7話
「いってて……」
「動くんじゃないわい」
包帯を巻き直しているオーキド博士は、痛みを口に出すグリーンに言った。研究所へ行き、ドアをノックする。ノックする音が部屋に響く。オーキドがドアを開けるとファイアの姿が目に写った。
「ファイア…」
「……」
無言でファイアが差し出したのは、中途半端に埋まったポケモン図鑑だった。
「ど、どうしたんじゃ?無言で差し出しおって」
訪ねてもファイアは答えない。ベッドで上半身だけ起こしている、グリーンがファイアに聞く。
「お前…まさか旅を止めるんじゃないだろうな?」
「なんと…!」
オーキド博士は驚いた。グリーンに言われるとファイアは研究所から出ていった。グリーンは引き留めようと声をあらげる。
「おい!待て!!ファイア!!っ…!」
右腕が痛み、声が出せなくなる。つい、驚いて受け取ってしまったポケモン図鑑。ポケモン図鑑を開くと紙切れが地面へヒラヒラと落ちた。紙を拾い上げると書かれていた言葉は、
「もう…何も出来ないよ」
と、書かれていた。あまりにも絶望が連続で続いたのかしれない。グリーンにも紙切れを渡す。すると、グリーンは声を出す。
「何でだよっ……!ふざけんなよ!ファイア!!俺だって…俺だって!!」
グリーンは涙を流した。オーキドはただただ、泣いている息子を見ることしか出来なかった。
〜2〜
「……ファイアお兄ちゃん…」
ユリーカとシトロンはファイアの家に上がらせてもらっていた。ユリーカの声も泣きそうな声を出していた。シトロンはリーフの足取りを探していた。何度試してもパソコンにはエラーが起きる。
「ファイアお兄ちゃんとグリーンお兄ちゃんは、リーフお姉ちゃんを探さないの?」
ユリーカはファイアの母親に訪ねた。だが、訪ねても何も答えられない。気づくのは二人だから。静まり変える家。ファイアは二階でリザードンが入っていたボールを見つめていた。
「リザードン……」
彼の名前を呼んでも、戻ってこない。すると、インターホンが聞こえた。カーテンを開けると、オーキド博士が家を訪ねていた。一階からは、母さんが俺を呼んでいる。オーキド博士に会うなんて、今の俺には出来ない。カーテンを閉めると母さんが二階へ上がって来て言った。
「来てるわよ、博士」
「今の俺の気持ちが分かるのかよっ!!」
大声で言うと、母さんは何も言わずに一階へ戻っていった。
「息子の気持ちなんて、分かんないわよ……分かるのなんて、自分だけなんだから」
一階へ戻るとそう母親は、呟いた。ファイアは分かった、何もかも崩れていくと言うことを。今の言葉で母さんを傷つけた事も。
「くそっ!!!」
そういって、机を殴った。
怒りが、憎しみが、悔しさが、悲しさが込み上げる。
何もかも分かってるんだ。
もう、あの頃には戻れないとー