8話
「う……」
目を開けるといつもの場所だった。いつもと違うのは隣にゲンガーがいないと言うこと。そして今、思い出した。ファイアとグリーンに出会って。記憶を思い出した。私が持ってる能力、ううん違う。私だけが持ってる能力。ポケモンと話せる事。だから誘拐された。散々体に傷をつけられた。絶望を体に植え付けられた。10年ずっと繰返し繰返し同じ事をされた。旅に出られるのは10才になってから。やっと会えた二人なのに……こんな形で再開するなんて。もう嫌だよ。我慢の限界だよ。ファイアの悲しい顔は今でも覚えてる。もう、悲しい顔はみたくない。だから、会わなければ悲しい顔を見ずにすむ。鉄格子を見つめる私はグリーンを思い出していた。グリーンに怪我をさせたのは私のせい。いつもなら、サカキがやって来る。だけど、違った。
「リザードン?」
オレンジ色が目に写った。すぐに彼の名前を言った。リザードンは名前を呼ばれ、微笑む。
「無事か?」
「……」
私は答えられない。
「今から出してやるから待ってろ」
リザードンがそう言うと私は叫んだ。
「止めて!お願いだから…もう、来ないで…居たら傷つける…だけだから…」
始めて聞く悲しい声。辛い声。リザードンは彼女が相棒だと言うことはファイアやグリーンから聞いていた。けど、こんなにも弱く、悲しい声を聞いたのは始めてだった。あって間もない間だけど、彼女の声は聞こえていた。戦っている時も。
「ほぉ……我らを見つけるとは。流石と言っておこうかリザードン」
サカキが出てきた。リーフはリザードンに叫んだ。
「リザードン…逃げて!」
「逃がすものか!ゴローニャ、岩なだれだ」
ゴローニャを出していたサカキはリザードンに向かって放った。土煙が舞う。岩に埋もれたリザードンは姿を見せない。
「来い、命令だ」
ゴローニャに鉄格子を壊させ、サカキがリーフの腕を引っ張り、外へ連れていく。
「ハァ…ハァ…待てよ…」
リーフの腕を掴んでいると、リザードンの声を聞いた。
「彼女を……放せぇぇええ!!!」
岩が赤く燃え上がり木っ端微塵に砕かれた岩。リザードンがサカキに向かって火炎放射を打つ。ゴローニャはとっさにサカキを守る。ゴローニャは役目を果たしたかのように自爆した。サカキだけを逃がして。リーフとリザードンを巻き込んで。建物は燃える。服が破れ、腕や頭から血を流すリーフ。リザードンは動かない。自爆のさいに、とっさにリザードンが庇ってリーフを守るが意味がなかった。リザードンは吹き飛ばされ、壁に打ち付けられたまま、動かない。リーフも動かない。
サカキは燃える建物を見て、姿を消した。