第2話 2つのタウンマップと噂
チュンチュンとポケモンの鳴き声で目が覚めたヒカリは大きなあくびをする。
「もう…朝なのね…」
ポケモンセンターも宿泊出来る為、数時間だけ眠っていた。朝のモーニングもやっているため、パジャマからいつもの服に着替え、朝食へと向かう。ポケモンもヒカリも朝食を終えるとコウキがやって来た。
「朝早いねーヒカリは」
「貴方が遅いだけよ。朝の7時半なのに…昨日あまり寝てなかったのね?」
ヒカリに言われるとコウキは頭をかきながらあははと言い、苦笑いをした。あっと思い出したかのように、コウキはリュックから二つのタウンマップを取り出し、ヒカリに手渡した。
「何で二つも…」
「もう一個はジュンに渡してほしいんだ。ほら、昨日ね、ボクが会う前にコトブキのトレナーズスクール…ポケモンセンターの左側にある建物に行っちゃって…。昨日渡せばよかったんだけど、あの後寝ちゃって。ジュンも朝早いから、多分もう一度スクールに行ってるんじゃないかな?」
「そう、ありがとう。それじゃ、渡してくる」
コウキにお礼を言うと、机に食べた食器をジョーイさんに手渡し、ポケモンセンターを後にした。左側にあるトレーナズスクールへ行ってみると、言われた通り、彼が黒板の前でじん取っていた。
「ジュン!」
彼の名前を呼んでも、黒板に書いてある状態以上の文字に夢中で聞こえていない。肩をポンポンと軽く叩くと驚いた顔をして振り向いた。
「な、なんだ…ヒカリか…」
「なんだ、じゃないわよ。コウキ君がタウンマップ渡してくれって言われて、持って来たけど」
すっと手渡されたタウンマップを受け取ったジュンは戸惑いながらもお礼をした。
「あ、ありがとう…。そういや昨日来た時から噂されてたんだけどよ…」
ヒカリに近づき耳打ちをすると、ヒカリはえっという顔をした。
「ギンガ団…分かった警戒しておく。教えてくれてありがとうねジュン」
忠告をしてくれたジュンと別れ、トレーナズスクールを出た。
「さぁさぁ!今なら、クイズに答えるだけで新商品のポケッチがもらえるよ!」
新商品のポケッチという単語を聞くと噴水の前に居た親子や、ポケモンセンターの近くにいた二人の子供などが、ぞろぞろとピエロの前へと集まっていった。
(ポケッチ…ねぇ…旅に出る前に博士にオレンジのポケッチを貰ったんだけど…ピエロが付けてるポケッチと同じ商品っぽいし…表には出回ってない色みたいね…)
そう思いながら、ピエロの横を素通りして右側へ行こうとすると、見覚えのある人がキョロキョロとしていた。
「ハンサムさん、どうしたんですか?」
「ん!?キミはヒカリか!あ、いや昨日聞いた奴らなのだが、ここら辺に居ると聞いて探しているんだが…居ないようだ。そうそう、君にこれを渡そうと思っていたんだ。受け取ってくれたまえ。バトルレコーダーだ」
「なんでもくれるんですね」
バトルレコーダーを受け取り、ヒカリが答えると少し冷や汗を流してああ、と答えた。
「それじゃあ、気を付けて旅を続けてくれたまえ」
ハンサムはそう言うなり自分とは正反対の左側へと走って行った。
「……聞き込みも大変ね…警察も」
ヒカリはぽつりと呟きながらも、左手に持っていたバトルレコーダーを右に掛けているバッグに入れ込んだ。歩いていると、ジュンが後ろから歩いて来た。
「もう予習は終わったの?」
振り向かずにヒカリが言うとジュンは答えた。
「ああ!俺と、勝負しようぜ!」
「好きねぇ…勝負。いいわよ。強くなるし」
ジュンと勝負をするが、ヒカリが圧勝し、ジュンが涙を浮かべながらも叫んだ。
「何でお前そんなに強いんだよ!!」
「何でって言われても……」
ヒカリは戸惑いながらも続ける。
「バトルフィールドをうまく使う…とか…相手が何をするのか調べたり徹底的に調べるっていうのがバトルの勝敗を分ける…運もあったり相手の使ったバトルフィールドを瞬時に我が物にしたり…?」
ヒカリが小難しそうな事を言っているがジュンが言った。
「前にヒカリがやってたやつとか…か。それを鍛えたり、トレーナー自身も強くなるって事か…分かった。ヒカリに負けてばっかだけどオレとポケモンが強くなればいいんだな!それなら、クロガネジムに挑戦だ!!」
ジュンは自己完結するなり突っ走っていった。一度ポケモンセンターに戻り、ポケモンセンターへ向かい、ポケモンを回復させ、トレーナーも倒し、図鑑も埋まり洞窟、クロガネゲートへと入っていった。山男にいわくだきを貰い、そこにもいるトレーナーを倒し、短い洞窟を抜け、クロガネシティへとやって来た。早速ジム戦に向かおうとするが、ジュンが入り口で立っていた。
「…ここのジムリーダー今いねーんだってさ。炭鉱の方に居るんだって、オレも行くけど、ヒカリも来るか?
「ついてく」
ヒカリが答えると、ジュンは頷いて、一緒にクロガネ炭鉱へと向かった。ドゴンという音が奥から聞こえ、すぐさま音が聞こえた方へと向かう二人は、カッターシャツを着た少年がミミロルに指示をしてる姿が見えた。
「ああ…ごめん。君たち挑戦者かな?炭鉱の人達がここの岩を崩してくれと言われて…崩してたんだ。もういいみたいだから、今から戻るね」
「あ…はい」
ジュンがそう答え、足をバタバタさせヒカリに何も言わず、そのまま炭鉱の入り口へと走って行った。ヒカリも後を追いかけることにし、回復をしていないポケモン達をいったん回復をさせ、ジム前へと戻って来た。
「皆、行くよ」
ボールに入った二匹のポケモンに合図をするように答えたヒカリは、ジムの入り口のドアをゆっくりと開けた。