12話
彼、グリーンは、フシギバナをボールから出した。彼女の微笑む笑顔は見たくない。悲しいから。苦しくなるから。胸が締め付けられるぐらい、悲しい言葉に聞こえて仕方がないんだ。だから、ここで、決着をつける。ファイアは、カメックスを出していた。リーフはリザードン。サカキはニドキングを出していた。タッグバトルが始まる。徹底的に、サカキを潰す。許さない。その、殺気をグリーンはサカキに向けていた。ファイアはただ、悲しい瞳。赤く燃えるような瞳をリーフに向けていた。まるで、無口の昔に戻ったような感じに。
「思い出してよ…昔の事…。カメックス…」
リーフに囁きかけるかのように、ファイアは言う。そして、カメックスの名前を言った瞬間、一度、閉じた瞳を開いて叫んだ。
「ハイドロポンプっ!!!」
リザードンに目掛けて水の放射が飛んでくる。リーフはリザードンの背中に乗ってリザードンに空を飛ぶよう指示した。天井は破壊され、シルフカンパニーの上からは、街の夜の風景が見えた。
「予想済みだっ!方向を上に変えろ!カメックス!」
聞いたことがないファイアの声。怒ってるの?それとも、どういう意味なの?教えてよ、ファイア。
「リーフ、帰ってこいっ!!」
優しい言葉。だけど、そんな言葉じゃ私は帰らないわ。ねぇ、もっと言ってよ。帰らせてくれるような言葉をっ!!そして、私は叫んだ。
「私は…帰らないっ!!」
「なんだとっ!?」
驚きの声がマサラタウンの人とグリーンの声、そしてファイアから発せられた。まるで、絶望をこの目で見たかのように。何をお前の運命を変えたのか?いいや。もう、変えられていたんだ。サカキによって!グリーン…頼んだ。サカキを倒せ。俺は、リーフと戦う。これは、決められてしまった運命なんだから。
「あぁ…そうか…お前はこのまま一生道具として…」
「聞きたくないわよそんな言葉っ!…火炎放射っ!」
「くっ…もう一発ハイドロポンプ!……生きるのかよっ!?」
叫ぶ言葉。聞きたくない言葉。思いを全部言葉に出して。
「えぇ、そうよ!逃げられないのなら、このまま一生!…もう、会いたくないのよ!居たら、自分が傷つく!苦しむのよ!リザードン、これで終わりにするわよ!」
やっと、分かったよ。彼女から発せられた言葉によって。
「………」
カメックスはぴたりと止まった。もちろん、ファイアも。リーフはハッとして、叫んだ。
「そんな目で…見つめないでよ!いや…嫌…もう、やめて…もう…嫌…嫌…」
「指示もしなくなった今がチャンスじゃ!」
オーキド博士の声が聞こえた。ファイアは片方の腕をスッと上げて、カメックスに指示をだした。
「これで終わりにするよリーフ、だから、安心して…。…アクアテール!」
リザードンだけを吹き飛ばし、空中で舞うリーフをファイアは両腕でキャッチをした。ファイアの腕の中で抱かれるリーフは意識を無くしていた。微笑むファイア。リザードンをボールの中に戻し、グリーンの戦いを見つめた。そして、カメックスに言った。
「手伝ってあげて、カメックス」
その言葉と同時に博士からもらったストーンが突然、輝き始めた。
「な、なんだ?」
「あれは…」
両腕がふさがってよく見えない。だけど、カメックスの姿が変わるのはわかった。牢屋にいるシトロンがメガネを少し上に動かした後、ユリーカと同時に叫んだ。
「「あれは…メガ進化!!!」」