6ページ目〜薄暗い森での出会い〜
「……」
皆、話すことが無いまま、王都を出て草原を歩き、鬱蒼とした森にいる。
「薄暗いわね、離れないように気を付けなさい」
フェルがそう言い、リュウ達は頷く。入り口から野生ポケモンに襲われないという保証はない。警戒して薄暗い森を歩き始める。
ふっと、体が浮いたような気がした。
「えっ……」
「リュウ!!」
先頭を歩いていたリュウは落とし穴に落ちて行く。皆、俺の名前を叫んだ。空なんて飛んだ事がない。俺は飛べない。感覚なんて、知らないから。
「うっうああああああ!!」
そのまま落とし穴へと落ちていく。
叫びながら。
ドシンという鈍い音を立てて、鬱蒼とした草が衝撃を吸収してくれたような気がしたが、そんなことはなかった。
ぶつけた場所を押さえながらリュウは立ち上がり、先ほどとはうって変わって殺風景な場所へと来た。
本当に同じ場所なのかと、疑うように。
「なんだ、ここ…焼け焦げた匂いもする…」
焦げ臭い匂いが森一帯に充満していた。少し前まで戦っていたかのように。先ほどはこんな匂い、一度も嗅いでいない。
「けて……」
掠れた声が聞こえた。聞こえた声の方へと向き、歩き始める。
「だれか…」
「大丈夫か!?」
ハッキリと聞こえた声の主を見つけ駆け寄り、心配した。
「あ…なたは?」
傷付いて倒れているキルリアを、そっと抱き上げ名を聞かれた。
「…リュウ。キミは?」
「私はルリ…リュウくん、解放してくれてありがとう」
少し咳き込みながらリュウに下ろして頂戴と言われ、ゆっくりと地面へと下ろした。
ルリは立ち上がり、一緒に森の出口へと向かおうと言われ、うなずいた。
殺風景な森と焦げ臭い匂いを嗅ぎながらリュウはルリと森の出口を目指した。リュウは気になった事をルリに聞いてみた。
「何で、こんなに焦げ臭いの?」
そんな質問をしたのは助けて30分歩いたあとだった。
「…魔王…アクジキングのヴィスの部下と…戦ったのよ」
「部下って…!!」
王都を離れるきっかけとなった部下。ぎりっと歯を鳴らし、スイレンを想い浮かび、薄れて消えていく。必ず救うと誓った瞬間でもある。
「やっぱりね…貴方、騎士様でしょ?私も、貴方が所属してる王都とは違う場所の、次期お姫様なの」
今、さらっと凄いことを口にしなかったか?
「えっ…じゃあ、今のお嬢様は…」
「……」
間を開けてルリは言いたくないような感じだったが、覚悟を決めて答えた。
「ヴィスの部下になってる、姉様…サーナイトのカラールよ。出掛けたっきり、帰って来なかった。だから私は両親に内緒で旅をしてきた。やっと掴んだのに、もう一人やって来たジュペッタに邪魔されて、あの有り様よ」
半笑いで彼女は吐き捨てる様に答えた。
「ジュペッタ…」
俺自信もスイレンを助けられなかった。アイツとは、力の差が大きな差が、あると思い知った。
「もう一人戦っていたのは、ガブリアスのレン。もう私の王国は支配されてるけど、貴方となら取り戻せるかもしれない。スイレンにも、前に助けてもらった恩があるし」
はっとするとルリが俺の顔を除き混むようにニコッと笑って、そう俺に言った。
「さっきの話、聞いてた?」
急に真面目な顔になって尋ねてきた。
「あ、ああ。もう一人戦ってたのはレンで自分の国を取り戻したいって…事だろ?」
「なんだ、ちゃん聞いてたのね」
クルリと踊るように回り、森の出口へいつの間にかたどり着いていた。話ながら、歩いていたのだから、そりゃそうか。
「じょうぶ…かな…」
話し声が聞こえる。
「リュウ!!」
気がついたアマリリス達はリュウを見て落ち着いた様子でこちらにやって来た。森を抜け背景が雪へと変わっている。
「アマリリス達も森を抜けてたんだな」
「ええ。貴方が落ちた後、奥へと進んで森を抜けたのよ。あの落とし穴、別の抜け道だったみたいね。取り敢えず同じ場所で良かったわ」
安心しているフェルだが、かなり心配していたのかもしれない。ちょっと申し訳なく感じた。
「隣にいる子は誰?」
セクトが言うと、ルリはお辞儀をした。が、見える小さな町へと行ってから話すと言い、先に行ってしまった。直ぐにリュウ達も彼女に続いて、小さな町へと向かった。