うよ。それでいいかい?ペラップ」
セカイイチを持ったまま、プクリンはペラップに言った。
「お、親方様…は、はい」
ギルドメンバーが話を聞こうとして全員目線はプクリンに向けられた。腕を組んでいるヒトカゲも目線をプクリンへと向けた。チコリータも、ペラップから目線をプクリンへ向け、話を聞く。
「ボク達はペラップに言われた後、準備をしてからキザキの森へと向かったんだ。それで、結構進んだかなって思ったら、ヒトカゲが呼び止めて、道があるって言ったんだ。うめき声が聞こえたんだよね?」
プクリンがヒトカゲに言うとヒトカゲは少し驚いた顔をして「ああ」と言った。そのことを確認すると、プクリンは続ける。
「ヒトカゲに付いて行くと、セレビィが気絶して倒れていたんだ。傷だらけになってね。ほかのみんなは何か見つけた?」
プクリンが言うと、皆首を左右に振った。
「…………」
ヒトカゲは顎に手を当てて考え始めた。
熱水の洞窟、北の砂漠、水晶の洞窟…どれも、時の歯車に関係する場所…そして、どの場所もユクシー、エムリット、アグノムが時の歯車を守った場所であり、それぞれ道を見つけるために必要な場所があった。考えても、今はセレビィの回復が先…か。
「?どうしたのヒトカゲ」
チコリータが気になったのか、俺を見つめて声をかけて来た。
「いや、何でもないんだ」
「後で話しない?サメハダー岩に戻って」
何か不安なことでもあるのか、そんな顔をして言っている。
「あ、ああ…分かった。それじゃあ、行ったん俺達は帰りますね」
そう言ってギルドのメンバーたちとは一度分かれた。サメハダー岩に戻って、彼女の話を聞いた。
「それで、話ってなんだ?」
サメハダ岩から海が見える。その目の前に自分の大切な相棒が涙を流して口を開いた。
「最近、嫌な夢を見るの。毎日毎日、同じ夢を何度も何度も」
「……………」
チコリータはヒトカゲを見つめたまま続ける。
「世界が壊れていく夢…これって、助言してるんじゃないか…って…セレビィだって、ジュプトルだって、ヨノワールだって…皆皆居なくなった。最後の最後に貴方が、『何か』によって、消された…そんな夢」
「………………」
ヒトカゲは考えた。原因はダークライじゃない。ヤツはパルキアによって、時空ホールごと粉々に砕け散った場面を俺やチコリータ、クレセリアやパルキアは見たのだから。じゃあ、なにが原因か、ずっと前に探検した運命の塔。そこにあった謎の像。あれがずっと引っかかっていた。半分は本当にいて、半分は本当にいない。ずっと気になっていた。そこで俺は、彼女に聞いた。
「いつからだ」
「えっ…?」
困惑する彼女にもう一度聞いた。
「最近っていつだ。いつ、悪夢を見るようになった」
「えっと……五日前…から…」
「なるほどな…俺なりに少し調べてやるよ。お前はもう休め」
そう言って、サメハダ岩から出て行こうとしたが、背中が彼女の顔を感じ取った。
「行かないで……」
涙声で俺を優しくツルで抱きしめた。
「知りたくないのか」
優しい声で俺は言葉を返した。すると、涙声から震える声で彼女は言った。
「知りたくない…知ったら、もう…」
顔をスッと上げ、ヒトカゲは背中を向けたまま彼女に言った。
「俺は…知りたい。お前を助けたいんだ、なぜ俺は見ないでお前は見るのか。知りたい。知らなきゃいけない気がするんだ。俺も、お前も」
ヒトカゲの背中から感じ取って居た彼女の顔がフッと消えた。ヒトカゲは自分を抱きしめるツルをどかし、振り返りチコリータに言った。
「でも、真実を知りたいかどうかは、チコリータ、お前しだいだ」
そう言って、ヒトカゲはサメハダ岩を出て行った。自分だけしかいなくなったサメハダ岩でしばらくチコリータは考えた後、顔を上げ走り出した。
「待って、ヒトカゲ!!」
入口前で待っていたヒトカゲは二っと笑って黄色い月が彼らを照らして、キラキラと光る海岸へ向かった。
「さぁ、行くぞチコリータ!」
キラキラと月の光で光る葵い海。海岸での影が三つ。ラプラスとヒトカゲとチコリータ。ラプラスにチコリータは自分が見た夢の事を話した。
「なるほど、そう言う事ですか…原因はわかりませんが、ギルドへ運ばれたセレビィに聞いて見ては良いんじゃないんでしょうか?ボクが言えることはそれだけです。すいません」
「セレビィか…眠ってるんだよな…重症で…」
その言葉でチコリータは悲しい顔をして、それでもヒトカゲの目を見て言った。
「ヒトカゲ…セレビィのそばにいてあげて」
手に顎を当てて考えている彼にその言葉を言った。ヒトカゲは私を見て呟いた。
「何言ってんだ、お前…さっき行かないでって…」
「うんん…私はもう大丈夫…さっきの言葉で覚悟したから…決めたの、ジュプトルも、ヨノワールも助けたい。だから、アナタはセレビィのそばにいてあげて。彼女も待ってると思うから。私、ギルドの皆に言って、ジュプトル達が居そうなところ、相談してみる!」
そういって、砂浜を走り、ギルドへ向かっていった。
「あ…おい!…………チコリータ…」
彼を見守るラプラスと、一人残されたヒトカゲ。光る海が見るものとは―
「良し…これであと一つだ……あと一つ揃えれば世界は変わるッ!ヤツを仕留めるぞジュプトル!!」
「ああ、ヤツはサメハダ岩に居る」
見慣れた影が彼を襲う。
「とりあえず、十分後にギルドに行くか…」
海の風に吹かれながら、眺めていた。フッと、何かが斬る音が聞こえた。ハッとして、見て見ると、自分のベッドが切り裂かれていた。鋭利な刃物と確認すると、喉物には葉っぱの刃物。見覚えのある姿と人物が二人いた。
「ジュ…ジュプトル…っ!?ヨノワ……」
無言で葉っぱを喉に突き付けられ血が一滴自分の喉から下へ落ちていく感覚が分かった。
何も声を出せずにいた。声を出したら倒される。無言で上を向き、目だけをヨノワールに向ける。ジュプトルもまるで動かない。操られた人形のようだった。ちらりとジュプトルに目を向けるが、何も話さない。目線をジュプトルに向けていると、ヨノワールが入り口から一歩近づき、言った。
「―――を、だせ!!」
強風で、何を言ったのかわからなかった。何もせずに立っていると、ジュプトルがスッとはなれ、ヨノワールと共に消え去った。
「何だったんだ……このことは…黙って置いた方がよさそうだな…」
喉をスリスリと触りながらそう呟き、痕跡を残さぬよう、新しいわらを置き、サメハダ岩を後にした。
ギルドに付き、人数がすくないと感じ、プクリンが朝礼の場所にいたため聞いた。
「チコリータはどうした?」
「ほかのメンバーも皆、昨日言われた同じ場所に言ったよ。チコリータはペラップとビッパと一緒に大水晶に行くって言ってたんだ。僕はもう疲れたから、体力があるメンバーは行ってみたらって言ったら、ほぼ皆行っちゃって…ヒトカゲはセレビィを見るんでしょ?君たちが使ってた場所で眠ってるから行ってあげて」
「分かりました」
話を聞くと、お辞儀をしてセレビィが居る部屋へ行った。自分も疲れて、うとうとしている合間に眠ってしまい、目を覚ましたのは朝だった。目を覚ますと、セレビィはまだ眠っていた。まだ傷は完治できていないと思っていると、朝からプクリンがやって来て、林檎を二つ持ってきてくれた。
「はい、朝ごはん。林檎だよ。セレビィを助けてもう三日か…昨日ダンジョンに言った、皆は大丈夫かな?昨日の深夜二時に行ったから…もう戻って来て良い頃だと思うけど、もうしばらくまってようか」
「そうですね」
プクリンの言葉に林檎をしゃくりと食べ、答えた。
「親方様」
林檎を少し食べ、黙っていたことを聞くことにした。
「どうしたんだい?」
プクリンもセカイイチを食べながら聞いた。
「ポケモンの心を操る力って、ありますか?」
一瞬目からは光が失っていたような気がしたプクリンは背中が氷付くような感じがした。
「そ、それは…ボクは分からないなぁ…ペラップも多分分からないんじゃ…?」
「そうですか。質問、ありがとうございます」
「入門したときから思ってたけど、君冷たいよね…でも、そんな君が皆好きだよ」
「ありがとうございます。親方様、これを」
そう言ってギルドへ向かう前に、ガルーラおばちゃんにあずかってもらっていた、通信玉を渡した。
「いざってときに、役が立ちますよ」
通信玉を受け取り、プクリンは部屋を出て行った。三時間後に目を覚ましたセレビィが、ヒトカゲの肩をいきなり掴んで言った。
「よかった…無事だったのね、ヒトカゲ!」
いきなりセレビィはそう言ったため、ヒトカゲは顔をゆがめた。
「ご、ごめんなさい…」
ぱっと肩に置いていた手を放して、謝った。
「…ちょっと待ってて」
そう言って、彼はプクリンを呼びに行った。
「このプクリンギルドの親方様だよ、セレビィ」
戻ってくると、ヒトカゲはプクリンの自己紹介をした。
「あ…よろしくお願いします…初めまして」
セレビィは頭をさげて挨拶をした。
「初めまして、セレビィさん」
ヒトカゲは腕を組み始めて、セレビィに尋ねた。
「早速出悪いが、ジュプトルがヨノワールを連れて未来の世界に戻っていったあと、何があったんだ?」
「それなんだけど、…ヨノワールとジュプトルさんと私が力を合わせて、未来でも闇に染まっていたディアルガ…いたでしょ?彼にあの後、追いかけられて捕まっていたんだけど、ジュプトルさんに助けられて、大氷山っていうところにディアルガが居たから、ヤミラミ達にも世界を変えてくれって言われたの。だから、私とジュプトルさんとヨノワールの三人でディアルガを倒したの」
黙ったまま、二人は話を聞いていた。ヒトカゲは話を聞きながら、こう思った。
(俺とチコリータが時限の塔に向かって世界を食い止めようとしていた時も、未来でも俺と同じことを…していたんだな…三人は。だから、俺達未来のポケモン達も消えずに済んだと、いうところか…推測としてはだが…)
セレビィはしばらく考えた後、話をつづけた。
「しばらくして、太陽が昇るようになった未来の世界に私達はいたんだけど、突然時の回路に呼び出されて、ジュプトルさんとヨノワールと私で時の回路に向かって飛び込んだの。そしたら、飛び込んだところに、アルセウスっていうポケモンが居て…私だけ逃げてきて…攻撃されて…そうだわ!ジュプトルさんとヨノワールどうなったの!?」
「お、落ち着いてください、セレビィさん」
急に動き出すセレビィを止めるプクリン。ヒトカゲは考える。
無事…とは言いたいが、やめにしておいた方がよさそうだな…それと、俺が見た像はアルセウスっていうポケモンか…。なっとくしたヒトカゲは、セレビィに言った。
「なるほどな…ちょっと失礼」
そういってヒトカゲはセレビィの手に触れた。
(アルセウス…像でしか見た事ねぇが…その過去が見えるといいんだが………チッ…ダメか…)
すぐさま、手を離すとセレビィはハッとした。
「時空の叫び…」
「まぁ、そんなとこだ…残念ながら、見れなかったがな…。どこでヤツを見たか分かるか?」
セレビィに尋ねると地図を出してと言われ、地図を広げた。
「ここよ」
そう言って指を差し出したのは無数の結晶がある場所。
「大水晶……って……ま、まさか…今…いるのって」
青ざめた顔をして、親方を見つめていると、親方は答えた。
「大水晶に居るのはビッパとペラップとチコリータだよ」
「チコ…リータ……は…ぁ…っ」
ぐっと地図を握りしめ、大水晶へと向かうべく、弟子の部屋からギルド地下二階から走り、ギルドを出て、交差点へ向かい、左へ曲がり、地図だけを持ち、そのまま水晶の洞窟を進み始めた。