第3話
「お父様!お母様!!」
苦痛の叫びがこだまする。
自身の声が。
二人の声が。
「いやぁ!…いや!!」
涙をながし、離れていく。
永遠に会えることのない、二人が遠ざかっていく。
「うっ…ああああああっ!!!」
がばりと起き上がり、布団を飛ばした。
「はぁ…はぁ……」
背中には汗がぐっしょりと服に張り付いている。横に顔を向けるとしたっぱは服を整え、椅子に座って待っていた。月の明かりで顔半分は明るく照らされている。
「時間だ」
「はぁ…はぁ……っ…分かってる…」
悪夢で目を覚ましたフィーリアはすぐにベットからおりて、仕度をした。したっぱは椅子から立ち上がり。洗面所で顔を洗っているフィーリアに、
「先に外で待ってる」
そう言い残し、したっぱは部屋を出ていった。
「………」
先ほど見た夢。今でも覚えている。現実でも、起きたというのに。顔を壁に掛けてあるタオルで拭いて、部屋を後にした。ポケモンセンターを出ると、したっぱが待っていた。
「大丈夫か?」
「ええ…なんとか」
「魘されてたぞ。バトルに支障が出なきゃいいが…無理してると、体が悲鳴を上げるぞ」
バトルに支障が出なきゃいい。か…。確かにそうだが。
「大丈夫よ…。心配してくれるのね」
「…フィーリアの為じゃない」
目線をフィーリアではなく、目的のアジトへ向かうゲームセンターに目線を向けて答えている。
「…ありがとう。…さ、行くわよ」
小さく聞こえないような声でお礼を言い、閉店しているゲームセンターへ足を踏み入れる。
「たしか、ここにスイッチが…あったはず」
ゲームセンターに入り、受付の右側にポスターがあった。ポスターの一部剥がし、スイッチを押した。スイッチを押すと、一部のスロット台が本棚の隠し通路のような感じで地下が出てきた。
「ここから、アジトへ行ける。行くぞ」
したっぱが先に下への階段へと歩く。フィーリアも続く。
「…?気配がしないわね」
フィーリアがポツリと呟く。
「おやおや…侵入者が来ましたか」
ロケット団幹部、ランスが奥から歩いて出てきた。
「人質を連れて、お出迎えですか?それで、正義を名乗ります?」
「正義なんて、これっぽっちも思ってない。むしろ、悪の方がお似合いよ。互いにね!!」
ポケットから取り出した。キングドラが入ったボールを取りだし、投げた。
「キングドラ!!」
「トサキント!」
「私だけではないと、お気づきでしたか…ウインディ!」
「オホホホ、気づかれてましたか。アーボック!」
アポロと同じように奥から出てきたのは白い服を着た、赤い髪色をした女性。
「トサキント!雨を降らせ!!」
トサキントは雨を降らし、キングドラをサポートする。
「…先は渡しませんよ。ウインディ!神速!」
電光石火よりも、すばやい神速。ウインディは消え、トサキントを攻撃する。
「なかなか、打たれずよいじゃない。さて、こっちもいきますか。キングドラ!ハイドロポンプ!!」
ウインディの神速を耐え、雨を降らしたトサキント。地下だが、トサキントが作り出した雨雲は何処であろうと場所は選ばない。
雨が降るなか、キングドラは動き出した。かなり強い雨だ。前が見えずらいが、なんとかバトルは出来る。
「アーボック!ダストシュート!」
アーボックはたまった水をものともせず、滑るようにキングドラに近づく。ハイドロポンプは避けられる。のは計算のうち。水は起動を変え、アーボックの背中を狙う。毒のシュートはフィーリアに飛んで来たが、なんとか避けきる。
「っ!!くっ…」
間一髪。まだ、自分は引きずっているのか。あの夢を。首を左右に振り、バトルに集中する。
「キングドラ、冷凍ビーム!」
キングドラは口から冷気のビームを放ち、ハイドロポンプを食らったアーボックはゆっくり立ち上がろうとしたが、飛んできた冷凍ビームを避けきれず、凍ってしまう。
「くっ!!」
手慣れている。そう思ったアテナはアーボックを戻し、もう一個のボール取り出した。
「トサキント!」
トサキントはウインディの神速で倒れてしまい、ちょうど、雨の効果も切れてしまった。トサキントをボールに戻し、エネコロロを出そうとボールを握る。
「やるな…」
冷や汗を流したしたっぱはちらりとフィーリアを見る。
「アーゴヨン!!」
「っ!!あいつ…あいつは!!」
見たことがある。あの、紫のポケモンのような者を。忘れる訳がない。
「あっ…ああ…!」
忍び込む前にも見た。
「ウインディ!!」
動揺している。チャンスだ。
『ガアアア!』
「うっ…!!」
吹き飛ばされ、ウインディは動かないように馬乗りになった。
「私を…殺すというの?復讐してるんだから、そうで…しょうね」
「フィーリアっ!!」
助けたいが、下手に攻撃をすると、彼女が危ない。
「どうした?殺さないのか??殺し損ねたのよ?絶好の、チャンスじゃない」
「なに…言ってるんだ?」
混乱してるのか?彼女。オレもアーゴヨンに狙いを定められている。下手に動けば、オレも危ない。
「ウインディ!かえん…」
「カイリュー!!!はかいこうせん!!」
ウインディが技を発動する前に、階段から聞こえる声と、ポケモンの技が早かったため、ウインディは攻撃を受け、吹き飛ばされた。後ろにいた、アーゴヨンもウインディの背中から攻撃をうける。
「な!何事ですの!?」
「間一髪、だったな。見つけたぞ、ロケット団」
「四天王ワタル!?アテナ、ここは一旦逃げましょう。四天王では敵いません」
奥へと走って行ったアポロとアテナ。二人を放置して、誰も深追いはしない。
「大丈夫かい、フィーリア」
「……」
疲れきった表情をし、立ち上がったが直ぐ様意識を無くし倒れこんだ。
「お、おい!?フィーリア!」
したっぱはフィーリアを抱き上げる。
「一度ポケモンセンターへ戻ろう」
彼は頷きフィーリアを連れて、ポケモンセンターへと戻っていった。