ポケットモンスターFR・LG〜三人の旅〜 - 第三章 君の言葉が悲しくて
14話
リーフを助けて、一週間。シルフカンパニーが壊れて一週間。ニュースはシルフカンパニーの報道ばかり。ファイアはリザードンが入ったボールを見つめているだけ。グリーンは夜の外を眺めているだけ。リーフの回復を待つ二人。一週間の間、二人は何も話さず、いた。久々に、ファイアは口を開いた。

「グリーン」

「何だよ…」

「リーフの事なんだけど…」

グリーンは外を眺めながら、話を聞く。

「…あいつだけ旅をさせねぇっていうのかよ」

「うん…」

「話にならねぇ」

そういってグリーンはポケモンセンターから離れる。一人になったファイアはリーフがいる治療室へと行く。中には入らず、ガラス窓で透明になっている場所へ行き、眠っているリーフを見つめる。数分も立たないうちに、ポケモンセンターから出て、外へ行く。

「分かってる……」

皆離れていくっていうのが、分かる。崩れているのも分かってる。もう一度、封鎖されたシルフカンパニーへと足を踏み入れた。ただ見つめるだけで、何も言えない。何も言わない。言いたくても、言えない。警察官がいまだに調査をしている姿が見える。俺は見つめていたシルフカンパニーから目線をそらして、もう一度、ポケモンセンターへ戻る。ポケモンセンターへ戻っても同じこと。いろいろな気持ちがこみ上げてくるくるだけで、洗いざらいぶちまけてしまいたい。この気持ち、どこにぶつければいい?

「不安なんだよ…くそっくそ!!」

口に出したって、無駄なのは分かってる。そして、ここ最近、自分の何かがいるような気がする。もう一人の自分?三人とも、もう一人の自分がいるっていうのか?皆それぞれ、表と裏の自分が…。過去の自分と向き合う…。今の自分と向き合う…。ふと、ガラス窓を見ると、自分の顔が映し出された。

「っ……」

苦しい気持ちが、こみ上げてきた。それでも、我慢をする。すると、自分の声が聞こえたような気がした。

「そうやって、我慢するの?君は…」

小さいころの自分が喋ってる様な気がした。いいや、気がするんじゃない。自分の心の中にいるんだ。

「ああ、そうさ…我慢するんだ俺は…」

そう言うと、もう一人の自分は言ってきた。

「可笑しいね?本当はリーフに言うんでしょ?」

「違う!」

「嘘言っちゃ…だめだよ…八つ当たりするんでしょ?」

「八つ当たりなんかじゃない!!」

「そうなんだ…じゃあ、君を見て見る事にしてみるよ…せいぜい僕を楽しませてよ」

「お、おいっ…待て!」

もう一人の自分は、そう言って姿を消した。

「何してんだ…お前?」

聞き覚えのある声が聞こえて驚いて、後ろを振り向くとグリーンが見つめていた。

「グリーン…何でもない…」

そういって俺は、逃げるようにリーフがいる場所へ行く。眠っているリーフの右手を掴んで、涙を流して

「俺…どうしちまったんだ?」

そう、もう一人の自分に聞くかのようにつぶやいた。後ろには、グリーンが静かに見つめていた。

アラン ( 2016/03/24(木) 05:49 )