1ページ目〜出会い〜
しばらくスイレンと話していると、紫色の水晶を付けたメスのピカチュウが歩いて来た。
「ここにいたのね、姫様」
えっ、と言う声を思わず洩らしたのはリュウ。
いきなり出てくるなり、何を…。でも俺が読もうとした本は魔法の王国だから、そりゃそうか。
もっとお城で騎士に守られて居るのかと思っていたが、案外自由に出入り出来るのか?
「フェル…」
ゆっくりと歩いて来たフェルと呼ばれた、ピカチュウは小さくため息を付いた。
「ほどほどにしてよね…で、このポケモン色違いのリザードンの用だけど、見ない顔ね」
「えっ…と」
顔を近づけられ、紫のペンダントが揺れる。睨み付けられている。戸惑って居ると、スイレンがピカチュウを抱き上げた。
「ちょっと!何すんのよ」
「戸惑ってます。リュウが」
「俺は、リュウです。宜しく」
少し冷や汗を出してフェルに挨拶をする。スイレンに下ろして貰ったフェルは顔を見上げ、リュウを見つめる。
「……悪いやつじゃ無さそうね。行くわよスイレン」
フェルがスイレンの手を掴み歩きだす。
「そ、それじゃあ、リュウさんまた後でっ!!」
強引にお姫様は連れていかれ、草原で一人となった。
風が優しく俺を迎えているような気がした。
キョロキョロと風に当たりながらも辺りを見回す。
木がいくつか生えており、草木が生い茂っている。
本当にここは草原のようだ。
「あの…」
お姫様とは違う声が聞こえた。後ろを向いていた俺は、先ほど居なくなったスイレン達が歩いていった方、前へと体ごと向ける。
「キミは…」
俺が言うと、美しい毛並みをしたメスのミミロップが、照れながらも答えた。
「王都へ案内しましょうか?あ、私はアマリリスって言います。貴方は?」
「俺はリュウ。宜しくアマリリス。それで、王都?ここからだと近いのか?」
互いに挨拶を澄まし、アマリリスはここからだと少し歩けば王都へ着くと言われ、行く当てもどこにもない。
俺はアマリリスと共に王都へ行くことにした。