第8話 噂の洋館
ソノオタウンは夜になり、ところどころに街灯に明かりがつき始めた。個室の部屋でハンサムと一緒にいるヒカリは黙ったまま、カーテンの隙間から月の明かりが差し込みそのベッドからカーテンの隙間から見える街を見つめていた。自分の横顔が映る鏡の横で椅子に座ってヒカリを見つめるハンサムはゆっくりと口を開け尋ねた。
「昼に話したいと言っていた事はなんだ?」
「……プルートという男が落として行った紙なんですが。ハンサムさんはダークストーンとライトストーン…元の姿ですけど…石からポケモンになる、伝説のポケモン、レシラムとゼクロムをご存知ですか?」
ヒカリはゆっくりと薄暗い部屋の中で見えるハンサムを窓から目線を変え、逆に尋ねた。
「シンオウチャンピオン、シロナ殿と少し話をしたぐらいで、そこまで詳しいというわけでは…」
「では、少し力を貸していただけないでしょうか。この重要の資料を渡す代わりに私にもこのことを教えてください」
ベッドから、立ち上がり、紙を取り出しハンサムの前に差し出しそう言った。紙を差し出しているヒカリの顔を少し見つめたあと、少し考え込んだ。
「………取引、というわけか。私も情報をキミにもらうわけだし…というより、昼に渡したカードがあるわけだし…まぁいいだろう。この資料の事も少し、調べてみる。何か分かったら、連絡する」
紙を貰い、ハンサムは椅子から立ち上がり、部屋から出ようとした時に振り向き、ヒカリに言った。
「ああ、ハクタイシティに行くのであれば、必ず森を通らなければ行けないのだが、そこに噂の洋館があるらしい。なんでもホラー体験ができるそうだ。気になったら行って見ると良い。それじゃ」
ハンサムはそう言い残しドアを開け、部屋を出て行った。
「………」
昼に少女の家に行く前、ソノオへ戻る途中で渡された承認カードを渡された。承認カードを見つめつつも、小さくため息をついた。
「まさか、チャンピオンを目指すどころか、国際警察に入っちゃうとはね……頼んでないんだけど……ま、役には立ちそうね…」
国際警察の一人という承認カードをトレーナーカードの裏に差し込み、一般トレーナーだという事を偽り旅をすることにした。昼の疲れがたまっていたのか、ベッドへどさりと倒れ込み、眠りに落ちた。
目を覚ました時には、太陽が上がっており、朝だった。昨日のままだったことを思い出し、シャワーを浴び、同じ服装に着替え、食事をとりポケモンセンターを出てソノオタウンを後にした。少し山を登り、ハクタイの森の看板が見えた。
「ハクタイの森…不気味そうね…」
唾をのみ込み、ハクタイの森へと足を踏み入れた。森の入ると、そわそわしている女性いた。
「あ!突然ですけどもお願いです。ハクタイシティの所まで行きたいのですが、この森、迷いやすくて…ポケモンは私が回復するので一緒にお願いできませんか?」
「いいけど…一人だとほんとに迷子になりそうだし…」
女性はパァっと喜んだ顔になり、手を差し出しヒカリと握手した。
「あ、私モミって言います」
「ヒカリです。ついでにハクタイの森で寄っていきたいところあるんですけど、いいですか?」
ヒカリがモミを見つめて尋ねるとモミは頷いた。噂の洋館の所まで行くと、モミが言いだした。
「こ、ここって…
主を失って荒れ果てた洋館じゃないですか…い、行くの?」
「ええ。行きましょ。何かわかるかもしれないし」
「わ、分かりました。ヒカリさんが行くなら私も行きます…」
ぎゅっとモミはヒカリの服の袖をつかみつつも洋館へと入っていった。
「ちょっと、何時まで引っ張ってるんですか」
モミはおびえた顔をしてヒカリに尋ねる。
「こ、怖くないんですかぁ…?」
「別に…怖くないけど」
洋館の中は床は剥がれ落ち、周りにはゴースばかりポケモンが居た。
「ひ、ヒカリさんヒカリさん!ひ、人!人が!」
「え…?」
裾を力強く引っ張られ、指を指す方へと目を向けると、足が浮いている少女を見た。
「も、もももも…もう帰りましょうよ…」
「幽霊…ここで何かあったのかしら…?」
裾を掴んでいる手を払い、顎に手を当てて考え込んだ。するとモミは、両手を肩の上にのせて来て、耳元で言った。
「な、なんで…調査する気満々なんですかヒカリさん…!?」
「嫌なら、ハクタイシティに…」
「ヒカリさんに……な、何かあったらどうするんです…!?」
「そんな怯えた顔で言われても……少しだけ調べるだけだからもう少し待って、モミさん」
肩を振り払うと、モミはす、少しだけだと言った。
「それじゃあ、この入り口で待っててください。奥、行って見るので」
そういい、ヒカリは左右にある階段を無視して、目の前にある食事がある場所へと向かった。
「……数年以上前って…感じね…おじさんが足を動かさずに歩いてるけど…さすがに目の前で見るのは少し、気味悪いわね…」
そう言いつつも、キッチンに向かい、ゴミ箱をあさった。
「毒消し…?キッチンに……」
ふっと振り向くと、ゴーストがこちらを見ていた。
「ピッカ!」
ピカチュウがボールから出て来て、10万ボルトを使った。ゴーストはシャドーボールを使い、ピカチュウ目掛けて攻撃をしてきた。ピカチュウは避けるが、ヒカリはこれ以上ここに居れば何かを失う予感がしたため、ピカチュウに指示をした。
「くっ…逃げるわよ、ピカチュウ!」
ピカチュウを抱き上げ、左手で抱え、右手は毒消しを持ったまま、キッチンを後にした。戻ってくると、モミが心配そうにこちらを見つめていた。
「だ、大丈夫ですか?何かと戦っていたみたいですけど…」
モミは心配そうにこちらへ寄って来て、ヒカリは何かに気が付いた。
「モミさん!後ろ!」
「えっ…!」
モミが後ろへ振り向いたとたんに、衝撃派を食らいそうになったが、ヒカリが庇った。
「っ……モミさん、大丈夫ですか…」
「え…ええ。ありがとう。あのポケモンゲンガーね…でもどうして」
ゆっくりと起き上がり、ゲンガーはこちらのようすをうかがっている。
「うっ…ここ、誰も居ない洋館になってますから、ゴーストポケモンが好むようになって、ゲンガーは二階の部屋からやって来て、絵の模写にでもなってたんじゃないですか…ね?」
先ほど受けたシャドーボールが背中に直撃しているため、傷が痛むが、ヒカリはゲンガーを見て、答えた。
「ねぇ、ゲンガー!二階の部屋見せてくれたらもう私達はようは無いから」
「け、ケガしてるんですから、止めてくださいよ…!ヒカリさん、無茶しすぎですって…!!」
ヒカリは少しふら付きながらも、ゲンガーに一歩歩み寄った。だが、モミがヒカリの左腕を掴んでそう言うと、ヒカリは苦しそうな顔をしつつも、振り向き、答えた。
「仮説だけど……二階さえ調べれば何があったか…分かるの…」
先ほどからかすかに自分の携帯が鳴って居るのは分かってはいるが、今はそんな状態ではないのは分かっている。
「ゲンガーお願い。私の事信じて!」
ゲンガーの目を見てヒカリは言うと、ゲンガーは分かったという顔、というより少し笑ってどこかへと姿を消した。
「くっ……」
緊張か、少しめまいがしよろめくが、何とか立て直し、二階の階段へと向かう。モミも怖いが、ヒカリに付いて行った。
「二階の一番右側の部屋…なんか風の音がする…行きましょ」
そう言い、ヒカリは風の音が聞こえる部屋へと向かう。すると部屋の天井には微かに開いている部分があった。
「……誰かがここを通った?でも子供…なら入れそう…」
「つ、次行きましょう」
モミに言われ、今入る自分から見て左側に居るが、左から二つ目の部屋へ向かった。そこは、テレビがずっとついていた。叩いても何も出てこない。でも、何かいるようなそんな気がした。モミに怒られ、いい加減ハクタイシティへ一緒に向かうと言われ、洋館を調べるのはこれっきりとなった。ポケモンセンターへモミと一緒に向かってもらい。背中の傷の手当をし、手当が終わるとモミに、一緒に森を抜けたお礼として、安らぎの鈴を貰い、モミとは別れたのであった。その日の夜。ハクタイシティポケモンセンターで一休みしている、ヒカリはモミと一緒に向かった森の洋館で見つけたアイテムを、ベッドの上に置いてたった一つ見つけた、毒消しを見つめていた。
「………後味、悪いわね…実際はどうかは分からないけど…」
何時のか分からない毒消しをベッドから近くに在るゴミ箱へとすて、ハッと思い出したかのように、携帯を見た。
「そういえば…電話…」
とヒカリは言い、携帯を見るが、電話に出ないと分かりハンサムはメールで昨日の話していた事をつづられていた。
「電話に出ないからメールで伝える。あのダークストーンは五年前に何者かにより奪われたモノだと分かった…。ギンガ団はライトストーンを持つ者とダークストーンを持つ者を探しているらしい…。詳しい事はまだ分からない…何か分かったら、実際に会った時かまた連絡する…」
保留、とメールの内容が消えないようにし、パタンと携帯をたたんだ。薄暗い部屋でただ一人ヒカリは、カーテンが風に揺られるのを見つめ、悲しい顔をして何も言わないままベッドに戻り、眠った。