1話
次の日、覚悟が決まった六人は、テンガン山という洞窟を進んだ。洞窟内は暗くて良く見えないが、奥へ進む。洞窟で一番最後まで進むと光が見え、洞窟を抜ける。
「ここが、奴が言っていた槍の柱か」
レッドはそうアランに聞いた。
「えぇ、そうよ」
そう言いながらアランは歩き始める。続いて五人も歩く。
「待ってたよ」
もう一人のアランがそう私に言った。
「……奥へ進みなさい」
イエローがそう四人に言った。覚悟は決まっているから、みんなはそのまま走る。残ったのはイエローとアラン。
「しようポケモンは六匹のフルバトルよ。そしてダブル。それでいいかしら?」
もう一人のイエローがそう私たちに言った。アランは言う。
「それで構わないさ。全ての決着をつけるのなら、なおさら良い!」
アランはモンスターボールを握る。イエローも。もう一人の自分たちもボールを握る。
「今ここで、決着を付けさせてもらう!!…キノガッサ!」
キノガッサをモンスターボールから出すと、キラキラと光った。そう、赤色のキノガッサ。本来は緑なのだが、このキノガッサは色違いのキノガッサだった。
「そして、もう一匹はラプラス!」
キノガッサとラプラスをアランは出した。さて、もう一人の私は何を出すんだろうか…?
「行け!サンダー!ファイヤー!」
準伝の鳥ポケか…。まぁ、そんなことはどうだっていい。私は口を開いて、二匹に指示をした。
「キノガッサ!サンダーにマッハパンチ!!ラプラス!ファイヤーに絶対零度だっ!!」
「………」
奴の口は一切動いてない。どういうことだ。
「あら、気づいてない?」
「何がだ」
奴は私に言った。
「気づいて無いようね?」
何が気づいてないと言うんだ?指示をしていないのに、サンダーファイヤーが攻撃していると言う事か?
「指示をしていないと言う事か。それはもう知っている。まずはお前のポケモンを見てから言うんだな」
アランがそういうと、もう一人の私は驚いた声を出して、ポケモンを見た。
「何…?」
「気づいたろ?私は二匹に一つの技しか、言っていない。だが、ポケモンは考え、トレーナーを信じているからこそ、できる事だ。さぁ、残りのポケモンを出してみろよ。私に勝てるのなら、な」
「き…さま」
もう一人の私は怒りに満ち溢れていた。私は冷静で、もう一人は怒っていた。なんだろう、悲しい気持ちになっちゃうな…。もう一人の私は、ファイヤーとサンダーをボールに戻し、二匹を出した。私も、キノガッサとラプラスをボールに戻し、別のポケモン二匹を出した。まだ体力があるのに、キノガッサとラプラスを戻した理由は、無駄に傷つけたくないからだ。
「ミミロップ!ボーマンダ!!」
私のポケモンは五体のみ。あとの二匹は、マイトで片づけるしかなさそうだ。
「フリーザー!レックウザ!貴様はここで負ける運命なのさっ!」
「………」
また伝説のポケモン。まぁ、慣れてるけどね。私は二匹のポケモンを見て頷いた。
「フリーザー吹雪だ!レックウザ!流星群を放てっ!」
ミミロップはボーマンダの背中にタンっと乗り、ボーマンダは空を飛んだ。流星群をボーマンダは避け、ミミロップはボーマンダに言った。
「あの伝説のポケモン達…あの子たちを呪縛から解き放ってあげましょ」
「あぁ。飛行は俺に任せろ」
二匹は会話をした後、急降下をした。
「レックウザ、お前は俺の技を避けられるか?流星群!!」
「はぁああああ!気合い玉!」
私は、ポケモンへの指示はしていない。絆があるからこそ、信じているからこそ、できる事なのかもしれない。ちらりとイエローの方へ見て見ると戦っていた。
「エーフィ!!サイコキネシス!」
もう一人の私たちは、どんな風に過ごしたのかな…戦う意味は決着を付けたいから。でも、なんでもう一人の私たちが私たちに立ちはだかるのか。気になった。イエローはそんなふうに思いながらも、エーフィに指示を出す。
「恩返し!」
イエローはもう一人のイエローのポケモンを倒していた。気づいたら最後の一匹だったみたいだ。イエローはもう一人のイエローに近づき、こう言った。
「どうして、奴のそばに居たの?」
アランは二匹をモンスターボールに居れ、リザードン、マイトをボールから出した。相手はリザードンとカメックス。
「運命の時を得て進化を超えろ!」
アランのリザードンはメガリザードンxに進化をした。
「一気に決着を付けさせてもらう!マイト!カメックスに雷パンチ!」
「カ、カメックス!ハイドロポンプだ!」
私は、相手の私は焦っていた。そんなに勝ちたいのか、と。未来の私に…。だけど私は勝つよ。何が何でも。
「な、なんで…リザードンの姿が変わったんだ!」
ほぉ、どうやらもう一人の私はメガ進化を知らないようだな…。カメックスのハイドロポンプをマイトは避け、カメックスのお腹に雷パンチを撃つ。カメックスは倒れ、リザードン対決となる。
「マイト!」
私はマイトの名前を言うと彼は頷く。
「火炎放射!!」
最大の攻撃をもう一人の私のリザードン目掛けて放った。
「終わった……あれだけの力を出したと言うのに…なんで…なんでっ」
もう一人の私はひどく落ち込んでいた。マイトのメガ進化は解除され、モンスターボールへ自分で戻っていった。私はもう一人のアランに近づき、抱きしめた。
「悲しむ必要なんてないさ…」
「わ…私は…」
槍の柱の柱が崩れかけて、柱がこちらに傾いていた。もう一人の私は何かを言おうとしていた。だが、崩れる音で何も聞こえない。一方、イエローは私と同じように、していた。
「何で、負けたかなぁ……」
もう一人のイエローがそうつぶやいた。イエローは胸が苦しくなって涙を流している。
「何で…だろうね……ねぇ、なんでアイツの所に居たのか、教えてよ…」
そう私は彼女に聞いた。
「それはね―」
最後、何を言っているのか分からなかった。聞こえなかった。もう一人のイエローは光の粒となって、天へ昇っていく。光の粒を見つめながら、呆然とその場から動かないイエローは柱につぶされた。アランも目を瞑り、最後に言った。
「戦えてうれしかったよ」
もう一人のアランは言った。
「ありがとう―」
彼女も、光の粒となって消えていった。アランは地響きと共に、柱につぶされた。
前を向いて、歩かなきゃね。
セレビィに願えば、私たちは帰ってくる。
だから、悲しまずに、前を、前だけを向いて、ね?