番外編
マイト編 1話
「…ぼ、僕…嫌だよ」

一匹のヒトカゲがもう一匹のヒトカゲに言った。

「馬鹿言うな。これは戦いだ。逃げたらお前の負けだぞ?」

彼はレオと言う名前のヒトカゲ。親はレッドっていうトレーナー。レオは野生だった僕を見つけてくれたけど、皆から僕は嫌われ者。弱くて相手にならないと、ほかのポケモンにも相手にされない。僕は…僕は嫌だ…戦いたく…ない。そう思うと一歩レオから下がった。

「俺がそんなに怖いか。傷つけられるのがそんなに嫌かっ!」

怖いんじゃない嫌いなんじゃない。嫌なんだ…!痛いし怖いし、相手は手加減を知らない。そんなの、戦ったって得なんてしないじゃないか。僕は震えていた。怖くて涙を流した。震えが止まらない。レオが突然僕を突き飛ばした。

「うっ…あっ!」

うめき声をあげてズサァっと土煙と共に滑る。痛くて蹲っていると、レオが突然馬乗りになって僕の顔を見て言った。

「苦しいなら俺を殴れよ」

苦しそうな顔をしている僕を見てレオはそう言った。レオの後ろに照らされる太陽。まぶしいよ。君が輝いているような気がして。

「っ……!!」

僕は目を瞑って、レオを殴った。レオは吹き飛ばされ、目を開けて僕はレオを見た。

「あっ……レ、レオ…!ご、ごめん!ぼ、僕…そんなつもりじゃ……」

怖くなって手を震わせながら僕はその場から走って逃げた。怖くなって涙を流してレオを置いてけぼりにして居なくなった。初めて僕をちゃんと見てくれてた友達なのに…なのに、僕は!僕はっ!!走って僕は、石に躓いて転んでしまった。転んだ僕は立ち上がり、走り続けた。不安で不安で仕方がなかった。一番道路からずっと走り続けてニビシティの近くまで走っていた。築いたら夜になっていた。そして、左側からたき火の音が聞こえて、ふと、振り向いていると白いスカーフを巻いている女の子があくびをしながら夜空を見ていた。空から僕の視線へ向けた。女の子は驚いたような顔をして、僕においでと言っていた。僕はおそるおそる女の子のそばへ行くと、彼女は微笑んで傷を治してくれた。

「…大丈夫?」

落ち込んでいる僕を励ましてくれているのだろうか、優しい声が僕の耳元で聞こえた。

「名前は、あるの?」

今度は、名前を聞かれた。僕は顔を上げて、女の子に目線を向けると、左右に首を振ってこたえた。どうせ言ったって僕の言葉なんて分からない。人間はそうだ。分からない。

「そう……」

女の子は声を漏らした。スッと女の子は僕の手を握りしめた。温かい優しい手で。僕は顔を上げた。思わず言葉を言った。

「え…えっと……」

すると女の子はフフッと笑って言い返した。

「ごめんね、突然手を掴んじゃって。貴方、優しいから」

優しい。優しいなんて言葉、一度も言われたことがない。それは、僕が弱いから。手を放し、俯いていた。すると女の子は赤い箱を取り出して何かを調べて居た。音がなっているのに気になり、僕は顔を上げてその赤い箱を見つめていた。

(性格は臆病…か。この子が戦うのが嫌なら、何か方法を考えないと…ね)

僕は思った。戦わせる気かと。傷つくのが嫌いなのに、トレーナーはなんでも戦わそうとする。そう思い込んでいると、女の子は赤い箱をバッグに入れると女の子は言った。

「戦わせるんじゃないよ。戦うほかに方法はあるから」

そう言って僕をひょいっと持ち上げ抱き上げ、頬っぺたをすりすりさせられた。な、なに、このトレーナー。頬っぺたをすりすりさせられると、地面へ下して一言言われた。

「私も、友達とかを傷つけられると自分も、傷つくんだ」

「僕と…同じ…」

「そう、私と同じ」

ヒトカゲはえっ、となった。僕の言葉が分かるという意味で。

「驚くのも仕方ないよね。私、ポケモンと話せるんだ」

僕に目線を向けて女の子は、そう言った。

■筆者メッセージ
番外編 マイト編 第1話:出会い
アラン ( 2016/06/24(金) 03:33 )