8ページ目〜パルシー〜
「すいません、ドレディアを見かけませんでした?」
リュウは宿近くにいたオオタチに尋ねたが、いや、知らないと言われた。外にいるオオタチの他に4匹にも聞いてみたが、同じ答えが帰って来た。ここまで来るのにほとんど一本道だったと言うのに。皆同じ答えばかりだ。一見の家の前でため息を付いて、3匹とも諦めかけていたとき、一匹のポケモンが一見の家の前に止まり、こちらを見つめていた。ドアを開けようとしたが、開けずにこちらへと歩いて来て、尋ねてきた。
「どうかしたのか?フュール騎士団よ」
「え…あ、ええっと。ドレディアを連れたと思う、ジュペッタ達が来たと思うのですが…」
リュウは美しい毛並みをしているキュウコンに聞いた。キュウコンはしばらく考えて黙っていた。
「……」
しばしの沈黙があり、時間の流れが長く感じた。閉じていた翠色の瞳をキュウコンは開けて答えた。
「外は寒い、中で話をしよう」
キュウコンに言われるがまま、三匹は家に上がらせてもらい、綺麗な食器棚や本棚が並べられているリビングへと向かいソファーへと座った。
「おかーさんだ!おかえりなさい」
「ほんとだー!あ、お客さんだ!!」
姉妹の赤茶色のロコンと白いロコンが寝室からやって来た。母親は赤茶色のロコンの進化系だ。
「お姉さんとあそぼーか?」
アマリリスがソファーに座っていると立ち上がり、姉妹にそう言って寝室の方へと向かった。姉妹は喜び、あそぶあそぶといい、アマリリスに付いていった。
「ふふっ…すまないな、騒がしくて」
「いえ、お気になさらず。それで話とは?」
リュウは少し笑っているキュウコンに尋ねた。
「姫君のスイレンが居なくなったと、フェル殿から聞いた。それで、その拐った人物を探しているのだろ?」
はい、と俺は答える。キュウコンはまた目を閉じて何かを考え始めた。
(あの頃と…変わらないな。ローザは…。あやつ、母親の苦労も知らないで…レンもそうだが……)
悲しい顔をして瞳を開け、口を開き、キュウコンは答える。
「ジュペッタ…のローザは知らないが、ニンフィアがここから南東にある洞窟へと向かっている様にも思えたが、水の都の街へと向かったかもしれん。どっちへ行ったかは断言出来ないが、行ってみてはどうだろうか?」
「いま…」
アマリリスが手を止め、こちらへやって来た。声が震えている。
「今…ニンフィアと、仰有いましたか…?」
「なにか、あるようだな。理由は聞かないが…そなたも覚悟を決めて置かねば、後悔するぞ…。さて、私は姉妹に食事を作ってやらねばならん。フェル達が元気そうで安心した。君達も、元気でな」
そういい、リビングからキッチンへキュウコンは歩いていく。
「あ、ありがとうございました!」
リュウはすぐさま立ち上がり、ショックを受けるアマリリスの腕を掴みながらもキュウコンの家を跡にした。
「おーい!」
キュウコンの家を出ると、セクトが手を振っている。すぐさま宿に戻って、情報交換をした。
「あのキュウコン何者ですか?」
リュウがセクト達に聞いた。
「元フュール騎士団トップだ。名前はパルシー。彼女は知らないふりをしてたが、半信半疑だったのか。…アマリリス、大丈夫か?」
ライが教えてくれたが、戻ってからも青ざめているアマリリスを心配している。
「だ、大丈夫だよ。話も聞けたし、その教えて貰った場所にいきましょ」
少し不安だが、アマリリスの言うとおり、居るのならば捕まえて話を聞くしかない。皆、準備をしてフレッドを後に、いるであろう洞窟へ向かった。