7ページ目〜記憶水晶〜
雪が降っている為、外は寒い。宿を借りて話をすることにした。
「始めまして。王国と伝承の街アーバの次期姫、ルリです」
改めてルリはお辞儀をして挨拶をした。
「俺達が所属していた王国の名前はフュールだが。次期お姫様と言うことは、今のお嬢様はどこにいるんだ?」
レヴェンテが疑問に思い、ルリに質問をしたが、ルリは挨拶を終えると窓を眺めてしまった。
話して良いのか、分からないけど俺がルリと話した事をライ達にも説明した。
「なるほどな。つまり、同じ目的と言うわけだ。俺達と一緒に来れば襲われる事もない」
レントラーのライが納得した様に頷きそう答えた。
「記憶水晶をスイレンが手元に持っているとすれば、私たちが近くにいれば彼女は力を発揮できるけど、話を聞いた限りではもうこの辺りには、居なさそうね。情報集めはしておいた方が、良さそうだけれど」
フェルが顎に手を当てて考えていたであろうその言葉を発した。
「きおく…すいしょう?」
アマリリスは聞きなれない名前にフェル達に聞いた。俺も、その名前は初めて聞いた。
「記憶水晶は、俺達が居た、王国フュールの宝である『記憶水晶』を代々護ってきた一族の長が王様、フジド様で。王国を守護する姫君。人の楽しかった思い出や苦しかった思い出を吸い取って己の力とする『記憶水晶』の持ち主が、スイレンと言うことだ」
ライがリュウとアマリリスに説明をすると、窓を眺めていたルリが重い口を開き、付け足した。
「その記憶水晶に眠っている別の記憶…負の記憶を使い、王国を堕とした…ヴィス。お姉ちゃんも、奪った!」
ただ、その言葉には怒りが込められていた。拳をぎゅっと力強く握って窓を眺めている。窓のガラスが反射している為、悔しい顔をルリはしていた。
「どういうこと?記憶水晶はフュールにしか無いよ?アーバを堕ちた国にしたって…今一、良く分からないのだけれど」
セクトが疑問に思った事をルリに聞く。
「作ったのよ。組織プレジールが」
「そんなこと、可能なのか?」
ライが聞くが、その場にいた全員が嫌な感じがした。誰も口にはしない。
「でも、それってスイレンが拐われる前でしょ…?」
セクトが恐る恐る言った。フェルが唇を噛み、答えた。
「前の…スイレンの前の姫様よ。ラティアスのミー……」
セクト達が思い出したかのように、みな黙る。
「…やめましょこの話。情報集めしに行くわよ。私達は、宿の人たちに話を聞いておくから、リュウとアマリリスとルリは外の人たちに聞いておいて」
部屋を出てこの話はなかった事になり、言われた通り町の人たちに聞きに行くため宿を出て、雪が降るフレッドで聞き込みを開始した。