エピローグ〜いつもの、場所で〜
「うっ………」
目を覚ますとそこは図書館だった。
本は最後まで読み終えていた。
あれは、夢だったのか。
ふと手を見ると、赤い綺麗な水晶と机には氷で出来ているボイスレコーダーが置かれていた。
ボイスレコーダーと水晶はバッグに入れた。
ああ、夢じゃなかったのか。ふっと、木島は笑った。
本は借り物だ。
椅子から立ち上がり、本を持つ。
返さなくては、と思ったがタイトルが竜と魔法の王国、となっていた。
「あ…」
と小さな言葉がこぼれた。
最初のページをパラリとめくった。
これは、黒いリザードンとミミロップ、騎士団が世界を救った物語ー
と、綴られていた。
パタンと本を閉め、学生バッグへしまおうとした。
本をバッグに入れようとしたと同時にカランカランと図書館の入り口が開いた。
「ただいま」
「…おかえりなさい。この本、貰ってもいいですか」
帰って来た鈴木さんの元へと行き、貰っていいか聞いた。
「あら、お気に入りになったの?良いわよ」
「ありがとうございます。俺、もういかないと」
「いつでも空いてるから来てちょうだいね」
鈴木さんにお礼をいい、図書館をあとにしもう夜の7時だ。すぐさま家に帰った。
「ただいま、母さん」
「おかえり…なさい」
木島の母親は驚いた顔をしてこちらをみた。
「どうしたの?」
「あ、いや…今までずっと帰って来ても二階にすぐ行ったから…」
ああ、前の自分はそんなんだったのか。でも、自分は変われた。あの子達のお陰で。
「俺も、変わったってことじゃない?」
少し、照れ臭そうに木島は言った。母さんと食事を久々にして、風呂に入ったあと、二階へと上がっていった。学生バッグ以外は洗濯に出したことを確認し、小さくうなずいた。ベッドへぼすっという音をたて、寝転がった。だが、すぐに起き上がり、カーテンの隣に置いた
学生バッグから赤い水晶のペンダントと氷のボイスレコーダーを取り出した。隣に十分充電してある、スマホを置いた。氷のボイスレコーダーを手に持ち、片手にはスマホを手に取り録音を始めた。
『貴方が人間だということは、薄々気づいていました。でも貴方と出会って変わっていく貴方がをみてー』
この声は、スイレンだ。次々流れてくる騎士団のメンバー達の声。そして、出会った皆からたった一言、レコーダーから皆の声が聞こえる。
『貴方と出会えて、良かった。ありがとうリュウ!!!』
スマホで録音を終えた。
氷のボイスレコーダーもじわじわと消滅した。
いつでも、聞けるようにした。
でも、涙がいっぱいで言葉に出来ない。
ただ、嬉しい。俺も、皆と出会えて良かった。
「ありがとう、騎士団の皆」
そういって、深い眠りへと落ちた。
次の日。
朝6時に起き、母親と食事を取った。時間は朝の7時。すぐさま私宅をし靴をはいた。
「いつもの、図書館?」
母は言った。
「うんん、違うよ。あの子の墓参りさ」
そう首だけを後ろへ向いて、母に言った。
そういい、木島は外へと一歩でた。
母は涙を床にポタリと流して、息子の後ろ姿を眺めた。
雪は降り冷たい雪が頬を伝う。
「……」
目を瞑り、あの子の墓参りをしていると三週間ぶりの声が聞こえた。
「木島くん」
「あ…甘利」
甘利の首にはペンダントがつけられているが、何かは知らない。俺も、首にペンダントを付けはいるが、それは何なのかは言わない。
俺も、甘利も気づいてはいるが、口には出さない。
甘利も俺の側へ来てあの子の墓参りをしてくれた。
「お参り、5年以上してないんでしょ?お母さんから聞いた」
「……でも、吹っ切れたからさ。こうして俺はここに来た」
あの子の墓にはシオンの花が添えられていた。決して、忘れないと意味を込めて。
墓場をあとにした二人は、いつも行っている図書館通りで話を始めた。
「ねぇ、木島くん顔、近づけて」
言われるがまま、顔を近づけた。
「っ…!」
「照れてる、木島くん好きだよ」
顔を赤くしている木島を見て、甘利はそう言った。図書館を見ていると他の学生と鈴木さんが俺たちをみていた。
「いつもの、図書館行こ!」
甘利に腕を絡め、いつもの、図書館へと足を運んだ。