9話
「ねぇ…何で二人には能力がないの?何で、私だけなんだろうね?」
「綺麗な夜空だね。三人で見れて嬉しいよ、私は!」
「なんで、彼女だけポケモンと話せるんだろうな…」
「変な夢……みちゃって……」
今、思えば…彼女が嫌な夢を見たのは、このことを予言していたのかもしれない。
絶望の扉は開かれた―
誰かが、そう言った。
小さいころから始まっていたのかもしれない。この、絶望を知るということを―
マサラタウンに戻って来て、三週間がたった。グリーンが突然、二階に上がってきた。
「いつまで、そうしているつもりだよファイア。助けに行かなきゃならないだろ!?いい加減にしろよファイア!お前だって、分かってんだろ!」
「分かってるさ…もう、大丈夫…大丈夫だよグリーン」
作ってる微笑みは苦しいことを意味しているのは、知ってる。口では大丈夫、と言っていても本当は苦しいのは同じこと。俺も、博士にしたことと同じ。昔と全然そういうとこ、変わってねーよ。ほんと。
「ほら、行けよ」
そうグリーンは背中をポンっと押してくれた。グリーンの方向へ振り向くと、目に移りこんだのは研究所だった。
「グリーン…後ろ」
「あん?……って…」
まだ、絶望は終わらせない―
立てなくなるまで、与えてやろう絶望を―
そう、誰かが囁いた。