ポケットモンスターFR・LG〜三人の旅〜














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第五章 届かないその温もり
1話
目の前が真っ暗で何も見えない。グリーン…カメックス…リーフ…。リーフの後ろ姿が見える。俺を見向きもせず、歩いていく姿が。ゆっくりと目を開けると誰かの声が聞こえる。誰かの姿が見える。温かい何かを感じる。俺の、名前を呼んでいる。お母さん?目を開けると、真っ白い天井が見えた。

「うっ……」

声を出した。苦しい。痛みがズキズキする。

「ファイアっ!!」

涙が頬へ落ちてきた。お母さんが叫んでる。傷だらけな俺と無傷な母親。だけど、心は俺と同じ。ズタズタだと、思う。苦しいはずだ、俺と同じで。悲しいはずだ。だけど、俺はリーフを取り戻すまでは、諦めたくない。必ず、助けると誓ったんだ。だから、ここで倒れてるわけにはいかないんだ。動いてくれ、動かないといけないんだ。

「お母さん…俺、俺はリーフを取り戻したい…だから、止めないで」

とっさにこの言葉が出た。お母さんは涙を流している。あふれ出てくる涙がお母さんを苦しめる。体を起こして、お母さんを見つめる。体中痛いけど、そうは言ってられない。階段から音が聞こえた。姿が分かって俺は名前を言った。

「レッド…さん!?」

彼はにやりと微笑んだ。だけどほんの一瞬。そしてレッドはファイアに言う。

「もうやめとけ。よく頑張ったよお前らは」

帽子をぐっと押さえこみ、レッドはファイアにそういった。絶望だろう。だけど、よく頑張ったとしか言えない。ここは、俺の出番だ。だから、少し休んでほしいという意味もある。諦めろ、と言っても無理だろう。だけども今のお前らじゃ、彼女を取り戻せない。

今はきっと無理だ。

何かを身に着ければ、彼女を取り戻せる。それは、

愛?それとも、言葉?いいや、違う。どれが答えかなんて、あいつらが見つけるべきだ。俺は階段を下りて、ファイアの家を後にした。

アラン ( 2016/04/17(日) 16:53 )