12ページ目〜兄妹〜
洞窟の入り口へと戻ってきた俺達は、芝生をひいて担いでいたアマリリスを休ませた。隣には、セクトが寄り添っている。入り口で待っていたライと合流し、フェルはライと話を初めた。俺もやることはない。アマリリスのそばにいることにした。レヴェンテはルリと会話をしている。
「なるほどな。リュウ達には、もう話したのだろ?」
「ええ。そうだけど、アマリリスが…」
フェルが悲しい表情をして、アマリリスを見つめた。
「うっ……」
アマリリスは皆が見守っているなかで、目を覚ました。
「ここは…」
「洞窟の入り口だよ。ミカは、ローザと一緒に逃げられちゃった」
「…そう」
リュウが言うと、ゆっくりと立ち上がりアマリリスは掠れるような声で呟いた。
俺はアマリリスを見つめるが、かける言葉が見当たらない。すると、アマリリスは俺を見つめて、こう言い放った。
「もう、大丈夫だから。ミカとは決別したから…心配かけて、ごめんなさい」
そう、俺たちに謝った。先ほどとはうって変わって、アマリリスの瞳は覚悟と今度は俺を守るという意思への燃えるような瞳へと変わっていた。
「アマリリスは、知らないからえっと、実はね」
セクトがアマリリスを見つめて、先ほど話した事を説明し始めた。
「そう。ならその方が言いと思うの」
「それじゃ、そっちはお願いね。申し訳ないけど」
「いえ、先輩方は国をお願いします」
次第に俺達は、先輩達を信頼し自分の自信へと変わっていった。
少しずつ、出会うことで、変わっていった。
俺達の心が。
さぁ、休憩は終わりだ。二手に分かれて、自分たちが今、出来ることをするために。
歩き、洞窟を出た。
騎士団の、ライ、フェル、レヴェンテ、セクトとは別れ、西にある水の都・テラーへとやって来た。
「どこ行ったんだろう…アルテ」
そわそわと目の前に見えるニャオニクスの♀がそう呟いた。
「どうしたの?」
ニャオニクスに近づき、アマリリスは聞いた。
「あっ…えっと、ニャオニクスのオス…私のお兄ちゃんが…出かけて行ったきり帰って来てなくて、ね」
「っ…!どこにいったか、分かる?」
ルリが顔を少し歪ませて彼女に聞いた。
「いや、分からないから困ってるんじゃないか?」
分からないから、言っているというのに、ルリは…。と、呆れて小さくため息をついた。すると、ニャオニクスが思い出したかのように、口を開き答える。
「…前に調査したことがあって、近くに、洞窟があったでしょ?そこにいるかな…良かったら、一緒に来る?」
ついさっきまでいた、あの洞窟か。リュウ達は頷き、一緒に付いて行くことにした。
「私の名前はアリスよ」
俺たちは互いに、自己紹介し先ほど居た洞窟の前へとやって来た。
「あ、アルテ」
洞窟の前に居た、ニャオニクスのオスが居た。すぐ見つかってよかった。
「アリス。待ってろって言ったのに…ま、いいか。リザードンとミミロップは今の騎士団か」
首に付けている、ペンダントで判断したのだろう。この国のいるポケモン達はほとんどが騎士団に入団していたのか?
「疑問に思っているようだが、俺とアリスとパルシーは前に入団していただけで、今はやめてるからな。キミらが会うのが騎士団に入団していた人達だけで、騎士に入団する奴の方が、少ない。ここで話しててもなんだし、俺たちの家へ来ないか?」
アルテに言われ、リュウは頷き、アルテたちの家へ行くことにした。
家に行き、アルテはアリスにコーヒーを出すように言った。アルテは俺達にソファーに座ると良いと言って自分も喫茶店の椅子へと座った。アルテは話したかったことを口にした。
「んで、フェルパイセンは元気そうか?」
「パイセンって…まぁ、元気みたいですけど。なんせ俺達、二日前に入団したばかりですけども。それで…スイレンが連れ去られちゃって」
「なるほど。だから、騎士団トップの奴らが大急ぎで戦争止めるために、国へ戻ったってわけだ。つまり、少し前まであの洞窟に居たってわけか」
はい、とリュウは答える。アリスがコーヒーをもってきてくれた。俺はありがとうと言い、冷たいコーヒーを飲む。ルリはアルテを見て、思い出した。
「思い出した。ミーの時に、護衛してた子じゃない」
「やっと思い出しましたか、次期姫様」
嬉しそうにアルテは答えた。
「俺達、そろそろ行かないと…でもどうやってアーバに行けばいいのか…」
コーヒーを飲みほし、リュウはアルテに言った。
「その翼は飾りか?」
「俺、飛べないんですよ」
「………」
呆れた顔をされた。アマリリス以外。アマリリスは苦笑いをしている。二匹もコーヒーを飲みほし、アルテは椅子から立ち上がり、本棚の上に置いてある、青と白の水晶を持ち、アリスに白い水晶を渡して、俺の隣にやって来た。
「俺達も付いて行く。また戦争されちゃ、困るからな」
「ありがとう、アルテ、アリス」
元喫茶テラーを出て、船へと向かうと言われ、アルテの後を付いて行き、船のチケットを購入し、乗客船に乗り国アーバがあるヴァ―リン島へ向かったのであった。